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深読みを必要としない世界へ ブリジット・バルドーの魅力

 ついに!選んでしまった女優、ブリジット・バルドー。同じ仏映画でも、私が好きそうな(自分でいうのも変だが)“わかりにくく魅力的な、だからこそ意味を探ろうと何度も観てしまう”タイプの映画ではなく、その対岸に堂々と位置するフレンチアイコンの代表だ。くしゃくしゃ無造作風に盛り上げられたブロンドヘア、赤いけれど少女風のリップが塗られたぷりぷりの唇からは、可愛い不満が自由に飛び出し、素晴らしくまっすぐな脚は、バレエの気品を持ちつつも、ラテンダンスが一番似合う。ミニがまだ登場していない時代のふんわりスカートも、お尻まで全部見せた裸足もなぜか、“男の視線のためではなく、自らの自由のための脚”であることに私は今、好意的に注目する。

 映画史上センセーショナルな『素直な悪女』(1956年)、好きな監督J=R・ゴダールの『軽蔑』(1963年)以外は、あまり観てこなかったし、40代(1970年代)で女優業を引退しているので、リアルタイムでは動物保護活動家という存在だった。しかし今回観た数々のコメディ(フランスでは、芝居の事をコメディというので、日本語のそれとは少し違う意味なのだが)は、深読みを必要とせず、人間社会の大切な気分を軽快なテンポで描き、こちらも一緒に踊っているような楽しさだった。今の気分に必要な優しさをも感じたのである。

 『イニシャルはBB』(1997年ブリジット・バルドー著)によると、世界中で人気が出始めファンレターが山のように来る中(全てに写真とサインを送っていたらしい)、ある少女からの他とは違うムードの一通「クリスマスにプレゼントを貰ったことが無いので、もし個人的に返事が貰えたら最初の美しいプレゼントになる」を見つけ、翌日即贈り物を選び、なんとその後40年もの間(その後も続いているのだろう)、クリスマスの文通をしているのだという。その文通による“気持ちの交換で喜びが100倍”になったと、会ったことのない女性の事を妖精と呼ぶ。このエピソードは、意外にも思えたが、「人生で一番美しいもの、それは人生」という彼女の裏表のない姿なのだと思う。

 目の前にある自分で見つけた素敵な事は、好きな人に伝えて大きくしていこう。それは幸せの基本。これも映画だ。

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