ライトノベル自分的打線(先発ローテとリリーフ陣を添えて)(メジャーどころばっか)

1番センター キノの旅-the Beautiful World

時雨沢恵一作 既刊22巻

  言わずと知れた00年代ライトノベルの代表格、学校の図書館にあるライトノベルの筆頭だろう。
同世代(20代周辺)がラノベに踏み込んだ最大の要因と確信を持って言える数少ないラノベ。
 キノという少女がモトラド(バイク)のエルメスと旅に出て、出先で色々な国を回って、住人と関わったり関わらなかったりする…、基本的にはそれだけだが、何かを考えさせる深みが必ずある。
 22巻も出ているが単行本刊行予定かつどこから読んでも問題がない設計で、今から入ろうとしても無理がない。短編中心で読みやすいのでラノベ入門に是非
https://kinonotabi.com/

2番ショート 学園キノ

時雨沢恵一作 既刊6巻

 キノの旅の原作者自ら繰り出した公式同人誌。セルフパロディからパロディからメタまで何でもあり、SAOAGGOが出てくるまでは時雨沢氏のガンアクションが割と安定して読める場でもあった。
あとがきが本編

3番キャッチャー 生徒会の一存(生徒会シリーズ)

葵せきな作 本編全10巻 番外編9巻 新編 2巻

 富士見ファンタジア文庫のこち亀、本編が13年に、番外編が18年に完全に完結したが定期的に描き下ろしが来ていた関係で完結した感がない不思議なシリーズ。
 「4コマラノベ」とも言える独特の作風を持ち、吉本新喜劇並の安定感を誇る生徒会コメディ。生徒会面子のキャラバランスは神の領域に達しており、生徒会外も含めて無駄なキャラがいないという、ほんとにコメディラノベかどうか疑いたくなるレベルのスキのなさ。
 コメディ主体だが本編はサザエさん時空ではないので順番通り読んだほうが良いかも。(番外編はお好きに)

4番サード 終わりのクロニクル

川上稔作 全14巻

 最終巻の厚さでネタにされがちな元電撃文庫最厚記録保持者。
 厚さが独り歩きしない熱さを持つ。川上作品にありがちな難解な作品設定・世界観も物語内で自然に解説が為されるので初心者向け。
 第二次世界大戦の裏にあるもう一つの戦争を巡る、10個の世界との「少年が本気になる為の」交渉。(武力込み)
 頼むから5下までたどり着いてほしい(願望)

5番ファースト 織田信奈の野望

春日みかげ作 本編全22巻 外伝6巻 短編3巻

 歴史ライトノベルの大家、春日みかげのデビュー作にして金字塔。
 安易なタイムリープ物とたかをくくると、戦国時代の史実から逸脱する11巻周辺以降で足元をすくわれる事になる。
 ライトノベル・歴史小説・架空戦記のいいとこ取りをし、どの要素にも破綻をきたさないバランス感覚は流石春日みかげである。
 ハーレム物の要素が強いので苦手な人は苦手かもしれないが、今年の麒麟が来るのもっくん道山に惹かれた人は是非中盤まででもいいので手にとって欲しい。
https://fantasiabunko.jp/sp/201507odanobuna/

6番セカンド 境界線上のホライゾン

川上稔作 本編29巻 番外編3巻 新章既刊1巻

 「電撃最古参」が披露した「学園戦国ファンタジー」。前述した終わりのクロニクルの遥か未来の話になるが、特に予習は要らない。
 歴史を「再現」してやり直そうとする世界で繰り広げられる、笑い有り、涙有り、スピーディーな戦闘有り、艦隊戦有り、巨乳有りの巨編。
 近世ヨーロッパ&日本の戦国時代の知識があると更に楽しめるかもしれないが、無くてもきちんと解説してくれる親切設計。
 巻毎の厚さに圧倒されるかもしれないが1巻初頭についている世界観設定だけでも読んでほしい。
https://dengekibunko.jp/special/horizon/

