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クーばあちゃんの切り絵展(日中友好会館)

会場にはフォトスポットあり。全作品、撮影OK。

中国伝統の切り絵をベースに、独自の制作方法でユネスコ無形文化遺産にもなったクーばあちゃんこと、庫淑蘭(クーシューラン)さん切り絵展。前から知っていたわけではなく、SNSで広告見て、切り絵の人間が「なんか私に似ているような気がする…」と思い親近感から…だけではなく、切り絵に興味はあり訪れた。

飯田橋の日中友好会館で開催、まさかの入場無料。詳細まで展示こだわってて、受付スタッフも親切丁寧。

図録がなかったことだけが、残念だったので、まとめてみた。

<参考>クーばあちゃんの魔法の花空間 ~庫淑蘭切り絵展~
(日中友好会館主催・協力展)

https://jcfcmuseum.jp/events/event/2023-14/

基本の剪紙(せんし)

中国の伝統切り絵の剪紙(せんし)とは1500年以上の歴史がある中国の切り絵のこと。

ユネスコの無形文化遺産登録もされている。
農村の花嫁修行の1つで親から子へ教えられている技術。

図柄には意味があり、例えば魚(yu)が余(yu)と同じことから、魚のデザインは食料や財産に余裕がある富を願いを込めて作られる。また魚は子沢山のことから子宝祈願も。

中国北部の剪紙は素朴なもの、南部は繊細で綺麗な作品が多いと言われている。クーばあちゃんの作品は北方寄り。

ただ、クーばあちゃんの作品は、剪紙を基本に…と解説してるけど、クーばあちゃんの切り絵は自由な作品だと思う。

伝統剪紙作品と、クーばあちゃん作品は、同じ中国発祥という共通点だけで、市松人形と着物アニメフィギアぐらいちがう(どちらも日本製の固い人形という意味で)。

第1章 花鳥風月

初期作品。個性爆発前から個性的。

幼い頃から農村部で育ったクーばあちゃんは、黄土高原のあらゆる草花に愛着をもっていました。

作品は「満開の梨の花」「花咲くざくろの木」など自然に対する喜びと生命讃歌が表現されています。「生命の樹」は傑作とされています。

クーばあちゃんはハサミと紙で地元の身近な植物をまるで新しい生命が与えられたような作品化していました。

たわむほど満開の梨の木。梨は「利」に通じるものから縁起が良いとされていて、たわむほどの梨は吉祥を暗示しているようだ。

第2章 民族風習

作品から農村部の民族風習を垣間見ることができます。また、民族風習が根強い環境で生まれ育ったクーばあちゃんの憧れや夢が切り絵作品として残されています。

「馬を引くシャンワンと馬に乗るメイシャン」は農村で起きた甘酸っぱい恋愛の説話。シャンワンが馬を操るために鞭を打つとまちがえてメイシャンの足に当たり痛くて泣き叫ぶ場面です。なぜ、この場面にしたのか。

馬を引くシャンワンと馬に乗るメイシャンは2パターンあった。

また、クーばあちゃんはオシャレにも興味があり「1月3日の顔剃り」や「おめかし姉さん」など女性のオシャレにちなんだ作品が数多くあり、クーばあちゃんの願望も切り絵に入れていたことがよくわかります。

1月3日の顔剃り儀式

第3章 神話伝説 

民間信仰の神々。中国の信仰は儒教・仏教・道教の「三教同一」でとても曖昧な概念で、区別ははっきりない。どの神様に対しても祈りを捧げるようすを作品が表している。 

農村部の人々にとって宗教や神話伝説は精神的な支えとして切っても切り離せない大事なもの。年中行事などに色濃く反映されていて、伝統文化として残っています。

クーおばあちゃんは、年中行事や結婚式や葬式、はたまた迷信じみた信仰まで、彼女の解釈や想いをのせて切り絵で表現しています。

善悪の判断や人生哲学、精神論など、パーソナリティが1枚の切り絵に凝縮されているようです。

クーおばあちゃんはあらゆる種類の丸型のもの(月や太陽、電球など。星も丸。)を好んで切り絵にしています。「太陽神に祈る」はクーばあちゃんの目に映る少女が描かれていますが、現実ではありえない構造だったりします。 

クーばあちゃんにとって太陽はとても恥ずかしがりやで、人に顔を見られないようにするために、あたりをまぶしく照らしている。と解釈されています。

作品紹介パネルを見ていると、13人中10人の子供が死んだと衝撃な説明が。時代的に纏足や夫からのDVなどもあったらしく、この明るい作風からは想像できない波瀾万丈。クーばあちゃんに切り絵という才能があって、本当よかった。神様への信仰と切り絵への情熱がメンタル維持によかったんだと思う。

第4章 切り絵の女神

関羽だって。
リーフレットにも引用されている代表作。切り絵の女神。

1985何家の前の崖に落ちて40日間の意識不明。起きてからさらに切り絵に没頭。自らの切り絵スタイルを中国の新たな芸術として確立させていく。

クーばあちゃんは民間宗教の創始者のような神様と人間をつなぐ存在として自らを…云々…。
と説明されてるけど、

死ぬかと思った!やりたいことやんなきゃ!作りたいものモードになったんだろうなと(勝手な感想)

頭の中にあるイメージできるだけ作りまくりたい衝動か。

minneでオーダーあったミニチュア作品を作ってる時も楽しい。相手の反応が楽しみだったり、このミニチュアを作るという目標や達成感がある。ただ、無性に、自分のためにだけに、好きなものを作りたいときはある。いつか作ろうと思ってるけど、なかなか時間がとれない。

でも、昏睡状態から復帰したら、もう、そりゃ…やりたいこと優先ですよ。

これも切り絵の女神。展示の一番最後にあったから最新作?(晩年の作品)。

ドキュメンタリー「恥ずかしがり屋の太陽」の中では、クーばあちゃんの切り絵は次のように表現されています。

ここは人間の世界?それとも神々の世界?
ただ一つ確かなのは、ここは”彼女の”世界だということだ。

ドキュメンタリー「恥ずかしがり屋の太陽」日本語訳

クーばあちゃんの作業箱

モノづくりで悩むことの1つ道具。

効率の良い道具箱、丈夫さは?
箱の大きさは?
どこで売ってるかな?
無印のやつオシャレだけど高い!

…とか、考えてるとしんどくなる。
これ、どうでもいいよな。

自分で作っちゃえばいいし。

ハサミは?
どのメーカーの紙使う?
綺麗に切るには?
やり方は?

そんなんもいいや。

くぅばあちゃん作品の魅力は機械のようなカットではなく不揃い・ギザギザも含めて素敵。それに惹かれる私なのだから。ほんと、細かいこと考えずモノづくり楽しもうっと!と思える展示会だった。

作品memo

初期作品「獅子の子」。郷土玩具をイメージしているらしい。
クーばあちゃんの獅子、かわいい。
いちばん蛍光色だった作品


飯田橋・寄り道memo

日中友好会館の1階のレストランが良さげだった件について。絶対おいしい店のオーラやん。

ただ、この日は駅前に日本一のボロネーゼを見つけてしまい…食べました。

ただ、これは自分の落ち度ですが、白シャツにミートソースが飛んだ。ミートソースと一緒に切り絵を見ていました。

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