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経営組織論と『経営の技法』#263

CHAPTER 11.1:資源依存パースペクティブ ②具体例と定義
 しかし この関係は、常に均衡がとれているわけではありません。自分たちはAという組織の持つ資源を必要としていても、Aは、自分たちが持っている資源を特に必要としていないこともあります。たとえば、資金繰りで困っている企業は、しばしば銀行から借入れを必要とします。銀行は資金を貸す代わりに、企業経営に指図をしてくることがあります。もし資金を貸した企業が貸倒れになってしまえば、銀行は損害をこうむるからです。
 これらの指図は、人件費を削ることや人員の削減など、企業からすると受け入れにくいことも少なくありません。しかし、それが資金を融通してもらう条件だとすれば、企業はその指図を引き受けざるをえません。つまり、銀行の資源に依存しているために、銀行の影響力を受け入れざるをえないわけです。
 組織間の関係(あるいは組織内の関係)をこのような資源の依存関係で捉えていく考え方を資源依存パースペクティブと呼びます。資源依存パースペクティブの根本にある考え方は、相手に対する依存度が高いと相手に対するパワーが小さくなり、反対に、依存度が低いとパワーが大きくなるというものです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』246頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 上記の銀行の例は、銀行が会社組織の在り方に口出ししてくることです。スポーツ選手で、他者がその体格や身体的能力に介入してくることは、例えば団体競技の場合にありそうです。与えられたポジションの役割を十分果たしてもらうために、そのポジションに重要な機能を高めてもらうよう、チームメートから要求される場合です。チーム内で相互にそれぞれのスキルを活用しあい、チームとして勝利する場面を目指している状況をイメージすれば、すなわちそれぞれのスキルが「資源」であると考えれば、チーム全体の能力を高めるための相互の干渉が、各プレーヤーの能力や体力向上につながります。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 前々回#261に指摘したとおり、経営者は、スポーツ選手の身体に相当する会社組織を動かす役割を担いますが、この全て(駆け引きをすることも、競技本来の競争をすることも、さらにそのために体を鍛えること)をバランスよく継続的に行うことが必要です。投資家である株主から投資対象となる経営者の資質の問題として見た場合、このようなトータルな能力が求められるのです。
 チーム相互、という発想を加えてみると、他社から働きかけられるだけでなく、他社に働きかけることも視野に入れることになります。つまり、他社の組織の在り方についても理解し、提言や要求することも、状況に応じて必要になってくるのです。

3.おわりに
 資源の依存度が、会社相互の関係性に影響することはすぐに分かりますが、それが組織論にどのような影響を与えるのか、考えていきましょう。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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