見出し画像

こんな舞台を観てきた(2023年1~2月)

今年も早いものでもう二ヶ月が経過。
というわけで、1~2月の観劇記録。

*割と辛口な部分もあるので、読んでくださる方はご了承ください…!


これまでの記録はこちら。


ニューイヤー・ミュージカル・コンサート2023

毎年恒例のオーブのミューイヤーコンサート。
今年はかなり満足度が高かった。

芝居歌として成立しているナンバーが多かった気がする。
キャストの力もさることながら、演出もよかった。
ベン・フォスターのGethsemaneで”See how I die”のシャウト後の静寂と、磯川さんの照明の美しさ…。あそこは本編並みの感動があった。

アンコールがしっとりとした”You'll Never Walk Alone”で、ちょっと珍しい感じがしたけれど、いい歌詞だなと思った。
(しかし、「オクラホマ!」や「回転木馬」あたりのブロードウェイのクラシカルなミュージカルはいつか一度観てみたいと思うものの、なかなかタイミングがない…)

The Voices of the West End 2023

ウェストエンドを中心に活躍するミュージカル俳優によるコンサート。

もれなく全員上手い…!
自分の中の「歌がうますぎると、感動を通り越してなぜか笑ってしまう現象」が発動して、マスクの下で何度かニヤニヤしてしまった。

やっぱりミュージカルの楽曲は切り出して歌われるより、物語の流れで歌われてこそ最も輝くので、作品の中でこの歌唱を聴きたいなとしみじみと思った。

アンコールは、まさかのレミゼの”Epilogue”。スタンディングオベーションした客席で聴くのはちょっとシュールだった笑

木ノ下歌舞伎 桜姫東文章

主に演出面で評価が分かれそうな作品だなと思ったけれど、自分はすごく好きだった。
「次の木ノ下歌舞伎も、岡田さんの作品も観てみたい!」と思う程にはハマった。

自分にとっての歌舞伎の取っ付きにくさは、結構言葉にある気がしていて、今回のような現代語訳で上演されると、見やすいなと思った。

二幕で成河さんが、権助と清玄の二役を短時間で演じ分けているのを観て、ミュージカル「ジキル&ハイド」とかも似合いそうだなと思った。(ご本人の感じからして、いわゆるグランドミュージカルにもうあまり出演しなそうだけれど)

自分の中で結構衝撃を受けた演劇だったので、下記のページで詳しい感想も書いた。

笑の大学

映画版はかつて楽しく見た記憶があるけれど、こちらはあまりハマらず。

個人的には、後半のシリアスなパートが重要だと思っているのだけれども、そこに至るまでの前半のパートがくどいなと思ってしまった。(三谷作品はわりかしどれもスロースタートという印象はあるけれども。)

ラストシーンも、戦時中の暗い余韻を残して終わるというよりかは、希望が感じられるような明るい音楽で終わり、少し拍子抜けした。(映画版がどうだったかは、ちょっと思い出せない)

PARCO劇場のキャパなら、もう少し抑えた芝居でも伝わる気がした。

セットは、あえて舞台の幅を全て使うことなく、中央に少しこじんまりとした感じで作ることで、取調室の雰囲気がよく出ていたと思う。(壁のセットはないけれど、設定上は壁であるはずの場所から、役者が出入りするのはどうなのとは思った。)

色々書いたけれど、演出も観客も割と後半までオモシロの雰囲気が強かったけれど、この戯曲なら後半がもう少しシリアス寄りの雰囲気の方が好みだなと思った。

ジョン王

結構な問題作だった…。

今回の演出の特徴の一つ、「登場人物が突然歌う」。
出来の悪いミュージカルみたいな不自然な歌の入り方で、これは不要だなと思ってしまった…。
同じ方が演出した「ブラッド・ブラザーズ」はいいと思ったんだけどな…。
ミュージカルの演出を経て、なぜこういう雑な歌の処理をしてしまったのだろう。


「ブラッド・ブラザーズ」の感想はこちら

物語の最後に、武装した兵士が出てきて小栗旬に銃を向けるシーンも、無理やり現在と繋げているようで、不必要なのではと思ってしまった。
この兵士はやたらとスモークが焚かれた中から登場するものだから、照明も相まって、まるでSF映画の宇宙人の登場のように見えた。
このシーンは、おそらくウクライナの情勢とかを意識したものなんだろうけど、バックでは日本語の歌がガンガンに流れていて、そこの音楽のチョイスも謎だった。

ちなみにコクーンでの公演では、最初と最後に小栗旬が舞台奥の搬入口から出ハケをしたようだけれど、
私が観劇した埼玉公演(埼玉会館)では客席通路を使っていた。
(コクーンのように、舞台奥に搬入口がないのだろう)

あと公演が終盤に差し掛かっていることもあってか、よくないベクトルの過剰さが感じられた。
アドリブっぽい絡みや、床に作られた水たまり的なところの水を飲んで吐き出したり、やたら叫ぶ芝居をしたり…。
「木ノ下歌舞伎 桜姫東文章」で色々なものを削ぎ落とした芝居の良さを感じた後だったので、余計に気になったのかも。

物語としても、あまり上演されない戯曲だけあって、決して見易い作品ではなかったというのが正直なところ。
高橋 努さん演じるヒューバートの朴訥とした人柄には癒された。東北っぽい温かみのある訛りもキャラクターにマッチしていたと思う。
植本 純米さんは、女性役が板について流石だった。(女性の声で一曲歌い切っていて、とても驚いた)

バンズ・ヴィジット

ざっくり言うと、エジプトの警察音楽隊が、ひょんなことからイスラエルの田舎町で一日過ごす話。
あまり中東諸国の事情に明るくないので、自分自身の理解度には自信がないけれど、とても素敵な作品だった。

まず、堀尾さんの真っ赤なセットが、作品の世界観を端的に表現しているようで好きだった。
回り舞台がぐるぐるしても、どこまでも真っ赤なセットが続く感じが、どこにも出口のない田舎町とそこに留まる人々を表しているのかなと思ったり。

作品のテーマの一つは「許し」で、
サミー(渡辺大輔)と言い争ったディナ(濱田めぐみ)に対して、トゥフィーク(風間杜夫)が「彼は過ちを犯した。でも、あなたは彼を許さなければならない」(ニュアンス)と言ったシーンが重要なのではと考えた。

濱田さん演じるディナは、おそらく地元ではちょっとイタい感じの女性で、ミュージカルのヒロイン?としては少し珍しい役柄だという印象を受けた。

こういった作品がトニー賞の作品賞を取るのが、ブロードウェイの面白いところでありいいところだなと思う。

博士の愛した数式

小川洋子さんの小説の舞台化。
原作は読んだことがないけれど、映画は昔見たなというようなおぼろげな記憶。

床に砂を敷き詰めたセットが素敵だった。
楽日だったので、カーテンコールで串田さんが「演劇は、この砂のように終われば消えて何も残らないもの」(ニュアンス)というような挨拶をされていた。

正直、劇的なことが起こる物語ではないので、演劇としては起伏に欠ける部分もあるけれど、
ギターの生演奏があったり、登場人物が意表を突くようなところから出てきたり、重要な役割を果たすグローブが砂の中に埋まっていたりと、随所に工夫が散りばめられていたのが、良かった。
あと、80分で終わるという潔さも良かった。




この記事が参加している募集

舞台感想

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?