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裏裏ひよこ日記。秘密の箱にはロマンスの欠片が詰まっている。

ヒースの丘でコドモみたいに外遊びをさんざんやって、オトナの話をして
俺達は帰ってきた。犬達も走り回れて満足しているようだった。車のバックミラー越しに後ろを見ると遊び疲れた犬達とひよこが一緒に寝ている。

日は落ちて星が瞬きだした。

舘に戻ると外の寒い空気から家の中の温かい空気になったからか、寒暖差アレルギー持ちのひよこは途端にへぐちっ!へっくしゅん!とくしゃみを連発しはじめた。クセ強めなくしゃみ。

マギーはひよこが風邪を引いたと勘違いして慌ててひよこを暖炉の前に連れて行った。多分それ余計くしゃみすんぞー。

あ、あ、マギーさん、大丈夫です。わたし寒暖差アレルギーなんです。点鼻薬いれたら大丈夫です。風邪じゃないです。

おくすりは持ってきていらっしゃいます?

はい!いつも持ち歩いているのでありま?…多分。

怪しげな回答をするひよこ。

持ってきてないのか?

多分ある…はず

見てみろ。

荷物荷物っとー。ひよこがトランクをごそごそしてる。絶対ない。あるわけがない。

あれ…?あれえ?
確かに準備してポーチに入れたのに…薬屋さんとか開いてたりは?

クリスマスの今時期開いてる薬屋とかねーよ。

うう〜どうしよう。

ひよこがテーブルに置きっぱなしで存在を忘れられていた常備薬が入っているかわいそうなモコモコくまちゃんポーチ。

全く!

優しくて親切で思いやりに溢れたオレは
そのポーチを自分のバックにいれた。

俺に感謝するんだな!

くまちゃんポーチをひよこの目の前でゆらゆら揺らす

あっっ!くまちゃん!!くまちゃーんっっ!!
会いたかったよう!くまちゃーんっっ!!

なんかいうことは?

さすがです!フレデリック大先生!素晴らしいです!!いつもかっこいいです!!毎日眼福です。イケメンバンザイ!!ありがとうございます!!

よろしい。

ひよこにモコモコくまちゃんポーチを渡すとごそごそしてアレルギー点鼻薬を急いでさした。


貸しイチな?

わかってる

トマスが笑いをこらえているのか肩が震えている。フッターのポールは下を向いて一点をみつめている。なんか小刻みに揺れている。

ゴホンと咳払いしてトマスが
ひよこ様を大層気遣われていらっしゃるようで何よりでございます。

違う。コイツは忘れ物のプロなんだ。

いやいや。恐れ入りました。


さあさ、ひよこ様もフレデリック様ももっと暖炉のそばに。からだが冷えてしまいます。
今日は楽しまれました?

ええ、ソリ遊びして人形とってたんです。
後シロップでキャンディ作れました!
冷たくて美味しくて。もうすごく面白くて楽しかった。ソリまた明日しよう?

なんで毎回横道それていく?
お前重心かけ方ずれてんじゃないのか?

マギーからタオルを受取り髪の毛を拭きながらひよこに話しかける

知らないよそうなるんだもん。
ひよこはマギーに髪を拭かれている。

怪我すんぞ。

じゃあ、フレッドもう一回教えて

貸し2になるぞ?

何したらいいの?

んー、考えとく

あとさ、明日はカメラ持って行こう?

こわすなよ?

わかったおかあさん。なくさない!壊さない!がんばる!!

ひよこは忘れ物のプロであり、迷子のプロであり、壊し屋の称号も持っている。

おかあさんではない。

じゃあママ?

むしろ夫だろ?

トマスはこらえきれずに吹き出した。

…本当に仲がよろしくて。羨ましい限りでございます

して坊っちゃん。夫とは?

あーいや…それはだな。…後で話す。


ああそうだ。熱い紅茶をもらえるだろうか?
少しからだが冷えてきた。

私としたことが。すぐに用意致しますので
キビキビした動作でトマス一同は居間から退出していった。


部屋に戻って着替えをしているとトマスがやってきた。

お茶の支度が整いました。

ああ、すぐ行く。

…して、坊っちゃん。

きた。アレだ。

夫とは?

