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真夏の九州うつわ旅・4日目(その1) ~大人気、福泉窯に潜入!~


夏休みに九州北部をめぐった「九州うつわ旅」の記録をしています。

3日目は心のふるさと・佐賀県の有田町に入り、定宿のILHAイルハさんに宿泊しました。



4日目は、あらためて有田焼を学ぶ1日となりました。




4日目:8月11日 晴れ!

この旅行、4日目にしてはじめて朝から晴れた。とても暑いけれど、気持ちがよい。


午前中は、ともに旅する親友チャルと別行動を。
いくら趣味があうからって、行きたい場所の優先順位まで いつもぴったり一緒とは限らない。限られた時間の中でお互いの望みを叶えるために、ときには別行動をとることもあるのだ。(ただしそれは、有田に限って。)

じゃあね、お互いたのしもうねって手を振り、私が向かったのは、「佐賀県立 九州陶磁文化館」。


昨年リニューアルしてからは行ったことがなかったし、具体的に確かめたいと思っていたことがあったから、それで行くことに。九州のやきもの、とくに有田焼の歴史を学ぶには 最適の場所だ。
確かめたかった(知りたかった)ことについては、長くなるから控える。
常設展では写真もたくさん撮ったのだけれど、たくさん過ぎて選べないからそれも記録はやめておこう…。


ロビーにある「有田焼からくりオルゴール時計」


少々駆け足だったけれど、目的は達成したし、また来ようと思えば機会はつくれる。そう思って、お昼過ぎには文化館をあとにした。
館内のカフェでケーキを頂いてからね。


この景色を眺めながらケーキを。
左のお皿:柿右衛門
右のカップ:古伊万里


空を見上げて文化館をあとにした。


そのあとは、お散歩がてら、有田駅を経由して「ギャラリー有田」でまたコーヒーを。 暑いから のどが渇いちゃう。


有田駅ちかく。
有田駅


「ギャラリー有田」
2,500客ものコーヒーカップが並ぶ。
カップに囲まれて、私はアイスコーヒーを。




そして午後、チャルと合流。
2人で向かったのは、有田焼でも大人気の「福泉窯」さん。


なんとこの日は、宿泊先のILHAさんのお取り計らいにより、福泉窯さんの作業場見学をさせて頂けることになっていたのだ。うれしい!


ILHAさんでの朝食。パンの乗った丸皿は福泉窯さんのもの。
この角皿も。


こちらの蛸唐草文様の角皿は、私も持っているのだけれど、こうしてパンを乗せても、お肉でもお魚でもなんでもイケル。ちょっと深みがあるので、ソースがかかっていたって大丈夫。
福泉窯さんのうつわは、どれも使いやすくて出番が多いように思う。形といい文様といい、丈夫さといい、普段の食卓でオシャレに活躍してくれるのが福泉窯さんのうつわだ。


さて、作業場見学を。

「福泉窯」さんに到着


まずは、ショールームでコーヒーをご馳走になりながら、概要を伺った。
ご対応くださったのは、福泉窯のお嬢さま。瞳がクリクリっとして、とってもキュートなお方だ。
「今日は窯に火が入っていますから、暑いですよ」とのお言葉に、「大丈夫です!問題ありません!」と、心から力強くこたえていた私。異常なほど暑がりのくせに。
それほど、たのしみだったのだ。


ショールーム
こちらの蛸唐草のカップも、持ちやすくて すき。


そしていよいよ中にご案内いただく。
福泉窯さんは、有田らしく「分業」だ。それぞれの工程で、専門のスペシャリストが役割を担われる。


素焼きまでの場面は拝見せず、その次の工程から見学スタート!

①成形

轆轤ろくろや鋳込み成形などで形をつくります。福泉窯さんは鋳込み成形が主かもしれません。

②素焼き

乾燥させたあと、約900度(福泉窯さんでは990度)で焼き上げます。強度と吸水性を高めるのだそう。


素焼きを終えたうつわは、こちらで細かな粉を払い

人の目で割れなどがないか、一つひとつひとつチェック。何かあれば、はじいていく。

空気を吹きかけながら
筆ではらいながらチェック。


素焼きを終えたうつわたち。


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③染付

染付とは、酸化コバルトを主成分とした「|呉須《ごす》」とよばれる顔料で文様を描くもの。呉須は、高温で焼くと藍色に発色します。

染付には、「線描せんがき」と「」とよばれる工程があり、一般的には、線描は輪郭を、みは塗り絵のようにその中を塗っていく作業をさす。
福泉窯さんでは、「み」で絵そのものを描かれているケースがあるようだ。

