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1日の始まりの夫婦のはなし



結婚したらこんな夫婦になりたいな、とか、結婚っていいかも、と思うことはちょくちょくあるけれど、そう思ったエピソードとして、祖父母の話がある。


私の祖父母は遠方に住んでいて、小さい頃は、夏休みや冬休みに一週間ほど遊びに行っていた。

祖母はしっかり者でテキパキしている。
祖父は寡黙で真面目、いつもにこにこしていた。

祖母は優しいがせっかちなところがあり、祖父はよく叱られていたが(子供の目からしてもたまに理不尽だな…と思うこともあった笑)、その時もおおらかに笑っていた。

それでも、祖母があまりにもやり過ぎたりした時は、ビシッと締めていたので、バランスをうまくとっていた夫婦だったのだろう。

※祖父が唯一?めちゃくちゃ怒っていたのは、車の運転中に祖母や私の父から、あれやこれや指図され、うるさい!と言っていたくらいだろうか笑

特に、二人のことをいいなあ、と思ったのは、祖父母が朝早くにしていた会話だ。

祖父母の家は、ダイニングの横に和室があり、横に引くタイプのドアで繋がっている。

小さい頃、私は和室で寝ていたのだが、祖父母は朝の6時には既に起きていて、ダイニングで朝食をとっていることが常だった。

朝にとことん弱い私は早起きではなかったが、ダイニングに続くドアの開き具合で、和室に電気の光や物音が入ってくるので、起きてしまうこともあった。

うとうとしながらも、目を薄くあけてみると、祖父母がダイニングテーブルで向かい合いながら、ぼそぼそと何かを話していた。

何かを話しているのはわかるのだが、何を話しているかまではわからない。

孫の話だろうか、子供の話だろうか。自分達の話だろうか。
それとも、近所の人の話や、最近のニュースの話など、たわいもないことをつれづれと話していたのだろうか。

その時は、「祖父母」の顔ではなく、長年連れ添った「夫婦」の顔で話をしているように幼い私には思えた。

稀に私がうとうとしつつも早起きをしてダイニングに入ると、祖父母の顔をした二人が、おはよう、と迎えてくれる。

話をしているなあ、このまま起きてもいいけど邪魔をするのもなあ…眠い…と思いながらそのまま寝てしまい、のんびり起きてダイニングに向かうと、祖父は別の部屋に行っていて、祖母がよく寝れた?とにこにこしながら迎えてくれる。


私がもし結婚して、私も夫も年老いたとしても。
一日の始まりに、コーヒーでも飲みながら、二人の会話ができたなら

昨日起きたことでもいいし、今日の予定のことでもいい。
自分達の子供のことについての比較的重い話から、たわいもないご近所さんの話でもなんでもいい。

長年連れ添ってお互いのことをよくわかっていても、その時々のお互いの気持ちや想い、考えを共有できたなら
それはとても幸せなことだと私は思う。




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幼かった私が歳を重ねれば、当然祖父母も歳をとるわけで。

数年前、祖父が亡くなった。
来月で3回忌になる。

二人はお見合い結婚だったらしいが、
孫の私から見て、素敵なおしどり夫婦だったな、と思う。

祖父が亡くなったことも、もちろんとても悲しいけれど、祖父母二人が揃う姿が見れなくなったことや、あの早朝のダイニングでの会話が見れなくなったことが何よりも寂しい。

祖母には長生きして欲しいので、すぐに、とは言いたくないけれど。
願わくば、いつか二人が天国で再会して、ダイニングで向かい合いながら仲良くお話してくれればいいなと思う。
祖父が亡くなった後のことなんかから始めてもらって、ね。


私も、1日の始まりを一緒に迎えられる、素敵な人を見つけなきゃ。

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