理科室まがった (バレエショートショート)
藍は学園祭の余興で踊る。楽屋は理科室だ。藍はどこでも平気だ。コンクール前の緊張感を思えばなんでもOK。ただハンガーがなかったので、藍は人体模型にチュチュを着せ、頭にはティアラをのせてあげた。種々の薬品瓶の横に化粧水が入ったかわいいピンクのボトルも並べる。すると突然人体模型が話しかけてきた。
こんなきれいな衣装を着るのは初めて
あなた女の子なの?
ええ、病気で死んだけど心は死ななかったので誰もこない理科室にいて心細かった
それはお気の毒
藍は模型に予備に持ち歩いている付け睫毛と頬紅をつけ、キューピッド用のウィッグもつけてあげた。鏡に映してみせると人体模型は嬉しそうに笑う。
これで踊れたらいうことないのに
大丈夫、私の真似をして手足をあげてみて。あなたは体重がないので、簡単に高くあげられるはずよ。
藍は相手が誰でも、バレエの美しさと楽しさを布教するつもりで生きている。
理科室の時空が曲がったのか模型は藍よりも高くジャンプして踊る。
ありがとうございます。