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劇団四季尽くしの1月(2024年1月の観劇記録)

ここ数年は年1-2回のペースで劇団四季を観ていたが、1月はたまたま重なり、1ヶ月で3作品を観劇。

↑これまでの観劇記録はこちら↑


ウィキッド


前回、劇団四季のウィキッドを観たのは2014年4月なので、約10年ぶり…!
(2017年にはBWでも観劇した)

私の観劇は、USJのウィケッド(ミュージカル Wickedを約30分に短縮したショー)から始まった、といっても過言でもないので、思い入れはかなり強い。

↑作品との出会いはこちら↑

作品について

久しぶりに観劇して、いい作品だなとしみじみと感じた。

脚本・楽曲・装置・照明・衣装…
どれを取っても一級品で、歴史に残るミュージカルの名作だと思う。

全編を通して、丁寧に伏線を張っている脚本だなと改めて実感した。
日本語にした段階で抜け落ちているニュアンスもあるだろうが、特定の言葉を何度も繰り返すあたりは、”Hamilton”にもエッセンスが受け継がれている気がする。グリンダの最後の「また恐ろしい脅威が来るかもしれないが」(※ニュアンス)という台詞も随分と含みを持たせているなと感じた。

二階席だったので、照明がよく見えたのだが、
”The Wizard & I”(「魔法使いと私」)で、エルファバは幸せを噛み締めているはずなのに、格子(=牢屋)の照明が当てられているのも示唆的だなと感じた。

観る度に新たな発見があり、新鮮に楽しめるのがこの作品の素晴らしさだと思う。

キャスト

2016年の札幌公演以来の上演ということで、初出演のキャストの方がほとんど。
私も新たな気持ちで観ることができた。

グリンダ:真瀬 はるかさん

印象的だったのは、"Thank Goodness"(「魔女が迫る~この幸せ」)で、自分自身に幸せだと言い聞かせている表情。
歌唱力も相まって、説得力のある場面に仕上がっていた。

一幕はもう少し弾けている方が、二幕での変化ぶりがわかりやすそう。
ウィキッドはグリンダの成長物語でもあるんだなと改めて実感した。

エルファバ:三井 莉穂さん

全編を通して丁寧なお芝居が好印象。
道を切り開く意思の強さだけでなく、独善的で癇癪を起こしやすいという部分もしっかりと表現されていた。
そのため、二幕終盤でチステリーたちに怒鳴りつけるシーンでは、いつも唐突感を感じていたけれど、「そうだよな、エルファバってそういうところあるもんな」と今回はすんなりと納得できた。

歌声は四季の歴代のエルファバに比べると少し高め。
特に"Defying Gravity"「自由を求めて」)のラストでは、その歌声が存分に生かされていた。

フィエロ:カイサー タティクさん

「あのイケメン誰だか知ってる?」というグリンダの台詞がピッタリのビジュアル。
登場シーンから少し憂いを帯びている感じは、北澤さんのフィエロを彷彿した。


ネッサローズ役:若奈 まりえさん

「ずっと待ってたの、運命の人を」という歌詞がしっくり来る、愛らしさのあるネッサローズ。
二幕の鬼気迫る感じは、あと一声欲しい。

ボック:緒方 隆成さん

ソロナンバーこそないものの、歌唱では結構難しいフレーズが多い印象だけど、安定感のある歌唱だった。
個人的には、グリンダに対する執着心とか、もう少し粘着質な様子が見えてもいいと思う。

ディラモンド教授:平良 交一さん

ちょっとした台詞でも流石の美声。ヤギの鳴き声もお上手。
細かいお芝居が増えてくると、なお良さそう。

マダム・モリブル:八重沢真美さん

八重沢さんのマダム・モリブルを観るのは、2009年ぶり!
悪役だけれど、仰々しい芝居で魅せるのではなく、淡々と丁寧に演じられていると感じた。
一つひとつの台詞や歌詞に説得力があり、とても良かった。

オズの魔法使い:飯野 おさみさん

飯野さんのオズの魔法使いは、人当たりが良さそうなところが好き。
魔法が使えるわけではないけれど、口達者で悪い人ではないから、今のポジションに就けたんだなと、物語の背景が感じられる。
年齢を感じさせない軽やかな歌とダンスが本当に素晴らしい。

2024/01/02 マチネ

ひばり

四季がストレートプレイを上演するのは久しぶりな気がする。
ジャン・アヌイの戯曲で、私は今回が初見。

作品としては、外部からスタッフを呼んで、要所要所を刷新した方が面白くなりそうな気がした。
今の四季はレジデント・ディレクターがいるだけで、実質的に演出家が不在の状況が続いている。海外作品は、ブロードウェイなどからクリエイティブスタッフをその都度呼んで作品をブラッシュアップしているが、浅利さんが演出されていた作品は後継の演出家が不在のままだ。

