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経営組織論と『経営の技法』#279

CHAPTER 11.2.2:弱い紐帯と強い紐帯 ①強い紐帯
 では、このような埋め込まれた紐帯の関係は、強いほうがよいでしょうか、弱いほうがよいでしょうか。当たり前に考えれば、強い関係であればあるほど、相互に信頼感は生まれますし、より詳細で秘密の情報も交換することができるでしょう。人間関係においても、家族のように長く強い関係であれば、困ったことも相談できますし、それについてサポートもしてくれるでしょう。将来の進路に悩んだときに相談するのは、ただ挨拶をする程度の仲の人ではなく、お互いよく知った信頼のおける人であるのはごく普通のことです。
 しかし、弱い関係のメリットも、実はあるのです。強い紐帯の関係では、確かに、秘密に近い情報を得ることができます。 これは強い関係のメリットでもあります。しかし、強い紐帯の関係にある相手は、日頃から頻繁に情報を交換する相手でもあります。だからこそ、強い関係を維持することができるのです。
 また、ネットワークで考えれば、強い紐帯の関係にある相手は、自分の他の強い紐帯の関係にある相手とも関係が強い可能性があります。つまり、同じネットワークの輪に入っている可能性が高いのです。そのため、得られる情報は、秘密の情報であることもありますが、自分にとって新しい情報は持っているネットワークが双方とも似ている可能性があるため、それほど入ってきません。
【出展:『初めての経営学 経営組織論』254~255頁(鈴木竜太/東洋経済新報社2018)】

 この「経営組織論」を参考に、『経営の技法』(野村修也・久保利英明・芦原一郎/中央経済社 2019)の観点から、経営組織論を考えてみましょう。

2つの会社組織論の図

1.内部統制(下の正三角形)の問題
 近時の言葉で言うと、多様性や同調圧力に関わる問題とも言えるでしょう。
 すなわち、上記本文でも弱い紐帯のメリットとして新しい情報が入ってくる点を指摘しています。これは、強い紐帯の場合には新しい情報が入らなくなり、自然と同質化していき多様性が失われるであろうことを予想させます。
 組織論として見た場合、同質の集団には一体性や突破力があり、多様性のある集団には柔軟性や対応力があります。このようなイメージが、コミュニケーションの中でも同様に当てはまると考えられます。

2.ガバナンス(上の逆三角形)の問題
 会社の外のネットワークの問題として見た場合、例えば会社経営者は同業者との関係構築も必要ですが、異業種交流会のように幅広い付き合いも必要です。前者が強い紐帯、後者が弱い紐帯と対応できますが、その際のメリットとデメリットを整理しておくことは、外でのコミュニケーションの在り方を考える際の海図になるでしょう。

3.おわりに
 コミュニケーションの在り方を冷静に分析しておくことは、周囲の状況や感情、思い付きなどに流されない自分自身の立ち位置を作るのに役立ちます。

※ 鈴木竜太教授の名著、「初めての経営学 経営組織論」(東洋経済)が、『経営の技法』『法務の技法』にも該当することを確認しながら、リスクマネージメントの体系的な理解を目指します。
 冒頭の引用は、①『経営組織論』から忠実に引用して出展を明示すること、②引用以外の部分が質量共にこの記事の主要な要素であること、③芦原一郎が一切の文責を負うこと、を条件に、鈴木竜太教授にご了解いただきました。


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