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経営組織論と『経営の技法』#280

CHAPTER 11.2.2:弱い紐帯と強い紐帯 ②弱い紐帯
 一方で、弱い紐帯関係では、秘密の情報や詳細な情報は入ってくることは少ないものの、自分が知らない新しい情報が入ってくる可能性が強い紐帯関係よりも高くなります。弱い関係だからこそ、自分の持つネットワークの外側の情報、つまり異なる世界の情報が入ってくる可能性が高くなるのです。これを弱い紐帯の強さと呼びます。
 では、弱い関係も強い関係もそれぞれにメリットがあるとすると、ネットワークをどのように構築することが自分たちの組織にとって最も有利だと考えればよいのでしょうか。自分たちが困ったときに助けてもらう、協力して何かのコトに当たる、ということを考えれば、強い紐帯を中心にしたネットワークが有効になると考えられます。つまり、長い濃密な関係を通して出来上がるネットワークを構築することが得策となります。
 一方で、イノベーションや新しいアイディアといったことであれば、弱い紐帯の強さが活かされます。なぜなら、弱い紐帯からは自分たちが知らなかった知識や情報、観点がもたらされる可能性が高いからです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』255頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 前回と同様のコメントとなりますが、組織内部の問題として見た場合には、強い紐帯の場合には同質性が強調され、一体性や突破力が期待されますが、弱い紐帯の場合には多様性が強調され、柔軟性や包容力などが強調されます。
 この視点を、組織外のコミュニケーションでも活用しましょう。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、社内であれば組織論、社外であればコミュニケーションやネットワークに関し、これらの視点を使いこなせる人材になって欲しいと思います。けれども、そのことによって会社の個性や存在感を失わせることになっても困ります。経営者の個性や能力は、このようなメリットデメリットの見極めのさらに奥に存在するものです。

3.おわりに
 次回から、このような違いの生ずる背景を考えます。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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