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真夏の九州うつわ旅・2日目(その2) ~日本情緒ただよう老舗旅館へ~

8月8日~12日の日程で九州北部をめぐった「九州うつわ旅」の記録をしています。

台風6号の迫りくる中、2日目も唐津に来ています。朝起きてから旅館に向かうまでの様子はこちら。


今回は、宿泊した老舗旅館の記録です。




8月9日 くもり→霧雨→徐々に風雨 → 夜中は暴風雨に

いよいよ台風が近づいている。予報では今夜夜半に最も接近するという。ほんとうならもう1軒くらい窯元に伺いたかったけれど、無理。この日の朝の作戦会議で無理ない行程を確認した。

唐津駅近辺をたのしんだ後は、早めに旅館にチェックイン。
予約時点ではお天気の予想なんてしていなかったけれど、このような日にゆったりとくつろげる旅館を予約していてよかった。

伺ったのは、明治時代創業の和風旅館「洋々閣」さん。
前々から一度は泊まってみたいと思っていた旅館だった。




玄関を入った途端にため息がもれる。


「あちらの壺は…?」 まず真正面の大きな壺に感嘆して伺うと
「隆太窯さんのものです」と。さすが…。


洋々閣は、大正元年に建てられた木造建築がうつくしい旅館だ。築100年を越える建物に歴史の重みを感じる。
そして館内を歩いてみると、いくつかの建物がなめらかに繋ぎあわされており、ちょっと迷路のよう。だからこそ、廊下を曲がるたびにうつろう中庭の景色をたのしむことができる。

ぴかぴかに磨かれた床。ところどころに飾られる調度品。随所に心配りが見受けられ、クラシカルな日本旅館の雰囲気を存分に味わう。 



館内にはいつでも自由に頂けるコーヒーコーナーがあり、もちろんそのコーヒーは、ロビーや宿泊室など好きな場所に持ち込むことができる。
チェックインの前に、駅近のCaféに入らなかったのは正解。ロビー最高。


コーヒーコーナー
ロビー



そしてうれしいのは、館内にはうつわギャラリーが3つもあること!
うち2つが前日に訪れた隆太窯さん。

もう1つは、「monohanako」。隆太窯の中里隆さまのお嬢様・中里花子さまのギャラリーだ。隆太窯とはまた違った風合いの作品をつくられる花子さまも、大人気の作家さん。ほんとうは今回の旅でこちらの窯元にもお邪魔したかったのだけれど、それは叶わなかったから、ここで堪能できるのはとてもうれしい。
隆太窯とあわせ、これらがいつでも自由にたのしめるなんて、至福の2日間だ。


隆太窯
monohanako





そして、宿泊室はなんと…


三方をぐるりと縁側で囲まれた広いお部屋! 樹齢200年といわれる老松が一面に広がる庭園に包まれる。
今夜はここに眠るのね。うそみたい。ともに旅する親友チャルと大いに はしゃぐ。

うそじゃなくて、これはきっとお心遣い。あきらかに、予約したお部屋からグレードアップされている。きっと台風でキャンセルされた方がいらしたのでしょう。
それを何もおっしゃらないところに、老舗日本旅館の奥ゆかしさや品格みたいなものを感じちゃう。

腰をおろすと、仲居さんが館内のご説明とともに、いろいろなお話をくださった。
いまお庭で鳴いている鳥は「カササギ」という佐賀県の県鳥であり、天然記念物にも指定されていること、それから佐用姫さよひめ伝説のことなんかも教えてくださった。
台風への不安などかき消してくださるかのように、おだやかに、たのしく。


夕食まで、ロビーでコーヒーを頂いたり、宿泊室から庭園を眺めたり、麦飯石ばくはんせきをとおしたお湯で温泉効果があるという大浴場でくつろいだりと、ゆったりと、贅沢なひとときを過ごした。
この時間はきっと、私たちに与えられたプレゼントにちがいない。もしも台風が無ければ、こんなにすてきな旅館に予約しながらも、私たちのチェックインはきっと夜になっていたと思うから。




夕食も夢見心地。だって、うつわは隆太窯だし、お料理はおいしいし。
とろーんとしちゃって、写真が少な目。(お料理はもっとたくさんありました。)


飲み物は迷わずスパークリングワインを。


夕食を終えてまもなく、お部屋にお布団を敷いて頂いた。
その後、先ほどの仲居さんが、もしも停電になった時のためにと、大きな懐中電灯を1人1ずつ渡してくださった。
「枕元に置いてくださいね。もしも停電になったって、な~んにも心配なさることはありませんよ。朝になって、この縁側のカーテンを開けたら、サーっと光が入ってきますから。」と笑う。
ありがたかった。正直に告白すれば、ちょっぴりこわかった。それに、暑がりの私は、停電になったらクーラーが止まることがとても心配なのだけれど、その時はその時。
な~んにも心配することなんてないんだなって安心して、スパークリングワインの酔いにまかせてコテッと眠りにおちる。外はきっと雨風が強くなっているはずだけれど、不思議と音は何も聞こえない。まさかの防音?と思うほど。


夜の1時頃。激しい風雨の音で目が覚める。ゴーッ、ヒューッ。
来た。これが迷走を続けた6号だ。直撃ではないものの、きっと今が「最も近づいている」時なのだ。
明日の朝には遠ざかっていますように、と祈りながら、またすぐに眠りにおちる。スパークリングワイン、ありがとう。


3日目:8月10日 朝
目覚めると、風雨は残っているものの、台風は峠を越したのだと実感する。
雨に滴る老松の庭園をたのしむ心の余裕も生まれる。


だるまさん、みっけ。


でも逆に言うと、まだ風雨が残っているわけだから、やっぱり午前中くらいはあまり動かない方が安全でしょう。
今日も朝食で、チャルと作戦会議かな。


その朝食からは次回に。 



ー宿泊室の一角ー

どこにもピントが合っていない…。
この後ろにヒノキのお風呂あり。




2日目:8月9日(水)  くもり→霧雨→徐々に風雨→夜中に暴風雨。
福岡・天神でぶらぶら→ 佐賀県唐津市へ。
「時空窯」→「KARAE」、「一番館」→ 「洋々閣」で至福の時を過ごす


結局、激しい暴風雨は眠っている間に通り過ぎてゆきました。
翌朝、ほんの一瞬しかその音を聞かずにすんだことを仲居さんに告げると、「まあ、スパークリングワインがよく効きましたね」と笑われてしまいましたけれど…それはワインよりも仲居さんのお陰なのです。たぶん…。



最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。





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