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経営組織論と『経営の技法』#300

CHAPTER 12.1:組織の変化に関する3つの考え方 ①
 1つは、組織は意図しなくとも自然に変わっていくという考え方です。組織は日々さまざまな経験をしています(正しくは、組織の中の人々が経験しているのですが)。そして、そこでさまざまなことを学習していきます。それらの学習は大きなものばかりではなく、ちょっとしたことも多いですが、それらを学習していくことによって、組織は少しずつ変わっていくことがあります。あるいは、他の組織と合併や提携するといったことを通じて、他の組織のやり方や価値観が組織の中に入ってくることもあるでしょう。もちろん、組織に参加している人は常に同じとは限りませんから、人が入れ替わることによっても、緩やかに組織は変わっていくことがあります。
 このように、組織は時の経過とともに自然と変化していくことになります。私たち人間も、「自分を変えるぞ」と意識していなくても、子どもの頃の自分とは考え方や体つきが変わっていきます。組織も同様に、日々の活動を行っているうちに変わっていくと考えることができるのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』268頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 上記本文では、会社組織が自律的に変化していく様子が示されています。
 けれども、人事的には無為無策であるわけではありません。仕事を通した学習も、それが個人に蓄積し、組織に共有されるように動機付けや仕組みづくりが必要です。また、人が入れ替わる場合にも、少なくとも新規採用が行われますし、場合によっては退職する従業員に退職を促したり解雇したりする場合もあります。
 このように、会社組織が自律的に変化していく場合であっても、会社組織の人事は少なからず意図的に活動しています。人事部が意図的に活動している面があっても、会社組織の側から見れば会社の組織的な活動の中で当然想定される活動であり、自律的な活動に含まれる、ということでしょう。つまり、特に経営からの具体的な指示がなくても、会社組織であれば自動的に対応されるべき範疇の変化であると言えるのです。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、会社組織がこのように自律的に変化できるように会社組織を作り、運営できなければなりません。

3.おわりに
 何を自立的な変化と見るかは、実際のところ会社によって定義が異なり得るでしょうし、そもそも自律的な変化だけを特に定義しても、例えばこの自律的な変化とすべき活動が適切かどうかを必要に応じてチェックし、修正すべき場合があるでしょう。要は、自律的な変化が期待できるほど組織が成熟すればよい、という組織作りの1つの目安として使えそうなツールです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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