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ドイツの大学のコンピュータサイエンス学部の選考プロセスと合否について(後半)


こんにちは。前回の記事からだいぶ時間が経ってしまいましたが、大学がWeihnachtsferienに入り少し余裕ができたのでドイツの大学受験プロセスの後半部分をまとめてみました。今回対象の大学はフンボルト大学ベルリン、ベルリン自由大学、アーヘン工科大学、ミュンヘン工科大学の4つです。それでは順番にいきます。

5.Humboldt-Universität zu Berlin(フンボルト大学ベルリン)

入学制限:NC
出願方法:uni-assist経由
DoSV:あり/ VPD:なし
提出書類(uni-assistにアップロード):高校卒業証明書、大学成績証明書・卒業証明書、履歴書、ドイツ語能力証明書(C1)
合否結果:合格

フンボルト大学ベルリンへはuni-assist経由で出願することになりますが、この大学は選考プロセスにおいてDoSVに参加している為、前回までの大学と違い出願前にDoSVに登録してIDを取得する必要があります。そしてそのIDをuni-assistと連携することでuni-assistでの出願時に自動的にDoSVのマイページにフンボルト大学ベルリンの情報が追加されます。他大学を含めた全ての大学のDoSVへの登録フェーズ(7月中旬〜後半)が終わると、順位付けフェーズ(約1週間程度)に入るのでその期間内でDoSVに登録した各大学に対して第一志望〜第n志望まで優先順位をつけていきます。

大学のホームページによると、選考は主に2段階に分かれているようで、最初の主選考(Hauptverfahren)で定員が埋まらなかったり辞退者がでた場合に追加選考(Nachrückverfahren)が行われます。私は主選考で不合格となりました。DoSV上で選考の途中結果も見れるのですが、外国人枠の定員7人のところ私の順位は72位、かつその時点での辞退者はゼロだったので追加合格も絶望的でしたが、なぜか9月に入ってから追加選考の結果合格したとの通知が届きました。これには驚いたのですが、大学が提供している別の資料を見ると、一応NCではあるものの、昨年度の冬学期は定員135に対して726の出願があり、その全員が入学を許可されているようなのです。もはやわざわざNCを設定している意味がよくわかりませんが、一応、選考基準が詳細に書かれた大容量のPDFファイルがホームページに添付されているので、気合いと根性のある方は是非ご自身でも確認されると良いと思います。いずれにせよ、この大学を志望していたのに主選考で落ちてしまったという方は、他の大学へのEinschreibung(入学手続き)を一旦保留しておいて、念のため9月初旬まで様子を見ておくのもありかもしれません。

6.Freie Universität Berlin(ベルリン自由大学)

入学制限:NC
DoSV:あり/VPD:なし
出願方法:Uniassist経由
提出書類(uni-assistにアップロード):高校卒業証明書、大学成績証明書・卒業証明書、ドイツ語能力証明書(C1)
合否結果:不合格

この大学の選考プロセスはフンボルト大学ベルリンとかなり似ています。uni-assistでの出願時にDoSVのID情報を入力することで、自動的にDoSVのマイページにベルリン自由大学が追加されます。その後も同じように順位付けフェーズに入ったら大学毎の優先度を決めるのですが、DoSVに参加している複数の大学に出願している場合には優先順位付けは全体で1回だけ行います。この大学が外国人学生に割り当てている定員は9人で私の順位は100位、選考プロセス終盤での辞退者は10人程度でした。仮に私の成績が応募者の最低点だったと仮定すると倍率は10倍、応募者のちょうど真ん中くらいの成績だったとすると約20倍です。ちなみに昨年度の冬学期は学部全体の定員120人に対して応募者が846人、EU域外の外国人の最低合格ラインの成績はドイツ換算値1.8です。


5.Rheinisch-Westfälische Technische Hochschule Aachen(アーヘン工科大学)

入学制限:NC
DoSV:あり/VPD:なし
出願方法:大学の出願ポータル
提出書類(大学のポータルにアップロード):高校卒業証明書、大学成績証明書・卒業証明書、ドイツ語能力(C1)証明書(入学時)、英語能力(B2)証明書(入学時)
合否結果:不合格

この大学への出願で私は大失態を犯しました。大学の立地や生活コスト、学術的評判の全てのバランスが私にとってピッタリの第一志望だっただけに、ミスに気付いた時はショックを通り越してむしろ自分が情けなくなりました。

