見出し画像

読書ノート 「ルイ・アルチュセール 行方不明の哲学」  市田良彦 

 

    

 「空虚のなかを原子の雨が落下している。原子どうしの間には、どんな関係も交流もなく、彼らはただ静かに並行して落ちている。ある時突然、なんの前ぶれもなく、一つの原子がほんの少し軌道から逸れる。そして隣の原子と衝突する。二つの原子が出会う。すると玉突きの要領で次々に同じような衝突が発生し、世界が動き始める。歴史という特別な時間が、永遠の宇宙のなかに登場する。出会いのなかには、持続して、複数の原子からなる新しい個体を作るものもある。それらはよい出会いだったろう。少なくとも、何かが生まれたのだから。しかし持続せず、原子たちがすぐに互いから遠ざかってしまう衝突もあれば、衝突の結果、すでに成立していた個体が解体されてしまう場合もあるだろう。悪い出会いである。原子たちは互いに反発し、出会う以前の状態に戻ったのであるから。いずれにしても、世界史は偶然の出会いの連続生起からなりたち、そこに必然性はない…」(アルチュセール『出会いの唯物論の地下水脈』)

よろしければサポートお願いいたします!更に質の高い内容をアップできるよう精進いたします!