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残り9分の苦行

定期的に繰り返し流れる音
「ターントーン」とも
「ピーンポーン」とも聞こえる。

12両編成、新幹線を待つ。

ホームで立つ私の右手は
「ギチギチ」と音が鳴っている
気がしている。気のせいか。

ビジネスバッグと茶色の手提げ紙袋

今日の任務はこのブツを運ぶこと。
左手でスマホを操作しているから
荷物の重さは全て右手に。

何を入れているのかビジネスバッグ
パソコンは置いてきたはずなのに
重い。ズッシリとした存在感、あるね。
右手の指にバッグの柄、紙袋の紐、
容赦なく喰い込み締め付ける。
指はだんだんと白くなり、
指先は赤く鬱血しているかのよう。

新幹線の発車時刻まで残り9分

車両はまだ見えない
指先が「ジーン」とする

もう2番目に並んでしまっている。
私の後ろにも列が続いている。
今更、ベンチに戻って荷物を下ろして
「ふぅ〜」と一息はつけない。
そんな時間はないのだ。
乗り遅れたら元も子もない。

そのまま並び続ける。
右手は、未だ赤や白と忙しく
左手はnote.

フリック入力ならば苦労しないのだが
スマホデビュー時に覚えなかったので
未だにキーボード打ちである。
ここら辺が私の脇の甘さであり、
いつも垢抜けない文章しか書けない
理由である。
と本人は語る。

片手なので、スマホを変な形で
ホールドする。しかも入力は
QWERTY
指の可動域は自ずと拡がり
あらゆる指がピクピクする。

人差し指で背面を
中指、薬指で側面を
小指で底面を支える。

小指の第一関節内側が
変な形に凹んでいる。
いっそこのまま硬質化したほうが
便利ではないだろうか?

「スマホ固定用指サック」
売れないだろうか。
100均であればヒットするか?
いっそ強気の値段設定で
ブランドのコラボ企画を組み合わせて
インフルエンサーに案件持ちかけ
あれだまだ新幹線こない指限界乙

ジッとりと汗ばむ季節
「ーツッ」滴り落ちない程度の
広範囲薄膜発汗不快指数是梅雨嫌

その刹那、一陣の爽やかな風が...

吹くはずもなく



新幹線がホームに滑り込んできた。
日本の新幹線は優しい。
今日だけはこの車両の名前を変更しよう

新車両「じんわり」

取り止めもない話
ここまでわずか
9分の梅雨の出来事。


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