松下幸之助と『経営の技法』#23

 「法と経営学」の観点から、松下幸之助を読み解いてみます。
 テキストは、「運命を生かす」(PHP研究所)。日めくりカレンダーのように、一日一言紹介されています。その一言ずつを、該当する日付ごとに、読み解いていきます。

1.3/9の金言
 自らの行動をいつも冷静に思い返してみる。心を外へ出して、外から内を眺めてみる。

2.3/9の概要
 松下幸之助氏の、「素直な心」「自己観照」に関する話の1つとなります。「素直な心」については3/5から3/8まで、「自己観照」については2/26から2/27まで、それぞれ検討しています。その両者を結び付けていますが、その中でも特に以下の点を強調しています。
 自分を客観的に見ることは、簡単ではないが、心がけて日ごろから訓練することでしだいにできるようになる。それによって、自分本位に陥らず、物事を判断することができるようになり、とらわれのない素直な心を生み、それが高まると、常にものの実相を正しくつかむことができるようになる。つまり、自己観照は素直な心を養うための1つの実践である。

3.内部統制(下の正三角形)の問題
 まず、社長が率いる会社の内部の問題から考えましょう。
 松下幸之助氏は、経営者のあり方を述べていますが、会社組織が経営者の思うとおりに機能することが当然の前提でしょうから、会社組織のあり方でもあるはずです。
 そして、ものの実相が見れるようになれば、リスクセンサー機能が高まるだけでなく、リスクコントロール機能も高まります。さらに、経営的にも既成概念にとらわれず、長く利益の出る事業を構築できる可能性が高まるでしょう。
 会社組織に、常に自己観照をさせ、これらの機能を高めることが、経営にとって有益なのです。

4.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 次に、ガバナンス上の問題を検討しましょう。
 投資家として見ると、このように会社としての感度を高めてくれる経営者を選び、あるいは現在の経営者に対して、このような感度を高めてくれるように働きかけることが重要、という意味になります。

5.おわりに
 もちろん、特に経営の観点から見た場合、他社との差別化が必要ですから、予定調和的で個性のない結論が「実相」となるわけではありません。経営は、競合他社との差別化がポイントになりますので、当たり障りのない常識的な結論にたどり着くことではなく、まだ競合他社が気づいていないビジネスのヒントにたどり着くことがポイントになるはずです。
 つまり、斬新だが、独りよがりではない、というバランスを取るうえで、「実相」を見抜く「素直な心」「自己観照」が活用されるのです。
 どう思いますか?


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