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見抜く力 リーダーは本質を見極めよ(読書メモ)

リーダーのあるべき姿を示す教科書です。

本書は、キャノン電子株式会社の酒巻社長が、リーダーに必要な本質を見抜く力について豊富な具体例をもとに解説した1冊です。

恥ずかしながら自分は著者については存じ上げなかったのですが、とある記事で本書がおすすめされたのを目にしたことがきっかけで興味本位で読み始めました。

すると、利益の生み出すためのムダの見抜き方から始まり、リーダーシップのあり方、組織論まで学び満載で終始メモが止まりませんでした。

なかでも、
・経営トップによる率先垂範
・主体性を引き出すマネジメント方法
・過去から学びつつも、過去に拘らない柔軟性

の3点はとても勉強になりました。

では、いつも通り印象に残った内容をピックアップします。

ダメな会社に共通する三つの特徴

3つのうち2つは該当してたので笑えなかったです。著者が仰る通り、一定の緊張感を持つことは平時・有事問わず大事だと感じました。

私はキヤノン時代の経験などから、業績のよくないダメな会社や組織には、 
①トップ(リーダー層)がたるんでいる 
②受動的・指示待ちの人が多い 
③売上の 20 ~ 30%のムダがある 
という三つの共通する特徴があると考えている。
米国のある企業の調査によれば、売上高に占めるムダの割合は、売上高経常利益率が 20%超の会社で売上の 7 ~ 8%、 1%程度の会社なら売上の 20 ~ 30%にもなるという。
利益の出ない会社がまずやるべきは、全社をあげてムダをなくし、利益を掘り起こすことだ。それこそ売上が落ちている業界であれば、売上減を上回るペースでムダの削減に取り組み、体質の強化をはからないと、この先、生き残るのは難しいと思う。
緊張感は、ムダをなくして利益を出す、稼げる会社になると、自然と社内に芽生えてくるものだ。ムダをなくすには社員が自分自身で考えて行動するようになることが必要だ。そうなれば、自ずと緊張感を持って働くようになるからだ。

組織を改革するために求められる「覚悟」

覚悟って言葉にするのは簡単ですが、どれだけ現場に足を運び行動に移せてるかですよね。

何をどうすれば会社は再建できるのか、そのための大きな絵を描いたら、具体的に社員が動けるような目標をちゃんと用意し、その実現のために自ら先頭に立つ、現場に足を運ぶ。そうやって日々、批判の矢面に立つのを覚悟の上で、役員から一般社員まで深く深く染みついた既成の古い価値観、悪しき習慣、考え方をことごとく突き崩していかなければ、結局、昨日と同じ今日がやってくるだけで、何も変わりはしないのである。
組織を改革する者に求められるのは、その覚悟である。
経営方針を打ち出したら、それで自分の仕事はおしまいで、後はよきにはからえ、というタイプの経営者がいるが、多くの場合、それではうまくいかない。  
経営トップが、役員や幹部社員だけでなく、管理職から現場の一般社員に至るまで、粘り強くその実行をフォローして初めて大事は成就する。そこまで経営トップが自ら動かないと、なかなかトップの思いというのは、組織の末端まで届かないのが現実だからだ。

ムダはお金に換算して「見える化」する

各社員が数値で考える癖を身につけるためにも、経営数値はオープンにするべきだと改めて感じました。

「すべてを半分に」するにはカギとなる考え方がある。それは、ムダをお金に換算することである。具体的には、ムダが売上の何%あるのか、各費用(人件費、物流費、通信費、事務用品代、賃料、水道光熱費等)ごとに算出して「見える化」し、数量的に把握するようにする。
およそプランというのは何でもそうだが、あまり複雑なものは作らないほうがいい。実現可能性をよく考えた上で、できるだけ「シンプルで美しい」ものに落とし込むべきである。ここで言うシンプルで美しいとは、余計なものを排除した「わかりやすく、簡潔である」という意味である。
一般に企業経営のなかでムダが多い割に中身が見えにくいのは「物流」である。物流コストの削減といえば、イコール、業者に対する金額交渉と考えている企業が多いと思う。  
しかし、問題はたいてい自分たちの内部にある。自社の売上に対して物流コストが何パーセント占めているのか、即答できる担当者が、果たしてどれだけいるだろうか。
売上は外部だが、利益は内部にこそ眠っているのである。

部下の提案はやらせてみる

たしかに提案すら許されない会社ってまだまだ多そうなので、同社のように組織として明文化する方法は良さそう。

部下の提案を潰す上司、わけても中間管理職は、社員の能動化を邪魔する諸悪の根源と言ってよい。  
だからキヤノン電子では、「課長は部下の提案を拒否してはいけない」ということを課長権限に明記し、違反した場合は降格処分の対象とすることになっている。
人間、年齢を重ねると、だんだん若い世代の価値観がよくわからなくなってくる。しかし、だからといって、その価値観を受け入れられないと拒否してしまったら、たちまち企業は時代の波頭を見失い、ビジネスの新しい潮流から取り残されてしまうだろう。「これをやらせてほしい」と積極的に言える社員を育てるには、「よくわからんが、やってみろ」と言える上司を育てることも必要なのである。

