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【読書感想文】『京都の平熱』裂ける京都

鷲田清一『京都の平熱』を読んで

 こういう町の並びは、言うまでもなく「あっち」の世界に通じている。法悦の世界(神社仏閣)、推論の世界(大学)、陶酔の世界(花街)。だが、そうした「表」のきわで、ひっそりとつつましくきまじめに生きてきた京都人の日常のそのただなかに、さらに「別の世界」(autre monde)につづく孔がいっぱいある。

鷲田清一『京都の平熱 哲学者の都市案内』(講談社学術文庫、2013、5頁)

故郷の京都に、
東京や大阪のような派手さはない。

けれど確かにあの街、特に洛中周辺には
住民すら気付かない「奥」に通じる裂け目、
その切れ端がちらほら落ちていた。

地元としての京都。観光地としての京都。
上京後、割かれた見方による立体視にまっくろな奥行が映り込み、
徐々に孔自体も意識する。

しかし、途切れはあくまで非公式の闇玄関。
未だ「そこ」に辿り着いたことはない。
暗い廊下を渡る途中、居場所が分からず引き返す。


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