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経営組織論と『経営の技法』#282

CHAPTER 11.2.2:弱い紐帯と強い紐帯 ④密度と閉鎖性
 また、高密度のネットワークでは、ネットワーク内部でのやりとりが多くなるために、自然とそのネットワーク内での規範や意識が同質的になります。このような同質的な規範は逸脱的な行動をとるネットワークの参加者に対して、ネットワーク内の規範や意識に従うことを強制したり、そうでなければ、排除しようとしたりします。閉鎖的なネットワークですから、他のネットワーク参加者もこれに同調することになります。
 つまり、高密度のネットワークでは、規範や意識が同質化しやすく、それに逸脱した参加者に対して強い制裁を行いやすくなっているのです。これでは、ネットワークから得るものがあったとしても、参加者の行動の自由が制限されてしまい ます。一方で、低密度のネットワークは、開放的なネットワークになっていますから、このようなことは起こりにくいのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』256~257頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 主に同調圧力のことが論じられています。
 これが会社内で起こると、人事権の過剰な行使やハラスメント等の問題が生じやすくなります。組織の一体性や突破力を重視する会社にこのような問題が生じやすい土壌があります。
 けれどもそのような会社組織であることを自覚していれば、会社と従業員お互いがそれぞれの立場や距離感を自覚的に設定しますので、かえってこのようなトラブルは生じにくくなります。
 むしろ、会社としては多様性を重く見ているのに、管理職者がこれを勘違いし、自分のやり方で自由にチームマネジメントしてよいと思っている場合に、自分の価値観を部下に押し付けようとしてトラブルになることが多いようです。会社は同調圧力をかけないつもりであり、従業員もそのように思っているのに、管理職者が同調圧力をかけてしまうような場合です。
 けれども、管理職者は、会社の方針や文化の中、という制限の中で自由が与えられているだけです。会社は管理職者に一定の人事権を託して、そのチームの管理を任せているのですから、管理職者にその方向性や使い方を正しく理解させなければ、会社組織が崩壊しかねません。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 同調圧力が会社外で起こると、会社内とは異なり、原則は特に何か規制に触れるわけでも、法的な責任が発生するわけでもありません。
 もっとも、それが談合のように独禁法に違反したり、下請けいじめのように下請法に違反したりするなど、自由競争の基盤を損なう事態にまでなれば、これら経済法に違反する違法な行為となります。

3.おわりに
 同調圧力と多様性や自主性は、自身が自由に行動できる範囲に大きな影響を及ぼします。対立するばかりではありませんが、緊張関係にあることが多いことを理解しましょう。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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