組織の膿は、じっくり見極めて、一気に出す

指示系統を下から上へたどる方法は考えたことなかったです。今度試してみようと思います。

一言でいえば、トップの方針が矛盾なく現場まで徹底できるような一枚岩の組織を作って、会社としての戦闘力を高めるのが役目である。  
ダメな会社はこれが決定的に弱い。必要なときに、必要な人に、必要な指示や情報が迅速かつ正確に届かないことがしばしば起きるのだ。  
その原因は何かと言えば、肝心のリーダー層に緊張感がなく、だらけているからだ。その緊張感のなさが、末端の社員にまで感染し、たるみ切った会社にしてしまうのである。
それがどこかを突き止めるには、先ほども述べたように、現場の社員 →主任 →係長 →課長 →部長 →役員などと、指示系統を下から上へと、「この指示を聞きましたか?」とたどっていけばよい。そこで情報をストップさせたり、歪めて伝えていた人物が判明したら、要注意人物として、以後、観察レベルを引き上げ、あらゆる機会を利用して、より注意深く見るようにする。 
役員や管理職の仕事ぶりを見極めるには、これが一番簡単で、間違いが少ない。

「下から目線」でないと絶対に見えないもの

「物理的な目線の高さを合わせる」という考えはすごく納得感ありました。報告の聞き方ひとつで変わりますよね。

相手の立場で考えられる人は、人を思いやる気持ちがあって、目配り、気配り、口配りの三配りにもたいてい長けている。そういう人は、人を尊重する気持ちがあるから、基本的に謙虚であり、目線は常に下から上に向かう、「下から目線」が習い性になっている。
出世すればするほど、「上から目線」になってしまう人は多い。そして、知らず知らずのうちに、モノでも扱うような態度で部下と接してしまう。こんな上司の下では、部下のやる気はどんどん削がれていく。それこそ 100のやる気を一気にマイナス 100にされてしまったりする。
また、物理的な目線の高さを合わせるのも、大切である。部下を立たせたまま報告を受けたりせず、自分が立ち上がるか、部下を座らせるかして、同じ目線で話をするようにする。そうすると、部下が萎縮せずに、フラットな気持ちでいい意見を言ってくれるようになる。

正しい反省とは、統計学を用いた検証

反省に限らず、数字を使った合理的な判断は全てにおいて必要ですね。このためにも数値を蓄積する目的や仕組みがより重要になると感じました。

採用人事の精度を上げるための検証作業がそうであるように、正しい反省とは、統計学を用いた検証である。判断の根拠は何か、その結果はどうなったのか、なぜ当たったのか、なぜ外れたのか──。それらをしっかりと記録し、検証することにほかならない。
たとえば、弊社の工場である機械について、「この機械は必要なの?」と聞くと、「高頻度で使っています」と答える。では、「実際の使用頻度は?」と聞くと正確に答えられない。それで調べさせたら、実は月に2回しか使っていなかったということがあった。このように、会社のムダというのは、実際のデータの裏付けがない、たんなる印象で溜まっていくことが多いのである。
何か起きたとき、過去の経験や蓄積した知識に照らして、さながら「指紋照合」でもするように、同じ事象や類似のケースを見つけ出し、解決に当たる──。  
私は見抜く力の本質とは、これではないかと思う。この作業は、言うまでもなく、その人の経験や知識の総量が多ければ多いほど容易になり、また精度も高くなる。だから、見抜く力をつけるには、豊富な経験や幅広い知識が必須になる。

先を読むには、「温故知新」で過去に学ぶ

過去からヒント得ることは経験的にも多いです。ただ、過去の結果に固執すると、新しい考えが浮かびにくいのであくまで参考程度にしてます。

たとえば、ある製品を開発したとしよう。そうしたら、まず最初に、それに取って代わる製品はどういうものかを考える。具体的には、その製品を潰す技術は何か、市場価値をゼロにしてしまうような条件は何かを考えるようにする。要するに、どういう製品が登場したら、自社の開発した製品は売れなくなるかを考えるのである。
いまの人間が考えるようなことは、 10年、 20年前の人間も必ず考えている。
先を読むには、現時点から未来を見るだけでなく、過去からも未来を考えること、これを習慣にすることである。

40代になったら、 20代の2倍勉強する

年齢というよりは、年齢に伴い影響範囲が広がることで今まで以上の勉強が必要になるイメージです。

バラバラの事象を関連付けて考えるには、体系化された幅広い知識が不可欠であり、それこそが優れた専門性を支える知の土台、ベースになる。いくら優れた専門性があっても体系づけられた幅広い知識の土台がなければ、咄嗟に正しい判断を行うのは難しい。
プレーヤーとしての能力が衰え、マネジメントの能力が必要になる 40代以降であれば、会社から求められる100の能力を維持するために、 20代の頃の2倍の勉強が必要になる。 50代なら、3倍勉強しないと、とてもではないが100の能力を維持できない。

まとめ

シンプルな表現ではあるものの、本質を突いた一言一言に読みながら唸りっぱなしでした。また経営者でロールモデルにしたい方が1人増えました

管理職にはぜひおすすめしたい1冊です。

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