アーヘン工科大学への出願は大学独自のオンラインポータルから行います。昨年からの変更点として、ドイツ語に加えて英語(B2)の言語能力証明も要求されるようになりました。日々出願サイトはチェックしていたのですが、出願開始の1,2ヶ月前に突如この要件が追加されたので慌てて準備に入りました。大学側の言語要件表には「B2レベルの英語能力」としか書かれていませんが、担当者の方曰く「IELTS5.5以上もしくはTOEFL90以上」がそれに該当するとのことでした。幸運にもその頃にはドイツ語の試験はクリアしていたので、日本のアマゾンからIELTSの参考書や単語帳を取り寄せて1ヶ月ほど英語の勉強に完全にシフトしました。IELTSのテストはドイツ全土で受験できますが、州によってコンピュータ形式もしくは紙形式の受験に分かれており、開催日や開催頻度も結構バラバラです。私は日程の都合上、住んでいる街で受験するのが難しかったので、朝早起きして他の州の会場で受験することにしました。一応、1〜2時間早く到着するようにICEに乗りましたが、ドイツの鉄道を信用するのは危険なので、今考えると前泊するものオプションとしてありだったなと思います。さらに言えば、可能なら渡独前に日本で受けてくるのがベストだと思います。
初IELTSの試験当日、オンラインでのスピーキングテストで試験官の強めのイギリス英語が全然聞き取れず半分以上の質問を聞き返すという暴挙に出ました。あれはジェームズボンドでも聞き返すレベルだったに違いないと自分に言い聞かせつつ、気持ちを切り替えて残りのセクションをこなし、最終的にはとりあえずOverall6.0には到達できました。

出典:https://www.tvspielfilm.de/

他の大学では英語能力証明は要求されなかったので、アーヘン工科大学のためだけににそこそこの金額と時間を費やすことになりました。でもこれでようやく全てが報われるんだ。。。そう思ってました。

ところが、一つのミスでそれが全てが台無しになってしまいました。
完全に油断していたとしか言いようがないのですが、大学のポータルからオンライン出願した後に本来であればDoSVへも登録しないといけないにも関わらずそれを失念していました。ベルリン自由大学やフンボルト大学ベルリンへの出願はuni-assist経由だったので、DoSVのIDを連携するとこで自動的にDoSV上でそれぞれの大学が登録されたのですが、アーヘン工科大学の場合は大学独自のポータルからの出願であり、DoSVとリンクしていないので自分でDoSV上で登録する必要があります。今考えれば至極当然なことですが、当時の私はなぜか勝手に登録されるものと思い込んでしまっていました。

DoSVの処理がなされていないということで、オンラインポータル上の合否判定ステータスはずっと審査中のまま止まっており、担当者の方にもダメもとで何回かメールを送ってみましたが返信がないので、事実上不合格です。これまでやってきたことが自分の不注意で台無しになるのはとても悲しいので、みなさんが出願される際には十分にご注意ください。本当に痛い目に遭います。

出典:https://whatculture.com/?rf=logo


8.Technische Universität München(ミュンヘン工科大学)

入学制限:Eignungsfeststellungsverfahren(適性検査)
出願方法:大学の出願ポータル
DoSV:なし/VPD:あり
提出書類①(VPD審査のためにuni-assistに郵送):高校卒業証明書、大学成績証明書・卒業証明書
提出書類②(大学の出願ポータルにアップロード):VPD、ドイツ語能力(C1)証明書、パスポートコピー、履歴書
合否結果:合格

最後はミュンヘン工科大学です。この大学もザールラント大学と同様にUni-Assistに書類を送ってVPDを発行してもらい、それを自分で大学のポータルにアップロードする必要があります。また、学部要綱のページには「場合によっては職業経験の証明書が必要」と書かれていたので認証翻訳士の方にお願いして職務経歴書と退職証明書を日本語からドイツ語に翻訳してもらったのですが、最終的には不要でした。認証翻訳はプロのお仕事ということでそれなりのお値段がします。なので、お金を節約するためにも職場で英語の証明書を発行してもらえない場合はとりあえず日本語の証明書をドイツに持参して、万が一必要になったら現地の認証翻訳士の方に翻訳をお願いすればいいと思います。認定翻訳士はこちらから、言語、地域別で検索できます。

また、ミュンヘン工科大学に提出する履歴書は他の大学よりもより詳細に、かつ空白期間なく記載することが求められるので、小学校から現在に至るまでの過程を結構細かく記載しました。大学のWebサイトは直近リニューアルされましたが、ユーザビリティは結構いいです。

