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私をどこかに受け継いだあなたが、今日の私を作ってくれる

「結局、変化がないとダメなんです」

まあ飽きっぽいってことですけどね。と付け足して、彼女は微笑んだ。

どうにも私の根幹みたいな、ジェットコースターのように変化を楽しむ性質が彼女には受け継がれてしまったようだった。確かに元々あった部分ではあるが、そこが研ぎ澄まされてきたのは一層面白くなったなと、空っぽの器をみながら私は彼女の話に耳を傾けた。大学の話、生き方の話、仕事の話。どういう価値基準で物を考えているのかが明瞭で時々独特のこだわりも生まれてきたようだった。

ピンク色のネイルが彼女らしい、暖かい色だと思った。

学生時代は後輩に熱心に接する方だった。昔から髪を染めていたわけでも眉がないわけでもないのに、外見が怖すぎて近寄りがたいと言われてきた。何となく言わんとするところは分かる。物の言い方がきつい。それから目線がまっすぐとしているから、何も考えていなくても考えているような顔をしている。本当に考えている時もあるから、それが怖いのだと思う。

そこを飛び越えて来てくれた子には丁寧に接しようと決めていたところもあった。私の引き継ぎ書の丁寧さははっきり言って別格だろうと今でも自負している。

それでも今はその人たちとは接点はなくて、丁寧に葉書などをくれる人もいたのだけれど、私が一方的に断ってしまった感じだから、いつか会いたいという心残りのあるまま私は次のステージにいる。

そんなところもあって、私が大人になってから現場で出会った人の中でも、私が気にかける以上に質問してきたり懐いてくれる人や後輩は大切にしてきた。そのうちの一人が彼女。私より大きなことをなして欲しいという期待の気持ちと健やかに育ってほしいという気持ちがあり、私は時折顔を覗いてはその成長具合を見て喜んでいる。

別に私に何をしてほしいとかそういうことじゃなくて、私の心に響いた何かが時を積み重ねていく様子が単純に面白い。

あと小手先の人のあしらい方は誰かが教えてくれるから、俯瞰で見た時の全体の状況を伝えるようにはしている。私の物の見方についてきてくれているのだと私が思っているからでもある。

こうやって私をどこかに取り入れて生きている人の存在を確認すると、何だかんだ私はここで進むのを止めたくないなという気持ちになる。女性として彼女らの前を歩いていこうとか背中で示そうとか立派な人物に成ろうとか壮大な話じゃなくて、単純にここで止まったら置いていかれるなあと思うのだ。

変化の早い人たちを見続けていたいから、私は今日も歩み続ける。


グミを食べながら書いています。書くことを続けるためのグミ代に使わせていただきます。