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「満足しないままの自分でいるより、いい方向になのか、悪い方向になのか、わからないけど、変われた方がきっとマシだ。」

(会社のHPには、本一冊に対する誰にも伝わらない細かいこだわりや、著者への半分恋をしているかのような私的な想いは書けないので、個人的にnoteに書いてみるという試みです)

こんばんは。ライツ社の大塚です。9月29日、ライツ社の新しい本が出版されました。

『人生を狂わす名著50』著:三宅香帆

まずは、本の簡単な紹介をします。

著者は23歳。現役の京大院生。文学研究をするかたわら、京都天狼院で書店員として働く文学マニアの女の子です。この本は、『京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」 と思う本ベスト20 を選んでみた。 《リーディング・ハイ》』というタイトルで「天狼院書店」のウェブサイトに掲載され、2016年、年間はてなブックマーク数ランキングで第2位となり、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ記事をもとに書かれたブックガイドとなります。元記事はこちら。

その選書センスと言葉選びの鋭さ、素直さに感銘を受け、今年の1月にお声がけし、そこから50冊の選書とその書評をお願いして、ようやく今日、出版することができました。その過程は三宅さんが赤裸々にブログにまとめてくれています。赤裸々な制作過程のブログはこちら。

何はともあれ、まずはこの本の「はじめに」を読んでほしいです。それだけでこの本を読みたくなる人が、10人中8人くらいはいるはず、と思います(本が好きな人に絞るなら10人中10人だと思う)。この本はcakesで連載させていただいているので、はじめにはここから読めます。

・・・読んでもらえましたか? いかがでしたか。ぼくはこのはじめに、に一目惚れをしてしまい、とても楽しくこの本の編集をさせてもらいました。もちろん内容の保証は、作家・有川浩さんにいただいた推薦の言葉の通りです。

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作品の芯を射貫かれた。
予断のない読み筋が清々しく、ありがたい。
人生狂わせちゃったみたいで、ごめんなさい。
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装丁の挿絵は、贅沢にも「今日マチ子」さんにお願いさせていただきました。その装丁がこちらです。

次に、本一冊に対する誰にも伝わらない細かいこだわりについて。あー、本の編集者ってこんな感じで本をつくってるんだなぁと思ってくだされば幸いです。

まずは装丁からですが、この今日マチ子さんの絵。「普通の女の子が狂わされて本の世界に吸い込まれた絵」をお願いしました。いや、注文どおりというかそれ以上の絵が届いたのは言うまでもないのですが、こだわったのは「胸のチラ見せ」と「見えそうで見えないパンツ」と「頬の赤らみ」。そこに今日マチ子さんは「ずれたストッキング」というアイデアをプラスしてくれました(さすがだ)。

挿絵の色はCMYKのM(ピンク色)だけ特色に変えて「狂った感」をプラスしてもらいました。ベージュと緑の帯(実際はもっと鮮やか)の配色は、営業の高野くん(ターゲットの本好き代表)が選びました。ベージュって文庫小説の表紙のイメージあるじゃないですか? あと、帯は本当はもう少し雑貨っぽいミントグリーンだったのですが、そうするとおじさん(30代はもうおじさんだ)が買いづらくなるということで、あえてベタな黄緑にした、という結果です。

では、中身に行きましょう。

本には、著者の三宅さんの手書きをスキャンした文字が入っています(このVSというのは、「自分の価値観や常識」VS「本(作家)が狂わせてくる価値観や常識」を表しています)。

本を紹介する本で何が怖いかって、「本気さ」が伝わらないことです。本を紹介する本を書く著者って、絶対に他のいわゆる「本好き」の人に比べても、数としても質としても本読んでるし、何より本を愛していると思うんです。でも、だいたいそれが「伝わらない」。結果、多くのいわゆる書評本は、感想として「私の方が詳しいし」とか「こっちの方がおもしろいし」とか「ただ本を紹介しただけで本書けるなんて」と言われてしまうわけです。

ぼくは絶対にそういう本にだけはしたくなかった。三宅さんの本への愛を確実に読者に届けたかった。「本への愛だけは伝えよう」がぼくの制作のコンセプトだったのですが、驚いたことに著者の三宅さんもそう思ってくれていたようです。

だから、ただ本の写真とちょろっと400文字くらいの紹介文を載せるっていう本ではなくて、手書きをお願いして、「〇〇なあなたへ」という文言を考えてもらって、キャッチコピーを考えてもらって、どこか一つでも読者の琴線に触れるように「ハッシュタグ」のようにこの本の特徴へ予備知識をまとめてもらって、「人生を狂わせるこの一言」を抜き出してもらって、2000字から4000字の書評を50個書いてもらって、さらには次に読む本を3つずつ計150冊選んでその紹介文も書いてもらった。

京都大学の大学院で文学研究をするかたわら(修論を執筆中)にこれだけの作業をやるなんて、大変だったと思います。けど弱音一つ吐かずに三宅さんは書き続けてくれた。ぼくが「書け」なんて1回も言うこともなく書いてくれた。それは三宅さんが本が好きで、好きな本を紹介したいというただそれだけでこの本をつくった、という気持ちのあらわれだと思います。

本日から、全国の書店で発売されている、と同時に、いくつかの書店では「人生を狂わす名著フェア」と題して、三宅さんの本を中心に、この本で紹介させていただいた50冊の名著とともに展開されています。

5年前、ぼくがつくった本のはじめに、にこんな言葉を書きました。「満足しないままの自分でいるより、いい方向になのか、悪い方向になのか、わからないけど、変われた方がきっとマシだ。」

すこしでもたくさん人に、「人生を狂わせるきっかけ」になる出会いがあるといいな。そうそう、そんな想いで、この本の巻頭には、今日マチ子さん特製イラスト入りの便箋がついています。例えば誰かにこの本をプレゼントするときに、メッセージを添えて送ってもらえるように。

それでは、『人生を狂わす名著50』よろしくお願いいたします!


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