トマスはほぼ親替わりのような存在で小さな頃からずっと一緒にいたためあらゆる事を知られている。

あー、その、なんだ。

おめでたい話なら何よりでございます

まあ、そうだな。そうなるようにしているところだ。

そうですか。ならばこちらもそのように取り計らい致します。 マギーにもそのように伝えますがよろしいですか?

ああ、そうしてくれ。 

ひよこ様は日の光のような方でございますね。

そうだな…そうかもしれないな。

あれくらい明るい方のほうが坊っちゃんにはよいのかもしれませんね。

かもな。

で、今日の晩餐ですが。

ああ。

シチューにパンだけだとやはりさみしいのでは?

たぶん夜にお腹が空いたってウロウロし始めるぞ。

軽食も用意しておきます。
ナイトティーをお出しする際にワゴンに乗せておきます。

助かる。

…ほんとうにひよこ様に会えて良かったですな。

まあ、うん。そうだな。だが、あれだ。舘にふさわしくないとかいう奴もいるかもしれない。

その点に関してはご安心を。

坊っちゃん。

なんだ?

御婚約されましたか?

そんなようなものかな。

では口だけの約束にならないように致しませんと。明後日にアルベルト様がいらっしゃるのですよね?

ああ。

明日は何かご予定はございますか?

いや、ひよこと遊ぶだけだ。

クククッとトマスが笑っている。

本当にひよこ様は坊っちゃんにぴったりなお方ですな。これは逃してはいけません。

ひよこ様のお部屋ですがね。
どうでしょう。明日までご一緒に過ごされては?

それはひよこに聞かないと。

マギーに協力してもらいましょう。


…わたしに用意されたお部屋の暖房が調子悪いらしくてしばらくフレッドと一緒の部屋で待っててくれって言われちゃったー。

と、ひよこがトランクをガラガラ言わせて部屋にやってきた。


そうなのか?

明後日にアルベルトがくるから急いで全部の部屋点検しなおすって。

ふうん。

フレッドの部屋は温かいからそっちにいなさいって、マギーさんが。

…へ、へえー

やりやがったな、あいつら。

ま、でもわたしは全然構わないし、お邪魔していいかな?

もちろん。て、どうせ夜広すぎて寝れないとかいってこっちに遊びにくるつもりだったんだろ?

あら、わかってる。

あ、ねぇねぇ何して遊ぶ?
クリスマスだからクリスマスっぽい映画みる?


それもいいな。

でもね、なんか変なの。
あっちから戻ってきてからやたら眠たいの。

なら寝たらいいだろ?

わたし寝る場所どうなるのかな?

ここで寝たらいいだろ?  

半分貸してくれる?

半分?貸すも何も寝相が悪すぎて占領するくせに何を言っているんだ

わたし可愛いからそんなことしない。

たとえ可愛くてもそんなことしてる。

可愛いは肯定してくれるのね?

…お前、夕方の話忘れたのか?

わすれてないよー

ひよこは脈絡なくトランクをごそごそし始めた。これは照れ隠しだってことをオレはちゃんとわかっている。

バレてるぞ?

やはり?

丸わかりだ。

そういや、前にロマンスのかけら見当たらないとかいってたよな?

ああ、あったねえ。

まだ見つからないのか?

てか自分も見当たらないって言ってたよ?

あるんだな。それが。

あるの?

ある。

どこ?

ここ。

机の引き出しから箱を取り出す。

これ。

なに?

開けてみたらいい。

箱を開けてひよこは??という顔をした。

小さな紙切れに書かれた落書きみたいな絵から
勉強始めた頃に練習がてらに書いたフランス語で書いたカードやメッセージ。
カメラを使い始めたばかりでピントが合わない写真や一緒に出かけた先の入場券や、切符、パンフレット、押し花の栞や縫い目がガタガタなハンカチとかいろいろ。

とってたの?

なんとなく。

意外とロマンチストよね。キミはさ。

意外とは余計だ。

ははは

ねえ、これはなんのときのやつ?

なんだったけなー?
裏に日付とか書いたりしてないか?

まじまじと箱の中身を凝視しているひよこを後ろからふわっとハグする。すぽっと自分のからだにおさまるこの感じがとても落ち着く

あー、落ち着く。

それはなにより。

ね、これはいつのやつ?

あー、多分それは































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