見出し画像

経営組織論と『経営の技法』#329

CHAPTER 12.3.3:変化に対応する ③対応その2 自己組織化
 2つ目は、そのうえでの自己組織化が重要になります。自己組織化とはマネジャーなど組織の上位者が、指示を出して組織をコントロールするのではなく、組織メンバー自らが自分たちを律し、管理し、協働しようとすることです。サッカーでは、作戦などはあるとしても、プレー中は基本的には選手たちが敵の様子に対応しつつ、味方同士連携をして勝利をめざします。事前の作戦は監督など選手以外のメンバーも含めて対策を立てますが、そのとおりにいかない場合には、選手たちが試合中に自発的に修正しながら試合を進めていく必要があります。
 上司やマネジャーからの指示命令によってだけ動くのではなく、組織メンバーの判断によって連携を変えたり、意思決定を行ったりする自己組織化が急流の状況には必要になります。ですから、マネジャーのようなマネジメントを行う立場の人間は、コントロールしようとするりよも、組織メンバーの自己組織化を支援することが必要になります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』282頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 常に組織変革が起こっている会社組織で、変革に対応できるための条件が4つある、と前々回部分(#327)で指摘されています。今回は、そのうちの2つ目です。
 2つ目は、上司の指示が無くても自動的に現場が対応できるように作りこむことです。
 ここで、会社組織をスポーツ選手の体に例えてみましょう。前回、スキーに例えて急なコブ斜面でのウェーデルンと説明しましたが、自己組織化はこの場合、何度も練習して様々な状況で体が勝手に反応するようにすることに例えられるでしょう。
 実際に会社組織で考えた場合も、リーダーは仕事を通してメンバーが成長したら、つまり任せても大丈夫であることを確認したら、それに合わせて少しずつメンバーに判断を委ねていくことになるでしょう。部下を育てるということと組織を作っていくということは、一体のものなのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、上記のようにリーダーから現場に判断を委ねていくためには、経営者が役員やリーダーにどんどん判断を委ねていかなければなりません。かといって、何でもかんでも委ねてしまって組織の暴走をコントロールできなくなると、経営者として失格です。
 この加減を上手に取れることが、経営者の資質として重要です。

3.おわりに
 ここでは変革期の条件として議論されています。極端な状況での分析ですが、権限や責任をどんどん下に委ねていくという会社組織の設計は、例えば松下幸之助が戦前から実践してきた方法です。現場の権限や能力が高まり、その結果、分社化やコーポレート制の導入の基盤となりました。
 経営者に変わって判断できる人が増えることで、経営者個人の資質を超えた大きな組織に育てることが可能となりますので、事業規模を大きくして競争力を高めようとする場合には、このような権限移譲は必須となります。また、組織の設計も可能性の幅が広がりますので、組織設計の自由度が高まり、柔軟性が高まります。
 このように見れば、自動組織化は変革期に限られるものではない、と評価できます。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?