次に選考プロセスについてですが、大きく2段階あります。第一段階はAbiturなどのHZBの成績による選別で、100点満点で評価されます。78点以上の人はその時点で即合格、73〜77点の人は第二段階のテストへ、72点以下の人はその時点で不合格となります。また、直近4学期の学業成績がない場合、仮に78点以上得点していたとしても強制的に第二段階のテストを受けることになります。第二段階のテストは昨年までは面接だったそうですが、今年から筆記試験が導入されました。私は日本語ですら面接が苦手なので、ドイツ語の面接だったら間違いなく落ちてたと思います。なのでタイミングよく今年から筆記試験に変わって本当にラッキーです。テストは大まかに数学と論理思考系の問題から構成されていて、制限時間は90分です。このうち70%以上を得点できれば晴れて合格となります。

数学セクションに関して、高得点をとるポイントを2つまとめます。

①基礎数学の復習
当たり前ですが、日本語で出題されてわからない問題はドイツ語でもわかりません。高校や大学で数学を履修していて、かつ卒業したばかりという人にとっては問題ないかもしれませんが、何年も数学に触れていない人にはリハビリが必要だと思います。私も重い腰を上げて3万年ぶりくらいに日本のアマゾンから青チャートを取り寄せて問題を解いてました。試験本番で出題されたのはどれも基本的なグラフ問題や計算問題ばかりで、頭を使う捻りのある問題は出てこなかったので青チャートの例題問題さえ復習しておけば十分という印象です。強いて言うなら、ドイツでは偶関数、奇関数、点対称、線対称、平行移動などをテーマした関数グラフの問題をちらほら見かけるのでそこが苦手な方は重点的に復習しておくと良いかもしれません。その時におすすめなのがこちらの「GeoGebra」というWebアプリです。

このアプリは関数を入力するとそのグラフを表示してくれるというもので、複雑な関数でも大抵は表示できますし同時に複数のグラフを表示することもできます。そして何よりダウンロードしなくても良いので手軽に使えるのが嬉しいです。私は数学的センスがないので複雑な関数を見てパッとグラフをイメージすることがなかなかできないのですが、これを使うときちんと答え合わせができますし、適当な関数を入れて出力されるグラフを眺めると言う遊びも意外と面白いです。

②ドイツ語の数学用語
ベルリン工科大学の紹介でも少し書きましたが、残念ながら数学そのものは分かっていてもドイツ語で数学用語を知らないと設問が何を言っているのかわからないので、これについてはもはや覚えるしかありません。方法はいくつかあると思いますが、他の大学のモジュールや数学のプレコースを受けたりするのが一番のおすすめです。ベルリン工科大学のEarly Birdコースは大学数学そのものを扱っているので試験内容とは全然被らないのですが、数学の基本的な用語は大学数学でも高校数学でも同じなので、用語を覚えるという点だけでも十分に受講する価値はあると思います。Abiturの問題を実際に解いてみたりドイツのYouTuberがAbiturの数学を解説している動画を見るのもおすすめです。また、(私だけかもしれませんが)日本の高校数学ではあまり見かけない数学記号も色々と出てくるのでそれらもきちんと把握しておくといいと思います。何れにしても問題自体はそこまで難しくないので、論理思考系セクションで点数的に余裕を持たせる為にもできれば数学セクションでは満点をとっておいたほうが安心です。

次に論理思考系セクションについてですが、ドイツ語に加えて一部英語でも出題されるのでしばらく英語に触れていない方は簡単に復習しておくといいと思います。「基本情報処理試験」という日本の資格試験に出てくる様な計算機科学の問題もありましたが、これについては基本的には前提知識がない人でも解ける様に問題の中できちんと手解きがあります。また、並列処理などのコンピュータの世界の話をうまく私たちの日常生活の中にある事象に置き換えた問題もあったりしてテストというよりは解いていて面白い問題が多かったです。また、同じテストを受けていた子曰く、一部の論理問題がGAFAの面接で実際に出題されたものだったらしく、後日調べてみたら本当に同じ問題がネット上で見つかりました。私のドイツ語力と英語力もまだまだなので人のことは言えないのですが、このセクションの対策としては両言語の精度をしっかりあげて設問を正確に読めるようになるのが一番だと思います。

また他の大学と同様に入学前のプレコースがあります。こちらはどちらかというと高校数学の復習ではなく、大学数学全般の導入部分について各分野ごとに少しずつ触れるといった感じです。講義形式と演習形式の両方で構成されており、講義ではそれぞれの単元の根本にある数学的意味やなぜInformatikで学ぶのかといった点が解説され、演習で各単元のさわり部分の問題をみんなで解きます。ベルリン工科大学のコースほどハードモードではないのですが緩すぎるわけでもなく、ちょうどいい感じです。

以上、ドイツの大学のInformatik学部への出願プロセスでした。
最終的にはミュンヘン工科大学へ入学し、今はそこで勉強しています。時間があればまた大学や授業の様子などを発信して行こうと思います。

それではまた!


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