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18歳成人は「親から逃げたい人」にとっては大きなメリット

4月1日からは18歳で成人

私が関わる「若者」には、20歳も半ばを過ぎた人たちも少なくありません。成人年齢を過ぎているので、法的行為に関しては自分たちで決定し、責任を取ることになる。誰も責任を取ってくれません。そうしたことが18歳以上にも4月1日から民法改正の施行によって適用されます。いわゆる「18歳の成人」です。18歳で成人となるということで、クレジットカードの契約も、賃貸契約も、結婚も自分自身で行えることになります。

消費者被害の心配がされる。

未成熟な状態である18歳という存在に対しての犯罪被害の危惧も継承されています。例えば、先般の国会ではアダルトコンテンツへの出演契約は民法上の契約行為であり、18歳が単独で可能。つまり、親(親権者・法定代理人)が未成年者取消権を行使できない旨の答弁もされました。

特に若年者は消費者トラブルが多く、今回の法改正でも大きな課題として指摘されています。消費者庁によれば、特にダイエット、バストアップ、脱毛、エステなどの美容関係、ネット通販のトラブルが多く報告されています。例えば脱毛などは全身脱毛70万円程度かかる場合もありますが、学生がアルバイトで稼ぐ月収を月5-8万円とした場合「月数万円の分割払いで大丈夫ですよ」との契約も単独で可能となります。

払えない額ではない?

70万円の契約をしたとしても、約3万円を2年間で払えば「払えない額ではない」と思うかもしれませんが、コンスタントに月10万円に満たない収入の学生が3万円を払い続けるのはかなり苦しいものがあるのではないでしょうか。社会生活を自分の得た収入で成立させている経験がないと、やや不安が残るケースです。

少年法も改正されます。

また、民法上だけでなく、4月1日には少年法も改正されることはあまり知られていません。今後、少年法改正によって18歳、19歳の者が罪を犯した場合には,その立場に応じた取扱いとするため「特定少年」として、17歳以下の少年とは異なる特例を定めました。

18歳、19歳も引き続き少年法が「特定少年」として適用され全件が家庭裁判所に送られ、処分が決定されることは変わりません。ただし、原則として重大事件などの逆送対象事件や逆送決定後は20歳以上の者と原則同様に扱われていくなど、17歳以下とは異なる取り扱いがされることになります。

また、起訴された場合は実名や写真報道の禁止が解除されます。つまり、実名報道がされることになります。より重い責任が18歳以降には求められることになります。

親から逃げることができる。

そうした「責任」が求められる一方で、親権や監護権が4月1日で消失するということは、「親から逃げたい人」にとっては大きなメリットとなります。家の契約も自分自身の名義で行える。労働契約も民法上の契約も単独契約行為として自分自身で行えるようになることで、自分の決定で住むところ、働くところなど生活ところが20歳を待たずにも自分で選びやすくなります。もちろん、現実的な手続きや理解力などの課題は大きく圧し掛かっていますが。

そうした法改正は今まで20歳で「一応の大人」とされてきた子どもたちに早期成熟を促すことになります。つまり、親側も18歳までに「子どもが大人になる準備」を進めていかなくてはならないともいえるのではないでしょうか。


法律上の成人=自立ではない

ただし、法律上の成人(=大人)になるということは、決して自立(=様々な依存先に依りながら自己決定により生きていくこと)するということではありません。親権者がなくなりますから法的に責任を取るということは困難になったとしても、18歳、19歳という成人年齢は高校在学中もしくは就職1年目、高等教育1年目あたりに相当します。

社会経験が未熟な中で、周囲とどのようなコミュニケーションを取ってよいかなど、自分と他者との境界線を学んでいる最中ともいえる年齢だからです。また発達の差も環境だけでなく個人差が大きい年齢ともいえます。

練習できる場が必要

そうした若者たちと向き合っていると当然、若者たちと付き合っていると様々な人と人とのコミュニケーショントラブルに発展します。時にはクリティカルなことも起こりますが、それを含めて「親権者」が関わるのではなく、若者自身で「練習できる場」が必要だと常々感じています。そうした「練習できる場」がないと、それこそ意図せずに犯罪加害者になることや、被害に巻き込まれることも少なくありません。

親権者や周囲の大人ができるのは「練習の場」を提供し続ける事かもしれません。場合によっては、18歳、19歳以降もそうした場が必要になってくるのではないでしょうか。

例えば、障害を持つ方の場合だと、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所といった働くための訓練施設が制度として準備されています。また、大人になってからも専門実践教育訓練給付金などを活用して資格を取ったり、学校に通うこともできます。ただし、こうしたものはあくまで就労に特化していたり、ある一定の条件を満たしていないと利用できません。つまり、ユニバーサルな支援ではないのです。

高校を卒業後は8割近い若者たちが高等教育へと進学(4年制大学に限れば5割ですが)します。そうした生活の中で、必ずしも消費契約や成人としての社会生活を歩めるソーシヤルスキルが学べるわけではありません。ややもすれば、そうしたスキルを持っていて当たり前ということを前提に設計されている場合もあります。


そうした前提に立つと、いま求められるのは「安心してチャレンジ」したり、「失敗」ができる場を私たちがどのように保障していくことかもしれません。目指すべきは「誰であれ」「社会生活がその人らしく営めるよう」ユニバーサルな支援が受けられる社会であるのかもしれません。

現場から現代社会を思考する/コミュニティソーシャルワーカー(社会福祉士|精神保健福祉士)/地域の組織づくりや再生が生業/実践地域:東京-岐阜/領域:地方自治|政治|若者|子ども|虐待|地域福祉|生活困窮|学校|LGBTQ