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貸与型と給付型の奨学金を使って大学院に2度行ってみた感想

今日は、奨学金を利用して大学院に進学し、修士課程を修めた経験を通して、貸与奨学金と給付型奨学金のメリットとデメリットについてお話ししようと思います。


まず、日本学生支援機構の第一種奨学金を使って日本の人文系の大学院に進学しました。
全部で24か月分を借りて、主に授業料の支払いに使ってました。
日本で大学院を修了した後に、韓国の政府が募集する韓日共同高等教育留学生交流事業(修士・博士)に採用されて、韓国文学系の大学院に進学しました。

どちらもお金の問題で悩む時間をカットして、すぐにやりたいことができるというメリットはあります。
しかし、いずれにしてもお金の契約なので、自費で進学や留学するのに比べて制限や面倒な手続きがあるのも事実です。
貸与にしても給付にしても、進学して何がしたいのか、学生生活では何を中心に置きたいのかを考えたうえで奨学金を検討するのがいいでしょう。


1.貸与型奨学金について

日本で、日本学生支援機構の第一種奨学金を使って日本の人文系の大学院に進学しました。

第一種は、無利子ですし金利も低いので借りやすいほうでしょう。
多くの人は、連帯保証人を立てて契約すると思いますが、私は保証会社を利用して契約したので、月々の振り込みから保証料を天引きされてから受け取ります。
この保証料は、返済期間が始まってから繰り越し返済をすることによって、返済を保証する期間が当初の契約より短くなると、返金されます。
本来であれば、振り込み金額から天引きをしないで、契約時に保証料として一括で支払うものだと思いますが、契約時の負担を減らしながら確実に支払わせるために、分割で振り込み金額から徴収をしているのではないかと個人的に思います。

冒頭でも述べた通り、受け取った奨学金は授業料に充てていました。
最低限の生活費は、アルバイトで稼いだお金で賄い、一人暮らしだったので家賃など月々の決まった支出は、家族に協力してもらっていました。

貸与とはいえ、学部時代よりは家族の金銭的負担を減らして、無理しないで自分のやりたい研究活動ができたし、人生的な学びも大きかったので満足しています。


2.貸与型奨学金の返済について

奨学金といっても貸与型である以上、修了後にお金を返さなければいけません。
この返済をどうするかが最大の問題です。
第一種の奨学金は、成績や研究成果などで免除にすることができます。
これは大学ごとに採用枠が与えられているため、応募母数が少ないことが多いので対象者であれば、とりあえず応募しておくといいと思います。
残念ながら、私は採用されなかったので当初の予定通り返済していくことになりました。

珍しいケースかもしれませんが、私の場合、大学院の修士課程を修了した後すぐに、また韓国の大学院の修士課程に留学することがほぼ決まっていました。(なぜ、‘ほぼ’なのかについては後述します。)
修了後、就職をしないで進学などをする場合は返済期間の開始を待ってもらうことができます。
しかしながら、返済を先送りしているだけで借金は無くならないのが現実なので、留学しながら返済をすることにしました。


3.給付型奨学金について

在学中に大学に手続きなどを仲介してもらって、韓日共同高等教育留学生交流事業(修士・博士)に応募して採用されました。

ホームページに記載されている奨学金支援の内容は次の通りです。

수업료
생활비(월100만원)
왕복항공료
의료보험료(월2만원 이내)
정착금(20만원)
논문인쇄비
授業料
生活費(月100万ウォン)
往復航空料
医療保険料(月2万ウォン以内)
定着金(20万ウォン)
論文印刷費

ホームページ記載された韓国語を日本語に翻訳しました。
詳細は変更されることがあります。

これは、給付型奨学金なので授業料免除、渡航費、月々の生活費などが支給されるため、渡航時点で所持金が少なくても正規留学が可能です。
私の場合、2月末の渡航だったので3月分の振り込みがあるまでの生活費があればとりあえず何とかなりました。
一般的に、留学には銀行口座の残高証明が必要ですが、この奨学プログラムでは提出を求められませんでした。
また、学生本人名義で応募と契約ができ収入証明なども要らないため、金銭面での心配が解決します。
留学先の地域や大学の対応によって、入国時の大学までの交通費や初月の家賃などが変わってくると思うので、行く前にいくら必要かの計算は必要ですが、何ヶ月分も用意する必要はありません。
もし、自分に金銭的余裕があれば、奨学金にプラスして留学費用に充てられて、奨学金だけで過ごすよりはできることが増えるので軍資金が多いことに越したことはありません。

