見出し画像

#0112【「現状維持への戒め」と「決断の重要性」(旧約聖書:アブラムの召命と移住)】

1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。
今週は、旧約聖書の物語シリーズをお送りします。

【0084:バベルの塔】の続きです。<>内は旧約聖書からの引用を基に記述しています。

<主はアブラムに対してこう言いました。
「あなたは生まれ故郷、父の家を離れて、わたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを大いなる国民にし、あなたを祝福し、あなたの名を高める、祝福の源となるように。
あなたを祝福する人を私は祝福し、あなたを呪う者を私は呪う。
地上の氏族はすべてあなたによって祝福に入る。」>

それまでアブラムの一族はメソポタミア地方(現:イラク)で豊かな生活をしていました。そこに突然、神様に召されて、移住しなさいという命令を受けたのです。

移住した先でどうなるかも分からない中、アブラムは妻と甥とすべての財産を携えてカナン地方(現:イスラエル)へと旅立ちました。

信仰の立場からすれば、神の命令は絶対であるため、アブラムは迷いなく導きに従います。

カナン地方へと入ると再び神の声が聞こえます。

<「あなたの子孫にこの土地を与える。」>

これが古代ローマ帝国時代に国を失ったユダヤ教徒が、2000年の時を経て、イスラエルを建国した根拠となっています。

「神が与えた土地」

この強烈な文言によってイスラエルは1948年に建国されたのです。

一方、アブラムはユダヤ教だけでなく、ユダヤ教を根っことする唯一神教のキリスト教・イスラム教においても崇められています。

特にイスラム教ではムハンマドに次ぐ人物としてアブラムを位置付けており、この「あなたの子孫」にはイスラム教徒も含まれると介しています。

パレスチナ問題は、単に先住権の問題ではなく、宗教問題が大きく絡んでいます。

神の言葉は、人間が変更することはできませんが、解釈することは可能です。

但し、その解釈の違いは宗教の根幹に関わる部分であり「話し合い」や「折衷案」では解決ができません。

相互理解と尊重が解決の糸口ですが、そのためには経済的・精神的なゆとり=余裕が必要となってきます。

宗教の立場を離れて、このアブラムのエピソードから学べることは「現状維持への戒め」と「決断の重要性」だと考えています。

それが神の命令なのか、自分の内なる衝動からなのかはどちらでも構わないと思っています。しかし、安易に現状維持を求める心を戒めて、必要な決断を速やかに下すことの重要性は、宗教によらず、普遍的な価値を持つものだと考えています。

以上、本日の歴史小話でした!

(続き:No.113【行いよりも、心のあり方(旧約聖書:アブラムとの契約)】)

========================
発行人:李東潤(りとんゆん)
連絡先:history.on.demand.seminar@gmail.com     twitter: @1minute_history
主要参考文献等リスト:
https://note.mu/1minute_history/m/m814f305c3ae2
※本メルマガの著作権は李東潤に属しますが、転送・シェア等はご自由に展開頂いて構いません。
※配信登録希望者は、以下URLをご利用ください。 http://mail.os7.biz/b/QTHU
========================

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?