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経営組織論と『経営の技法』#252

CHAPTER 10.2.2:組織における適応 ②リアリティショックの影響
 リアリティショックを経験することで、組織や仕事への適応が遅れてしまうことがあります。なぜなら現実の組織や仕事に対して違和感を持つことで、仕事におけるさまざまな経験に対して前向きに捉えることができなくなってしまうからです。
 たとえば、職場や組織、仕事であれ、リアリティショックを受けると、新しい仕事を与えられても自分はこんな仕事をするためにこの会社に入ったわけではないというように、その仕事経験を先のキャリアに活かそうと考えることができにくくなってしまいます。そのため、社会化プロセスにおける学習の進み具合も遅くなってしまいます。
 また、違和感があることで、組織の仲間との距離にも影響を与え、うまく組織になじめない状況を作り出してしまうことがあります。結果として、仕事へのモティベーションも、会社への所属感も仲間との良い関係も持てなくなってしまい、最終的には組織を離れることにつながってしまうこともあります。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』230頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 リアリティショックの影響が出る仕組みは、人間心理にありました。従業員の意欲を引き出さなければ、組織は力を十分発揮できません。
 このことから、リアリティショックの影響を少しでも小さくするべきである、それが会社組織を健全にするために必要なことである、ということが導き出せます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 投資家である株主から投資対象である経営者を見た場合、時に会社の外から経営者を招聘すべき場合があります。その経営者が、会社に来たもののイメージと違ってショック、などと言うようでは困ります。会社の状況は、公開会社の場合には公開情報などで相当な精度で情報を手に入れられますし、良いことばかりではなく悪いこともあるから、社外に人材を求めているのだろう、という程度の予測も当然立つはずです。
 このように、経営者の資質としてみた場合、リアリティショックと言いそうな人物は、最初から経営者候補にすべきではないでしょう。

3.おわりに
 転職慣れしてくると、リアリティショック慣れしてきて、入社した会社のあら探しをして、ほらね、ここはこんな会社なんだよ、としたり顔で感じの悪いことを自慢げに話すようになるタイプの人もいます。周囲に悪影響を与えますので、こっちも困った問題ですが、一々注意して態度を改めてもらう以外には、辞めてもらうしか方法はないでしょう。さらに達観してくると、あら探しすら興味を失うでしょうから、早くその領域に達してもらいたいものです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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