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【育児書 読書記録】続 子どもへのまなざし 佐々木正美 ①

図書館で佐々木正美先生の「子どもへのまなざし」シリーズを探していて、図書検索と取り寄せのために司書さんとお話していると

「この本は良書ですよね。少し昔の本ですけれど、みなさん良いって言われますね。」
「私も育児中に読みたかったな、もう大きくなってしまっていて」

と話しながら手続きをして下さった本。
だから、分厚い本ですが一層楽しみに本を開き読み進めています。

確かに、ネットレビューを読んでみても評判は良いですよね。

実は子どもができる前から、佐々木正美先生の本は書店などでおすすめの1冊として紹介されているのを度々目にしては、いつか自分に一番よく響く時に手に取ることができれば、とある種の憧れを持っていた本です。

カバーイラストもぐりとぐらの山脇百合子さんのものでかわいらしい。

長い本ですので、いくつかに分けて記録を残せたらと思います。





本の基本情報

概要

まず、簡単に本の概要を。
出版 福音館書店
著  佐々木正美 
画  山脇百合子
初版 2001年2月28日
印刷 精興社 
製本 積信堂

著者紹介 佐々木正美先生

著者の佐々木正美先生は、児童精神科医の先生です。
子どもの頃に第二次世界大戦を経験されておられる世代、すなわち現代の子育て世代の祖父母の世代に当たる時代の方です。
経歴としては、高校卒業後に信用金庫等での職歴の後に新潟大の医学部医学科に進学され、その後東大で精神医学を学び、臨床で勤務をされながらブリティッシュコロンビア大、ノースカロライナ大などで学びながら研究にも協力してこられたようです。
また、本著を書かれた頃には川崎医療福祉大教授、横浜市リハビリテーション事業団参与、ノースカロライナ大学臨床教授として教鞭も取っておられたとのこと。(本著の筆者紹介より)

佐々木先生の論文等は読んでおりませんし、本著が初めて読む先生の本ですが、この紹介文を読む限り、日本の児童精神医学を発展させていく上で大変先進的であり、かつその知識を大学や一般のお父さんお母さんに向けても普及啓発を行ってこられた方なのかな、という印象を持ちます。

本の説明

こちらの「続 子どもへのまなざし」は、1冊目の「子どもへのまなざし」発行後に、様々な読者(主に保護者や保育士・幼稚園教諭・小学校教諭といった養育・教育者)から寄せられた質問に先生が答えていく形式で書かれています。
ちなみになぜ「続」から読んだかというと、1冊目が貸し出し中だったためです(笑)。

読書記録と所感

前置きはこの辺りにして、この本の感想と記録に移りますね。


読み進める中で私がまず一つ目に感じたのは、この本の中で語られている子育てのスタンスは、仕事上での後輩指導といいますか、後進育成の中で今の時代にあるべきスタンスとしても、非常に参考になるな、ということでした。
(育児と違うんかいという突っ込みが入りそうですが)

子どもの要望への応え方

この本の中で、子どものわがままや要望にどこまで答えてあげればいいのかという問題について書かれています。
それも、比較的長い分量で繰り返し丁寧に説かれています。

確かに、ゆくゆく子どもが言葉を覚え、自分の要求を訴えるようになってきた時に、どこまで答えてあげると良いのだろうというのは、出産直後の私もうっすらと不安を持っている部分でもありました。
親である私の答え方によっては、外でもわきまえずわがままで自分勝手に育ってしまうのではないか、でもどう応じるのが正解なのか。
今時は対応の仕方によっては虐待と取られてしまうこともあるのでは、とかね。

佐々木先生の答えとしては、
子どもが「もういい」と言うまで答えてあげるのが良い、
とのことでした。

できないから言っているのではなくて、気持ちを満たしてほしいから要望を言っているのだと。
さらには、子どもは元来自立していこうとするものだから、先回りしてやってやるのではなく、子どもが望んだ時に望んだ分、存分に満たしてあげると良い、とのこと。
そして「もういい」と言って離れていくことが、とても理想的な自立の形なんだと。

自分の幼少期と照らし合わせて

自分自身の子ども時代や大人になる過程を思うと、なるほどな、と思いました。
確かに、出かける先に「お母さんついてきて」と言っていた時期がありました。
夜のトイレ(私は阪神大震災を幼少期に経験していたこともあり、なんだかんだそこそこ大きくなるまで「ついてきて」とお願いしていました)、とっても苦手だった水泳の習い事、図書館で本の貸し借りの手続きをすること、服を買いに行く時、部屋選び…。
でも、下の兄弟たちができてくるにつれ自分がついていってあげるようになったり、習い事に友達ができて一人で(もしくは友達と待ち合わせて)習い事の場所まで行けるようになったり、大人の人とちゃんと話せるようになったり、服を選ぶ相談を親ではなくて友達とできるようになったり、親ではなくパートナーと部屋を選ぶようになったり…
そうやって自分でできる=自立するようになると、親がついて行こうか?と聞いてくれても「もういいよ」「〇〇ちゃんと行くから大丈夫」「自分でできるから大丈夫」という風になっていったわけですよね。
知らず知らずのうちに自分も自立していっていたんだなぁとこの部分を読みながら感じていました。

物の要望には?