まず、同じ文様を何枚も描くために、紙に墨で絵を描き写し、それを素焼きのうつわにこすりつけて文様を転写されている。
その下絵にそって、「線描」。
線描の筆は細いものを中心に、バリエーションたくさん。


「濃み」は、太い筆で。
呉須を溶き
沈殿しないように、磁力で回転させる。
福泉窯さんでは、比較的大きな蛸唐草は はじめから「濃み」で描かれるという。
こちらのご婦人は、お嬢さまがご幼少の頃からずっと、絵付をされているのだそう。
お嬢さまご案内のもと、私たちが見学させて頂いているのに気付き、席に戻って呉須を溶くところからご披露くださった。


私が使っている蛸唐草のお皿も、こちらのご婦人が描かれたものかもしれない。
たいせつにしよう。


呉須での絵付けを終えたうつわたち。



呉須(染付)ではないけれど。金色っぽいラインを専門に描かれる方も。

このライン


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施釉せゆう

釉薬をかけます。磁器の表面にガラス質の光沢を与えるものです。

バケツの中に入った釉薬に一つひとつ、手作業で。
場合により道具を使って。
余分な釉薬は落とし、
一つひとつ息を吹きかけて、はらわれてゆく。


釉薬のかかったうつわ。
「瑠璃釉」をかけると、全体がうつくしい藍色に。


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⑤本焼(本焼成)

約1,300度(福泉窯さんでは1,320度)の高温で焼き上げます。
染付のうつわならば、これで完成。


この窯の中で、現在まさに、うつわが焼かれている。昨夜、火入れをしたそうだ。
窯入れしてから、翌々日の朝に窯出しをするとのことだけれど、きっと毎回、窯出しの瞬間はドキドキされるのだろうなぁ。どんな窯元でも、すべてが成功というわけにはいかないのでしょうから。

ちなみに福泉窯さんでは、焼成温度がちょっと高めだ。高温で焼く方が焼きしまって丈夫なうつわができる。これが “福泉窯のうつわは丈夫だ“ と言われる所以だ。
けれど高温の方が良いからといって、温度が高すぎれば うつわは割れてしまうから、きっと難しいはず。同じ有田でも、素地の性質やデザインなどの関係で、きっと窯によって焼成温度は調整されているのでしょう。


焼くと、1割~1割5分ほど縮みます。呉須の色は藍色に発色。


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上絵付うわえつけ

赤や緑、青などの色絵具で文様を描きます。上絵付にも「線描」と「濃み」があり。

絵付けをされているお姿は撮りそびれちゃった…。


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⑦上絵付焼成(上絵焼成)

上絵付の済んだ磁器を約800度の低温で焼き上げます。
これですべてが完成します。

上絵付焼成


これは他で知ったことなのだけれど、上絵付の絵の具は、高温で焼くと溶けてしまうそう。だから、染付の段階で まず高温で焼きしめてから、上絵付を施し、再度低温で焼くようだ。
同じうつわでも、染付よりも色絵(赤絵)の方が高価なことが多いのは、このように作業工程がよけいにかかるからでしょう。


完成品!


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はあ。貴重な経験だった。

こうして作業工程を拝見すると、完成品がなお、いとおしくなるなあ。
見学を終えてから、またすこしショールームを拝見した。すると見学前よりも、さらに価値が高く見える。



もしかして私、買っちゃうの?と思いきや、福泉窯さんでは、直販は一切されていない(※)。だから、こうして作業場やショールームを拝見しても、この場では個人客は何も購入できないのだ。
「問屋さんあっての私たちですから」。そんな姿勢もすてきだ。



ご親切にご対応くださった福泉窯のみなさまと、機会をつくってくださったILHAさんに、たくさんの感謝を抱えて福泉窯さんをあとにした。





あっ、写っちゃった! しつれい。





4日目:8月11日(金)  晴れ
有田の定宿「ILHA」さん → 「九州陶磁資料館」 → 「有田ギャラリー」 → ちょっと寄り道してから「福泉窯」で貴重な作業場見学を。


(※) 福泉窯さんでは、有田陶器市・有田陶磁器まつりの時のみ、B 級品に限り直販されているそうです。


このあとも、大すきな窯元に向かいます。



最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。





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