松下幸之助と『経営の技法』#7

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.2/22の金言
 偉人の通りにやっても失敗する。伝記は参考にしても真似するものではない。

2.2/22の概要
 松下幸之助氏は、以下のように話しています。
 山岡荘八の「徳川家康」が経営者の間で流行したことがある。しかし、徳川家康しかできないことが書いてあるので、その通りやると失敗する。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 これは、コロンブスがサンタマリア号以下3艘の船の乗組員90名(120名説もある)をどのように束ね、率いて、新大陸発見につながったのか、という部分の経験を、そのまま真似しようということになります。
 それが、現代の経営にそのまま当てはまらないことは、状況の違い、事業目的の違い、など、根拠を上げれば幾らでも上げることができます。
 このことから、逆に、どれだけ似た状況にある2つの会社があり、似た経験や性格を有する経営者がそれぞれにいたとしても、同じ経営は失敗する、ということになります。全く同じ会社と全く同じ経営者は存在しないからです。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 さらに、ガバナンス上のコントロールとして、株主による「適切な」コントロールも期待されるべきです。
 この点も、全く同じことが言えます。ともすれば、投資家は会社経営に直接関与しないことから、会社の個性をある程度抽象化して投資対象や投資方法を判断しますが、投資家として実際に会社経営に関わってみる場合には、会社の違いを理解しなければ、会社をミスリードしてしまう危険があるのです。

5.おわりに
 問題は、自ら経営塾を主宰していた松下幸之助氏自身が、他人のマネをしてはいけない、と言っている点です。
 では、経営塾で、氏は何を教えていたのでしょうか。
 氏の言葉から考えれば、経営塾では、教えられたとおりにやればきっとうまく様なことを教えていたのではなく、経営を志す塾生たちが、自分のやり方を見つける手助けをしていた、ということになるのでしょう。氏も、上記説明の中で「軽い参考になるから読めというのだったら、それは読むけれども」と発言しています。
 十分咀嚼せず、自分の頭で考えることの無い知識は、経営にとって無意味だ、ということのように思われます。
 どのように感じましたか?


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