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天竺への道~第1章 予行練習(タイ)篇

「いつかはインドへ行かねばならない」。強迫観念のようなこの思いに捕らわれた遠因はこれかもしれない。

ドラマ「西遊記」(日本テレビ/1978~80年放映/堺正章・夏目雅子他出演)

ブラウン管の奥で展開される痛快な活劇とシルクロードの風景(セットだろうが)に魅了され、テレビにかじりつくようにして見た記憶がある。特に、三蔵法師を演じた夏目雅子の美しさに、子供ながらうっとりしていたのはここだけの話。

それに、寺といえばお釈迦さま(ブッダ)。いつかは自分のルーツを訪ねたいという思いは大学入学と同時に沸点に達した。

今から26年前といえば、「地球の歩き方」と「深夜特急」をバイブルに世界各国を旅して歩くバックパッカーが大勢いた時代。今となっては考えられないが、石を投げるとバックパッカーに当たるんじゃないかというくらい、キャンパス内には彼らがたむろする旅行サークルが沢山あった。特にその中でも老舗が「世界旅行研究会」。新歓をのぞいてみたが、貧乏旅行・秘境旅行以外は旅にあらずという雰囲気に怖気づき、新たに設立されたという小規模サークルに入部し、インドへの旅行に向けて準備を始めた。

そのサークルには部室もなく、何故か集合場所は新大久保の区立体育館内にあるジム。

「バックパック旅行の基本は体力づくり」

という方針のもと、当時社会問題となっていたイラン人が大挙して押しかけ、謎の熱気に包まれていたジムで筋トレに勤しんだ。(ジムに行ったのは生まれてこのかたこの時期だけ)

また、インドの情報や雰囲気を求めて、インド料理屋や、インド雑貨店「仲屋むげん堂」にたむろし、筋肉少女隊の「日本インド化計画」を愛聴しつつ、インド行きへの闘志を燃やしていたのだ。

しかし、インド渡航歴のあるサークルの先輩から聞くインドの土産話はどれも壮絶なものだった。

「食あたりは当たり前」

「ガンジス河のワーラーナーシーはジャンキーの巣窟」

「一ヵ月滞在したら黄疸が出てきて、病院で診てもらったら肝炎にかかってしまい、一ヵ月病院に幽閉状態だった」

いきなりインドに行くのはちょっとハードだな…

そう思った私は、直接インドを攻めるのではなく、手前のタイへの照準を定めたのだった。

筋トレも半年頑張った。

地球の歩き方も穴があくほど読んで研究した。

初めての飛行機はユナイテッド航空。もちろん、格安航空券。パスポートも生まれて初めて取得した。

もちろん、バックパッカーだから、持って行く現金は最低限だ。でも、やっぱり不安だったからクレジットカードも念の為持った。

さあ、待ってろ!!!

インドの手前のタイ!!!

事前のイメージとちがって、がっちり体系のスチュワーデスが複数名通路を行き交うユナイテッド航空の飛行機は、機首をあげて成田空港を定刻通り離陸した。


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