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経営組織論と『経営の技法』#343

CHAPTER 12.4:Column パワー構造の変革の難しさ ③理由その2 パワーの自己強化
 2つ目は、パワーの自己強化です。パワーを持つ部門や人は、自分たちの部門により多くの人材を集めることができますし、それらの人々にとって魅力的な報酬をパワーがない部門よりも多く用意することができます。結果として、優秀な人がそこに集まり、パワーは拡大していきます。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』288頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 ここでも、#343と同様にパワーを組織変革のエネルギーにする場合を考えてみましょう。
 すなわち、パワーが自己強化していく方向性が組織変革の方向性と逆だからこそ障害になりますので、パワーの自己強化が組織変革につながるように仕向ければ組織変革もよりスムーズになるでしょう。組織変革というと、従前のパワーを否定したりその内容を変更したりすることが必要と考えそうですが、企業の一体性や突破力を高めるためにパワーを強化する場合も考えられます。
 パワーの自己強化がツールとして活用できる場合はどのような場合か考えておきましょう。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、経営者がそのパワーを自己強化していくことは、その統制力を高めることであり、そのことだけで直ちに悪いということではありません。
 しかし、経営者が株主によるガバナンスの影響力を弱める方向で自己強化を始めた場合には、ガバナンスが利かなくなり経営の合理性やその基盤が失われかねません。自己強化は上記本文のようにある程度必然的に発生する現象であり、したがって投資家は、それがガバナンスの実効性を奪う方向で機能し始めないか、注意しておく必要があることになります。

3.おわりに
 パワーの自己強化への対応は、どうしても政治的な問題になりそうです。それを牽制させるために、かつての大企業では派閥を対立させ、相互けん制する状況が出来上がっていました。もちろんマイナス面も大きく、会社内での派閥の対立を積極的に推奨するものではありませんが、そのような面もあるのだ、ということを知っておくことは、会社組織の中の政治的な力学を理解するうえで非常に参考になります。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。

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