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「戦略的コラボレーション」のすすめ(前編)

コラボについて」の意見を聞かれることがあったので、前編、後編の2回に分けて記事にまとめてみました。

前編:「戦略的コラボレーション」のすすめ
後編:世にある戦略的コラボレーションの分析

ぜひ、コラボを活用したプロモーションを検討している方は参考にしてください。それでは始めましょう!(今回は前編になります。)

コラボレーションとはなにか

「コラボする」という言葉を頻繁に聞くようになりました。Youtuber同士がお互いのチャンネルに出演しあうことをコラボと呼びますが、コロナで一層の市民権を得たのか一種のバズワードのようにも感じています。

実際に私自身も、深く意味を考えずに「コラボしませんか?」というお話をビジネス文脈ではしています。例えば共催のセミナーを初対面の会社様に依頼するとき、アライアンスや業務提携というと大げさですが、「御社と今後も末永く取り組んで行きたいのですが、まずはお互い負担小さく出来るところから始めませんか?」というカジュアルなニュアンスが気持ちよく伝わってくれるように感じています。

あえてバズワードに乗っかってコラボレーションという言葉を使用しますが、本稿における意味合いとしては「業務提携」「アライアンス」「協業」といった、よりビジネス的な座組みまでを含んだものとしてご理解いただければと思います。

特に、そのようなビジネスの座組みの中でも、「本来は交わらなかったような」という枕詞がつくものにフォーカスを当てていきます。多くのお菓子やおにぎりが鬼滅の刃とコラボしましたが、お菓子と鬼滅の刃はコンテンツとしては無関係です。グッチとドラえもんもコラボしましたが、国すらも違って全く交わる要素はありません。

街を歩けば大小さまざまなコラボレーションを見かけることになりますが、それにはどのような意図があるのか。そのようなコラボレーションを具体的にどのように仕掛けるのかという手法論の話ではなく、そもそもどのように考えてコラボレーションの設計を行うべきなのか、という戦略論の話をしたいと思います。

戦略的コラボレーションとは何か?

私のいたP&Gでは、寝ても覚めても「Strategy(戦略)は何か?」と問いただされる文化があります。戦略上の失敗は、Execution(実行)の秀逸さによって挽回できず、良くも悪くも結果に最もレバレッジがかかる戦略のディスカッションに多くの時間が割かれているのです。

戦略は何か。もちろん多様な解釈がありますが、少なくともP&Gにおいて共通見解として持たれているのは、「経営リソースをどの指標に集中するかの選択」というものです。ヒト・モノ・カネ・ジカンといった経営リソースは常に不足しているので、どの指標を伸ばすのに使うのか集中させる必要があるよね?という考え方です。

この選択の考え方こそが、戦略的コラボレーションの本質だと考えています。つまり、経営上の課題が明確に分かっていて、それを伸ばす為に自社の有限なリソースを使って、本来交わらない相手と手を組む活動は、戦略的コラボレーションと呼べるでしょう。

一方で、「コラボレーションしたい」という手法論からスタートして、とりあえず有名でコラボ出来そうな相手を探すようなものは、戦略的コラボレーションとは呼べません。

プリファレンスをあげたいのか、コラボ先が持っているファン層を取り込みたいのか、シンプルに短期的な売上を作りたいのか。限られたリソースをどの指標に集中させるのかという明確な選択意識がなく、コラボレーションありきで行われているコラボレーションが世の中にはあふれています。

そういう意味では、コラボレーションを戦略的に成功させる勝負は、実は「どの指標を伸ばせばビジネスが伸びるのか」というビジネスドライバーの分析で決まっていることが多いように思っています。

自社のビジネスドライバーが明確になっていて、その中でどの指標を伸ばすのかという選択が成された時に初めて、戦略的コラボレーションを検討することが出来るのです。

戦略的コラボレーションの大原則その1 相手の戦略も達成されること

コラボすることによって自分たちが狙っている指標=戦略を伸ばせることは非常に重要です。ですが、コラボレーションを推し進める上では、コラボ先も狙っている指標を伸ばすことが出来るかどうかが重要になります。

「自分たちは信用という指標をもらい、相手には広告を打つことでのマスの認知でお返しする」といったような、双方のビジネス課題をクリアできるような座組みが組める相手でなければなりません。コラボ先の担当者も会社内で提案を通す必要があり、ボランティアではないのです。WIN-WINを作るとも言い換えられますが、ここが無ければその提案を通すことは難しいでしょう。

戦略的コラボレーションの大原則その2 広告ではなくパブリシティを狙うこと

「本来交わらないものが交じり合う」という戦略的コラボレーションの特筆上、必然的に内容は面白いものになります。正確にいうと、面白いものにすらなっていないコラボレーションはやってはいけません

世にあるコラボレーションは、その面白さからメディアによって進んで取り上げられ、第三者の口をへて世の中に拡散していきます。結果として、自社だけのブランドコンテンツをPaidメディアで必死にプロモートするよりも結果として低コストで、高いエンゲージメントのリーチを獲得できる可能性が高くなります。

「カネ」というリソースが足りないことをきっかけに戦略コラボレーションを検討することは、大いに価値があると考えています。ただし、原則①で述べた通りあくまで「カネ以外」にコラボ相手に提供できるものがあることは重要ですが。

戦略コラボレーションの大原則その3 最後は実行で決まってしまうこと

戦略のパートで書いた内容と矛盾するかもしれませんが、戦略的コラボレーションの多くはExecution(実行)で失敗してしまします。

複数のプレイヤーが自分の戦略を達成しようとするので、お互いの主張がてんこ盛りに入った「カレー味の鰻ラーメン」といったゲテモノになってしまったり、逆にどちらかが妥協してしまったり、大半のコラボレーションが双方の納得する着地点にならないことが多々あります。

だからこそ、プロジェクトのキックオフのタイミングで、「当社は◎◎を達成したい、御社は××を達成したい。△△はお互いに妥協できますね」といった戦略課題のすり合わせを行わなければなりません。自社内であればよしなにクリアできることも、相手がいればその難易度は飛躍します。戦略的コラボレーションを成功させるのは、自社でプロモーションを成功させるより高いといえるでしょう。

さいごに

自社と他社、自ブランドと他ブランドの境目が極めて曖昧になってきています。消費者は、少し前ほど特定のブランドにロイヤルティを持って行動しているわけではなく、場面場面によって自分にとって最適な選択を取れるようになってきました。そんな中で、「戦略的コラボレーション」がブランド経営を行う上での現実的かつ効果的な打ち手になっていることは間違いありません。

後編では、上記のような実際に世の中に起きている戦略的コラボレーションを分析してお届けしたいと思います。後編は1月中旬頃に、DMMオンライン展示会のアニメ・ゲームサミット2022内(注)にて公開します。来場登録された方のみが閲覧できます。(登録無料)

文章をお読みいただきありがとうございました!

(注) アニメ・ゲームサミット2022とは・・・アニメ・ゲーム業界関係者とアニメ・ゲームビジネスに関心のある企業が繋がることができ、新しいビジネス、IPと事業会社とのコラボが生まれる場です。

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