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膨らむ音

朝起きて、諸々のことを済ます間にやかんでお湯を沸かすのが私の習慣だ。

が、今日はお湯が沸くまで、じっと待っていたい気分だった。

実家のやかんは大きめだから、考えごとをするのには丁度いい時間を与えてくれそうな予感がしたのかもしれない。

水を注いで火にかける。

スタバのカウンター席に用意されたものと同じくらいの高さの椅子に腰かけて、軽いストレッチをしながら青い炎と古びたやかんを見つめていた。

先日、デートに誘われた。かねてより、好意を抱いている男子に。以前なら、速攻で返信していたはずなのに、私はなぜだか、ちょっと焦らした。

自分の気持ちと会話した結果というより、なんだか、指が、勝手に動いた。

そんな感じだ。

家の中とはいえ、冬に向かう朝は冷え込んでいる。外の寒さのせいか、私の心に余裕がないのか、答えは定かではないが、

目の前のやかんの中の水と同じで、自分の気持ちが沸騰するまでに時間を要しているのは事実だった。

どうしてだろうな、好きなはずなのにな。

そんなことをぼんやり考えていると、やかんの中の水たちが次々に踊り始めた。ぷつぷつと音を立てて、元気よく踊っている。

考えを巡らせているうちに重くなった腰を上げ、いつの間にかどこかへ置いてきた恋心を思い出す。

沸かしたお湯が冷めないうちに、美味しいコーヒーを作らないと。

ではまた、シーユー。

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