7番ライト アクセル・ワールド

川原礫作 既刊24巻

 SAOの作者が送るもう一つのシリーズ。アニメ化もした。正直、作者がSAOと同一でないか作者が分裂したら電撃の看板を背負ったであろう作品。
 近未来のVR格闘ゲームを題材とした作品だが、近年のライトノベルどころかライトノベル全体として珍しく、内容自体は友情・努力・勝利&スポ根と言った様相であり、ジャンプ漫画にも劣らない王道さを誇る。
 しかし、ライトノベル的なボーイ・ミーツ・ガール要素もあり、ヒロインのミステリアスさは相当に強い。
 次に出る25巻で1つの区切りがつくようだが、9巻まででも大きな区切りがあり、文体も手伝ってスラスラ読めるので、9巻までたどり着いてほしい。
https://dengekibunko.jp/title/accele_world/


8番レフト シュヴァルツェスマーケン

内田弘樹作 吉宗綱紀原作 本編全7巻 短編集2巻 外伝2巻

 PC用恋愛シュミレーションソフト(大いに語弊あり)マブラヴ オルタネイティヴのスピンオフに当たる作品。なお、特にマブラヴオルタネイティヴ側を履修する必要性はない模様。
 地球外起源種「BETA」の侵攻を受ける冷戦継続下と言う、「人類が外敵に対して団結しきれない」世界線における東ドイツ戦線の物語であり、とある理由で航空機の代わりにロボット技術が発展し、人類はそれを用いてBETAに対抗している。
 ラノベ界では数少ないロボット物であり、政治劇も楽しめる。
 戦時下東ドイツとか言う圧倒的統制社会かつ史実太平洋戦争日本並みの末期戦を繰り広げる関係上、開幕からフルスロットルで鬱展開が頻発するが、最終巻の展開の美しさはラノベ界でも随一。
 鬱展開に耐性のある方は是非。
 しかし外伝の続刊はいつになるのやら…

9番指名打者 C3-シーキューブ-

水瀬葉月作 全17巻

 プリズマ☆イリヤのアニメ脚本やFGOのシナリオ(確証はないがおそらく1.5部アガルタは彼の担当)に携わるなどfate方面での仕事がある水瀬葉月が過去に書いた、電撃文庫の極北。
 性癖の坩堝であり、あまり直接的な描写はないが、よくアニメ化まで漕ぎ着けたなと感心する作品である。
 呪いが強すぎて人化した拷問器具がメインヒロインという時点でどうかしている。(褒め言葉)
 17巻もあれば確実にあなたの性癖にヒットするキャラが現れるはずなので是非とも読んでほしいが、相当に人を選ぶことも保証する。

先発投手(1番手) とある魔術の禁書目録

鎌池和馬作 既刊52巻(無印22巻&SS2巻 新約23巻 創約2巻) 短編集3巻

 電撃文庫文庫2000万部突破三銃士の一角。魔術と超能力が現実に存在する世界で、その異能を消せる右腕を持つ少年の物語。
 現実の世界を魔術と科学(超能力等の現実に存在しない先端科学)と一般サイドに分け、有名なキャッチコピー通りそれらを「交差」させ物語を進める方式は、これだけ売れた作品にもかかわらず、その独創性からフォロワー的作品を生み出させていない。
 巻数が嵩んでいるが、初期(無印1巻から10巻)は単巻完結が多い…と言うか巻毎の結びつきが弱いため非常に読みやすい。初期は長く続いているシリーズの重みを全く感じさせない読みやすさなので入口は開いている。(強調)
 新約18巻から展開的に再度黄金期を迎えた化物シリーズなので巻数は多いが是非とも追いついてほしい(願望)
https://dengekibunko.jp/special/index/

先発投手(2番手) ゲーマーズ!

葵せきな作 本編全12巻 短編集3巻

 生徒会の一存の葵せきなが送る、ゲーマーたちの「青春錯綜系ラブコメ」(公式)
 この作品の「青春錯綜」ぶりは、作者ですら展開を読めていない(あとがきで認めた)節があり、極めて暴走気味かつラブコメにあるまじき超展開の連続だが、この作者だからこそ許される。(制御できているとは言っていない)
 死ぬほど甘ったるく、中々に拗れたラブコメだが、葵せきなを信じろ。読了後は自然と笑みがこぼれ、少し優しい気持ちになれる一品
 ちなみにシリアス面はちゃんと締めているので、抑揚にも富んでいる。
https://fantasiabunko.jp/sp/201503gamers/