浅利さんがご存命のときは、ベースラインの演出は基本的に変更しないものの、細かい部分は都度修正されていた印象がある。
今回のひばりに関しても、浅利さんがいたらマイナーチェンジをしていたかな、なんて考えた。
浅利演出を継承するのが四季のミッションだと思うので、難しいところだろうが、今後も長く上演するためには変化していくことも必要な気がする。

物語としては、これまでもジャンヌ・ダルクを題材にした作品は観たことがあるけれど、やはりジャンヌ・ダルクは特異な人物だなと思った。
実在した人物だから成立するものの、「田舎の農夫の娘が神の声を聞き、急に軍隊を指揮する」なんて、全くのフィクションなら、真実味がなさ過ぎて成立しないくらい並外れたエピソードだ。
そのため、主人公ジャンヌの言動が何とも理解しづらく、個人的にはなかなか気持ちの拠り所がない物語だなと感じた。(戯曲の問題というより、私個人がジャンヌ・ダルクという人物をうまく捉えきれていないのだと思う。)

キャストに関しても少々。

ジャンヌ役の五所 真理子さん。
野村玲子さんとのWキャストの予定だったが、開幕前に野村さんが降板するという発表があり、シングルキャストに。
観客からは想像もできないほどのプレッシャーだったのではないだろうか。
四季作品らしく、純粋で高潔なヒロインに仕上がっていたと思う。
所々の台詞回しに野村さんのエッセンスも感じられた気がする。

宗教裁判所大審問官の味方 隆司さんやシャルル七世の田邊 真也さんは、今回の舞台の屋台骨と言えるような存在。四季の精神が息づいたお芝居だなと思う。

ボードリクール役の勅使瓦 武志さんは流石の上手さ。
一幕では、勅使瓦さんが話し始めたあたりから、グッと物語が立ち上がったような印象を受けた。二幕の幕切れの台詞はかなり成立させるのが難しい気がするが、説得量があり、ご本人の手腕を感じた。

2024/01/13 ソワレ

クレイジー・フォー・ユー

最後に観たのは2015年の全国公演だったので、約10年振りの観劇。

ボーイ・ミーツ・ガールの物語は、古き良きコメディ・ミュージカルという感じで、ミュージカルの楽しさを存分に感じられる。
シンプルな物語ゆえに、作品としての強度が高く、90年代に作られたミュージカルででありながら、古びた印象を受けない。
ただ、現代では笑いにならないようなギャグが一部あるので、そのあたりはアップデートしたほうがいいかなと思った。(パッツィの「胸!」のくだりとか。)

今回は四季の常設劇場での公演ではなく、全国ツアーの公演を観劇した。
全国公演では各都道府県の多目的ホールが会場となるので、演劇に特化した劇場と比べて、どうしても芝居の密度が下がる印象を受けた。
加えて、物語の前半では、役者の台詞よりBGMがよく聞こえる場面もあり、毎日会場が変わるので、音響の調整が難しそうだなと思った。

キャストでは、何と言ってもボビー・チャイルド役の斎藤 洋一郎さんが魅了的。
全編を通して、とにかく若くてフレッシュなボビーだった。ダンスがどこまでも軽やかで、一幕なんてほとんど出ずっぱりなのに、全く疲れを感じさせない余裕っぷり。
何かとご縁があって、斎藤さんはこれまでも多くの役柄で観てきたが、今回のボビーが一番のハマり役ではないかと思った。

芝居面では、ランク・ホーキンス役の渡久山 慶さんが特に印象的だった。
歴代のランクを演じた役者さんと比べると、随分と若く、他のデッドロックのメンズと同世代に見えるほどだった。
キャラクターとしてはあまり嫌味な感じがなく、どちらかというと「他の人と視点が違うので、コミュニティ内で話が合わないんだろうなぁ」という印象を受けた。

パトリシア・フォーダー役の花田 菜美子さんの自覚なく高圧的な態度を取るイギリス人の役作りも面白かった。
(しかし、このフォーダー夫妻は、アメリカやイギリスで上演するとウケるキャラクターなんだろうけど、日本ではなかなか存在感が出しにくそう)

2024/01/31 ソワレ


四季の舞台を観ると、観劇を始めた頃の気持ちを思い出したりして、何だか懐かしい気持ちになった。
次に四季の作品を観るのは、新作ミュージカル「ゴースト&レディ」の予定。

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