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経営組織論と『経営の技法』#298

CHAPTER 11.3.2:ネットワーク型組織の3つのタイプ
③プロジェクト・ネットワーク

 プロジェクト・ネットワークは、相互に補い合うことができる相補的なスキルや技術を持つ参加者が特定の目的のために集まったネットワークを指します。プロジェクトとは、特定の課題を達成するために形成され、時間的に限定されたものです。
 たとえば、映画の製作などがプロジェクトにあたります。ただし、映画のプロジェクトは1回限りではありますが、中心になるメンバーや過去にうまくいった場合など、人員が次のプロジェクトでも一緒になることは少なくありません 。日本では、黒澤組、小津組などと呼ばれるように、監督を中心に脚本家やカメラマン、役者などプロジェクトをまたいで同じメンバーで映画を撮影するケースは、このプロジェクト・ネットワークの典型的なものといえます。この場合、過去のプロジェクトでの相互の評判や人脈が、次や将来のネットワークの形成において軍要なものとなります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』265頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 しっかりしたプロジェクトの場合には、コアとなってマネジメントを行う会社が中心となって案件管理などを行い、メンバーとなる会社との間でしっかりとした契約書を交わすような場合があるでしょう。そうなると、ネットワーク型の組織から市場型の組織に近づいていきます。
 けれども、市場型と異なり、契約によってがんじがらめに縛るよりは、相互の信頼関係を前提にそれぞれの独自性や創造性を活用しあう面が強くなります。このような緩い形で構成員を集め、それぞれの強みをそれぞれが主体的に発揮しあうような経営は、ワークシェアリングなど近時注目されているビジネスモデルですので、非常に応用可能性が高いと評価できます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 この形態こそ、信頼関係がなければ二度と声がかからないという意味で、信頼関係やネットワークが非常に重要ということになります。お互いに縛りあうものがないからです。
 そこで、このような「組織」の構成員となった会社の経営者は、他の構成員の信頼をつなぎ留め、高めることが重要になります。

3.おわりに
 狭い意味の会社組織論で見れば、会社の外の事情となるべき社外のコミュニケーションですが、会社組織をより広く捉え、コミュニケーションも会社組織の内側の問題として検討すると、様々なポイントが見えてきました。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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