いやいや、でも物の場合だと、要求される度に応えていたら破産するのでは?

そこについては、物については決まり事を作っていて、物ではなくて気持ちの方をしっかりと満たしてあげることが肝要であり、
逆に物以外の部分をしっかりと満たしてあげれば、物についてそこまでの要求が出ることはない、とのことでした。

同じく自分の幼少期の記憶

ここについても、私自身の幼少期を思い返すと、祖父母はとても私のことを大切に、ある種甘やかして育ててくれたように思うのですが、物については欲しい欲しいと思ったことはないな、と思います。
ジュースやガチャガチャについては「1つだけ」と約束して近所の自動販売機やガチャポンに買いに行ってた記憶がありますが、おもちゃについてはそこまで要求していなかったような気がします。
(といって、本当は記憶にないだけでめちゃくちゃ甘えさせてもらっていたかもしれませんが…💦)

その分、お腹や心をすごく満たしてくれていました。
祖母が作ってくれたごはんや、近くの商店街名物のコロッケやおうどんを食べに連れて行ってくれたり、祖父が広告でよく飛ぶ紙飛行機を作ってくれたり、その作り方を教えてくれたり、抱っこして町を歩いてくれたり、私が来るのを首を長くして待っていたよ、と言って立派なお雛様を毎年準備してくれたり。

でも親子の距離感でこれを十分にしてあげるのは、時に難しさも感じるのかな?という不安も正直あるので、その時はこの佐々木先生の言葉を思い出そうと思います。

心の安全基地は仕事の後輩指導にも通ずる?

さて、ここまで書いておいて、なぜ仕事での後輩指導にも参考になると思ったのか、ですが、
佐々木先生の子どもの要求を満たしてあげることの最たる目的は、親が子供にとっての心の安全基地のような存在になってあげることにあるように読み取りました。
存在として全肯定してくれる場所がある事を知っているから、子どもたちは安心して外の世界に向かって踏み出して挑戦することができるのだと。

仕事における自立と先輩の責任

仕事における後輩教育において、「もう説明したから良いだろう」「次からは一人でできるだろう」と言って自立させるケースを見ますが、仕事の質を担保する上では後輩自身が不安を抱えている状態でそのように自立を促すことは適切ではないと感じています。
これは後輩のためだけでなく、仕事の責任上も、です。
不安を抱えている人材に仕事を任せる。その結果うまくいかなかった場合、責任はやはり一人でできるだろうと判断して任せた側に回ってくると思うのです。

もちろん、後輩側の時は少しでも早く先輩に迷惑をかけないように自立しようと思うことがありましたが、少し頑張って挑戦してできそう、とすら思えないことについては、やってみたものの上手くいかず、余計に先輩にフォローの手を煩わせてしまうことがありました。それならはじめから、この業務は初めてでこの技術に関しては経験がないのでついてきて頂けませんかと指導を乞うた方が良かったな、と。

他部署との仕事 安全基地としてのチーム

また、仕事においては同じ部署だけではなく他の部署とのやり取りも必要です。皆が仲間ではありますが、場合によっては異なる視点の意見を持ち寄ることで意見を戦わせることになるケースもあります。
こういった場合、場面によってはこの部署を代表して他部署のメンバーとやり取りをしたのにうまく意見を伝えられず、自分自身の存在意義、強いては仕事を守れなかったと落ち込むこともありますよね。
そんな時に、安全基地というか、この先輩やチームの上の人にそのことを相談すれば良いのだという安心感がないと、なかなか安心して仕事ができないと思うのです。
上手くいかなかったから隠してしまおうと一人で抱え込んでしまうようになると、その後輩との一層コミュニケーションが難しくなってしまうように思います。

だから、たとえ大人同士であっても、後輩指導の場面では何が不安であるか、その業務は挑戦できるか、してみて難しかったことはあったか、ということにある程度気を配ることは(もちろん、社会人としてそのあたりのことを後輩側も整理して伝える・相談することは必要だと思いますが、経験値として絶対的に視座が少し高い先輩と、何が分からないかも分からない後輩とでは先輩側から見えている仕事の光景は違うと思うので)この時代大切なのかな、と思ったりしています。

結び

…と、ひとまず育休に入りたて(=仕事の頭も少し残っている)かつ、出産を経て自分の子ども時代から今と、我が子とのこの先に視線を向けている今の私の所感その①を記させて頂きました。

この本から得た知見はとても豊かなものだったので、また何回かに分けて残せたらいいなと思います。

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