先発投手(3番手) ソードアート・オンライン

川原礫作 既刊24巻

 電撃文庫2000万部三銃士の一角(正直説明いる?)。作者の時系列的にはアクセル・ワールドより前に執筆している作品であり、正直1〜6巻の展開は荒削りさが残り、そのあたりがアンチの攻撃対象になっている節がある。
 しかし、初期の頃からVRMMOと言う題材を上手く活用しており、9巻以降の「アリシゼーション編」は見事な完成度を誇る。
 少々穿った見方かもしれないが作者の成長を非常に感じられる作品であり、アリシゼーション編とアクセル・ワールドで引き出された作者のポテンシャルから考えて、売れるべくして売れた作品でもある。
 ちなみに、初期の展開が荒削りなだけで文体は一貫して読みやすい。読んで一緒にライトノベルミーハーになろう、多分楽しいから。
https://dengekibunko.jp/title/sao/

先発投手(4番手) ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン

時雨沢恵一作 川原礫原作 既刊10巻

 前述のソードアート・オンラインにおける5・6巻のガンゲイル・オンラインを舞台としたスピンオフ。例のごとく原作を読んでいる必要性は皆無。
 ガンマニアで知られ、著作であるキノの旅でも度々ガンアクションの描写に定評がある時雨沢恵一に、人の死と言うガンアクションに当然ついて回る制約を取っ払える舞台を用意した結果、彼はノリノリでエゲツないガンアクションを描いた。
 ガンアクション外、現実における描写においても時雨沢節が実際には光っているが、あまりにもガンアクションがイキイキしているので最早目立たない。美少女が銃を振り回すのに惹かれる人は是非。

先発投手(5番手) 機甲都市伯林

川上稔作 全6巻

 境界線上のホライゾン、終わりのクロニクルの川上稔のデビュー作「パンツァーポリス1935」より連なる作品群。1935のみ単巻で完結している。
 異世界のドイツを舞台にした冒険活劇であり、滅びの運命に抗うと言う「都市世界」の原点。
 川上作品の全てが凝縮された作品であり、通常の文庫のサイズだが、様々な意味であつさを感じる。メカデザイン、アクション、コメディーどれをとっても既に一級品であり、00年代初頭の作品とは思えない独創性と先端性を感じる。
 川上作品を何かしら読んだあとにおすすめ。

先発投手(6番手) ブラック・ブレット

神崎紫電作 既刊7巻

 人間を怪物化させる寄生生物「ガストレア」の脅威から、その力を無効化する金属「バラニウム」で築いたエリアの内側に人類が追いやられた世界でおくる、男子高校生主人公と幼女ヒロインによるアクションもの。
 人類側の悲惨さと都市的な日常がある程度維持されていると言う絶妙なバランスもさることながら、アクション部分も力が入っており、主人公達の境遇にも適度に深く掘り下げながら、人類の命運がかかる戦いに挑んでいく様は、まさに王道バディ物である。
 悲しいことに作者の体調不良により、新刊が6年以上出ていない。作者の快復を願っている。
 読んで一緒に作者の快復を願おう!!

中継陣(詳細略)

マテリアル・ゴースト(葵せきな作)
デート・ア・バレット(東出祐一郎作 橘公司原作)
エアリアルシティー(川上稔作)
物語シリーズ(西尾維新作)

抑え ユリシーズ ジャンヌ・ダルクと錬金の騎士

春日みかげ作 本編全6巻 短編集1巻

 歴史ライトノベルの大家、春日みかげが送る、英仏百年戦争。
 歴史戦記+能力バトル+伝奇ファンタジーの「トリニティサガ」を自称しているが、歴史と伝奇ファンタジーの要素があまりにも強すぎて能力バトル部分は埋没している。
 前述の作者の別作品である「信奈」とは対照的に、本筋の歴史改変要素は存在せず、一部の人物の美少女化と、ファンタジー要素に改変部分が集約されている。
 濃密な歴史戦記は、史実通りの「悲劇」へと中盤で向かわせ、5・6巻の怒涛の展開は最早芸術品と言って差し支えない。
 全般的にダークファンタジーの雰囲気が強く鬱展開もあり、史実から外れないと言う制約を加えた結果、作者の寿命を犠牲にしてそうなレベルの怪作が生まれた。
 春日みかげの暗黒面、ここに。
http://dash.shueisha.co.jp/bookDetail/index/978-4-08-631011-6

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