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贅沢なアレルギー

4年ほど前の冬、私は父親とあんこう鍋を食べに行くことになった。あん肝をたっぷり使った料理で、初めての味に舌鼓をしたものの翌日に風邪を引いた。その翌年に食べると帰り道に悪寒と気持ち悪さに襲われ、さらに翌年は帰宅と共にリバースし、今年は異常に喉が渇きと気持ち悪さ、酷い頭痛に2日程襲われた。ここまでくれば流石の私もわかった。そう、あんこう鍋であった。特にあん肝を食した後は、美味しさの後に妙な気分になった。

あんこうと共に死にたくは無かったので、喘息の薬を貰うついでにそのことについて先生に話を聞いてきた。どうやら食べ物アレルギーに特定の品はなく、全てに起こり得る事だという事らしい。だがビタミンAが多く入った錠剤でも似たようなことが起きたので、ビタミンA過敏症であるかもしれないとのことだった。アレルギーの薬を出そうか相談されたが、あんこうの肝なんて滅多に食べないし、錠剤も飲まなければ大丈夫なので、症状が出たら診察してもらう事となった。帰り際にお礼を言うと若い先生は、苦笑いながら呟いた。

「しかし、あんこうでアレルギーとは…なんとも贅沢なアレルギーですね」

確かにそうだ。あんこうなんて滅多に食べないものだし、あん肝を大量摂取する機会など中々ない。そんな贅沢で死にかけるなんて苦笑いされてもしかたがない。ちなみにもう一方の目的であった喘息は、症状が見られなくなったので、世の中はちゃんとバランスが取れているなと思ったのであった。

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