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こんな映像を観てきた(ナショナル・シアター・ライブ 2023年7-9月)

現在上映中の「ベスト・オブ・エネミーズ」も気になるけれど、観に行くタイミングがなさそうなので、二作品の感想を一旦アップしてみる。


上半期の記録はこちら


オセロー

何となくあらすじは知っていたけれど、ちゃんと観るのは今回が初めて。

シンプルな物語ゆえに、悲劇性が際立っているという印象だった。

今回のプロダクションでは、特定の時代を連想されないようなセット・衣装になっており、これが物語の普遍性を伝えることに一役買っていたと思う。
照明のスイッチングで、登場人物の独白がより一層魅力的に見えた。

登場人物では、オセローの妻デズデモーナが、オセローに比べて随分と精神的に大人に見えた。
今回の演出には、「男社会の中で振り回される女性」のようなテーマがあるのかなと思った。

一番心に残ったのも、物語の終盤でデズデモーナとエミリアが二人で会話をするシーン。このシーンがとにかく素晴らしかった。芝居とは思えない二人のナチュラルな佇まいが印象的だった。
このシーンの台詞は、フェミニズム的視点が取り入れられているけれど、これを男性のシェイクスピアが数百年前に書いているのは本当に凄いとしか言いようがない。
その後のシーンが蛇足にさえ思えてしまうほど、この場面に心を打たれた。

幕間のクリエイター陣のインタビューも大変興味深く、世界の演劇のトップランナーはこんなことを考えているんだなと、感慨深くなった。

上映終了後には、良質なお芝居を見た時と同じ深い余韻が残った。


フリーバッグ


シネ・リーブル池袋のアンコール夏祭りで鑑賞。

Amazonプライムでは、テレビドラマ版が配信されているらしい。
舞台版は一人芝居で、戯曲を書いたフィービー・ウォーラー=ブリッジさん自ら演じている。彼女が舞台に登場しただけで、スクリーン上の観客(ロンドンで舞台を観ている方たち)が大歓声を上げていたことから、彼女の人気ぶりが伺えた。

このトレイラーからもわかる通り、舞台上には椅子一つしかなく、大掛かりなセットも小道具も登場しない。
さながら落語のように、身振り手振りを交えながら、約90分ずっと喋りっぱなしである。

概略をそれらしく書いたものの、私はどうにも落語や朗読劇など、あまり動きがない舞台は眠たくなってしまう傾向があり、この作品も所々ウトウトしてしまった…。(どうにかしたいなとは思うのだけれど…)

物語の大部分は、シングル女性の明け透けなトークといった具合で、皮肉やジョーク、下ネタが大半を占めていた。
内容が内容なので、日本のプロダクションが上演したら、客席が微妙な空気になりそう。

とはいえ、ラストに近づくにつれ、彼女の孤独や寂しさに焦点が当てられ、割とシリアスな空気になっていた。(スクリーン上の観客からも、嘆息というか声にならない声が上がっていた。)

主人公とあまり共通項がないせいか、全体的に少し遠巻きに物語を見てしまった気がする。

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