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経営組織論と『経営の技法』#281

CHAPTER 11.2.2:弱い紐帯と強い紐帯 ③密度と情報
 ここでは、まずネットワークの密度の観点から考えていきます。ネットワークの密度とは、ネットワーク内で可能なつながりの数と実際のつながりの数によって決められます。たとえば、5つの組織が参加するネットワークがあったとすると、可能なつながりの数は、図11-1のように、その方向性を無視すれば24本となります。もし、実際にそのすべてが取引関係や情報交換など、何かしらのつながりを持っているとすれば、密度はきわめて濃いものになります。一方で、実際のつながりが数個しかなければ、そのネットワークの密度は薄いものになります。以下では、高密度のネットワークと低密度のネットワークの違いについて考えます。

図11-1

 高密度のネットワークは、みんながそれぞれつながっているネットワークです。そのため、何かあったときには一丸となってお互いをサポートし合うような団結力を持っています。 しかし、一方で高密度のネットワークは閉鎖的なネットワークにもつながり、情報の収集力と他者の行動の制約力という点で、ネットワークに参加している人にとって必ずしも良いことばかりをもたらすわけではありません。
 まず高密度のネットワークでは、ネットワークヘの参加者は相互に強いつながりを持っています。ゆえに、新しい情報を収集する能力が低く、ネットワーク内で流れる情報も同質的な情報が多くなる傾向にあります。つまり、どこかで聞いた情報がいろいろなところから入ってくるという状態というわけです。一方、低密度のネットワークでは、それぞれが異なる相手と接触する機会や情報を交換する機会を持っている状態です。そのため、多様な情報がネットワークの中を流れるようになるのです。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』255~256頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 密度は、分母に組み合わせとして考えられる全ての関係性を置き、分子に実際につながりのある関係性を置きます。したがって、それぞれの濃さを考慮できない限界はありますが、それなりに定量的統計的な数字でコミュニケーションの状況を把握できます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 経営者が、会社内の状況を把握するにしても、会社外のコミュニケーションの状況を把握するにしても、ここでの密度のような定量的統計的な数字があると、冷静に客観化できそうです。感覚的に状況を把握する能力が経営者に必要ですが、それだけでない冷静さも必要です。心は熱く、頭は冷たく、というような言葉もこのようなことを示しています。

3.おわりに
 年賀状のやり取りが無駄と考える人が増えていますが、年に一度、自分のコミュニケーションの棚卸になるので有意義、と考える人もいます。後者の観点から、コミュニケーションの現状を整理すると良さそうです。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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