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窪塚洋介の演技に圧倒される 『沈黙-サイレンス-』

 Yahoo!ニュースのトップに窪塚洋介さんの記事が出ていました。


 窪塚さんといえば、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』の演技がすごかったな〜。
 主演はアンドリュー・ガーフィールドなのですが、彼のファンなのに、印象があまり残っていないぐらいに、窪塚さんがはまり役でした。

 この映画は、遠藤周作さんの『沈黙』が原作。江戸時代初期に、日本に来たカトリックの神父たちの物語です。神父をアンドリューとアダム・ドライヴァーとリーアム・ニーソン、江戸幕府の役人をイッセー尾形さん、日本人信者を窪塚さんや塚本晋也さんなどが演じています。
 監督の演技指導、言葉の壁がどうなっているのかわかりませんが、イッセーさんや塚本監督の演技も素晴らしく、「日本人がハリウッドの映画に出るのは嬉しいけど、日本での演技の方がいいような」とつい思ってしまうのが、この映画には全くありませんでした。

 スコセッシ監督は、この映画をなかなか撮らないので、提訴されているんですよね。ディカプリオと組んで大作映画を撮るのが楽しくて、この映画を撮る暇がなかったのかな。訴えられて、やっと撮る気になるなんて、良い映画になるのかなーと、少しハラハラしていました。
 それに、パッションでぐいぐい押すタイプの監督だから、それなりにストーリー性がある作品はどうなんだろうとも思っていました。

 もちろん、カトリック教徒の信仰についての映画だから、そこはスコセッシの得意分野なんですけどね。
 暴力とカトリシズムを描く監督と言ってもいいのではないでしょうか。
 スコセッシ監督がアカデミー監督賞を受賞した『ディパーデッド』は、香港映画の『インファナル・アフェア』のリメイクなのですが、東洋的な世界観で描かれる『インファナル』が、イエスの苦悩を描く映画に変換されていました(この映画も、複雑なストーリーをうまくさばくことができなくて、ちょっとモタモタしていましたが、カトリシズムを描いた映画としては、傑作でした。『インファナル』の方は、文句なしの傑作)。

 話を戻すと、色々不安要素はあったものの、実際に観てみると、スコセッシ監督が遠藤周作さんの小説を深く理解なさっているのがわかりました。
 窪塚さんが演じたキチジローは、作品のカナメともなるキーパーソンなので、その役に当時、出演作がなかった(もちろん、事務所のコネもない)窪塚さんが選ばれるなんて、ハリウッドのオーディションというのは、演技力をガチで見ているのだなと実感しました。

 地上で生きることより、神の国を選んで殉教していく人びと。神父たちの選択。そして、私たち自身でもあるかもしれないキチジロー。
 信仰とは? 救済とは? そんなことを考えさせられる映画でした。

 この映画に感動して、長崎県の潜伏キリシタンの里である外海の出津集落を訪ねてしまいました(映画は、台湾で撮っています)。
 出津には、遠藤周作さんの文学館もあります(カバー写真は記念館から見た景色です)。
 今、文学館のHPを見て知ったのですが、今年が遠藤さんの生誕百年なんですね。司馬遼太郎さん、池波正太郎さんと同い年なのか。

記念館の近くにある沈黙の碑「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです 遠藤周作」とあります。
世界遺産の出津教会堂。


 




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