その代わり、応募条件が少し独特です。
幅広い国籍を採用するGKSプログラムでも日本人を採用していますが、韓日共同高等教育留学生交流事業では「日本国籍」の学生を採用するものです。
さらに、両親の国籍も日本であることを求められるため、多国籍の家族であると応募できません。

採用されれば3年間手厚く協力してもらえるため、金銭面でも事務手続きの面でも、自費留学の学生に比べて負担を減らせます。
まだ知名度が高くないこともあって、採用予定人数に比べて応募数や採用人数は決して多くないとも聞きます。
そのため書類をきちんと揃えて、志望理由をきちんと書けば、採用されやすいといえるでしょう。
個人的には、大学院留学を検討しているのであれば応募をおすすめします。

その一方で、応募条件や提出書類が少し独特で複雑なので、誰にでも応募を薦められないのも本音です。
私が応募した時の情報を元にその理由を列挙すると、主に次の通りになります。

  • 受け入れ先に指定された大学から推薦を受ける

  • 韓国語か英語で書かれた教授の推薦書2通

  • 両親の国籍証明の書類

一般的な奨学金であれば、その運営先などに応募して採用されると思いますが、これは先に進学先の大学に志願して大学の審査に通過しなければいけません。
その受け入れ先になる大学が、運営元である政府に学生を推薦するという手続きです。
そのため、どこの大学でも進学できるわけでなく、自分の志望分野が受け入れ大学の中にあるかどうかが、奨学プログラムに応募するうえで問題になります。

2つ目の問題が、応募時点での教授とのつながりです。
推薦書を書いてもらうためには、自分がどんな人物で、どんな研究をして、その後どうしていきたいのかを教授に知ってもらう必要があります。
自分のことをよく知っていて、かつ外国語で書ける余裕のある教授は多くありません。
それを2通分用意しないといけないので、応募時点での大学のつながりが重要になってきます。
自分だけではどうにもできない書類なのに、学部を卒業して時間が経ってしまうほど用意が難しくなりやすいため、この問題で断念する人もいるだろうなと思います。

3つ目の問題は、両親がパスポートを持っていない場合にどうするかです。
自分は留学するのでパスポートを持っていることが前提になりますが、両親はそうだとは限らない人も多いと思います。
しかし、両親の国籍証明を求められている以上、親との相談が必要になってくるかもしれません。

採用されて無事、留学が始まっても、金銭の契約である以上いくつかの約束があります。
成績の維持もそうですが、自費留学生と異なる事情が生じます。

  • 指定された水準の韓国語能力試験の取得

  • 韓国出国前にその旨の書類提出

  • 指定期間の滞在

ひとつ目の問題は、プログラムによって求められるtopikの等級が変わるみたいですが、基本的に予備研修の1年間の間に取得できなければ大学院に進学できません。
どのみち、最低限の試験を通過できない韓国語レベルでは進学してもついていけないし、生活もしんどいでしょう。
志願時点で韓国語ができる必要はありませんが、最初の1年が大変なので覚悟は必要です。

2つ目の問題ですが、月々の生活費は韓国で生活するためのお金です。
韓国にいないなら支給できないので、帰国等で出国する場合は書類を一筆書く必要があります。
この書類には教授の捺印かサインが必要で、自分ひとりだけで完成する書類じゃないため長期休みに一時帰国するなら学期中に準備しないといけません。
たいしたことではありませんが、手間ではあるので念頭に置いたほうがいいでしょう。
また、1年目と2年目以降で出国日数に決まりが設定されていて、1年目は韓国語の勉強に集中させるために短めに設定されているので注意が必要です。

3つ目もたいした問題ではありませんが、入国してから一定期間は放棄、帰国しないで滞在することを求められます。
つまり、決められた期間を過ぎず短期間で何らかの事情によって留学を断念して帰国した場合、その間の奨学金を返還するように求められることがあるとオリエンテーションに書かれていました。
時々、半年や1年の留学で向かったものの数ヶ月で体調を崩して断念する人もいるようなので、渡韓前に体調を万全に整えながら、なかなか会えなくなる家族や友人と留学中も連絡をとる約束をしておきましょう。

ここまで、日共同高等教育留学生交流事業(修士・博士)について紹介しました。
私が奨学生に採用されて、オリエンテーションで聞かされた時の内容から現在では変更されている可能性もあります。
詳細は、志願先の大学院や国立国際教育院に問い合わせてください。


4.可能であれば自費で賄うのが最も理想的

奨学金を利用したことによって、金銭的な負担を減らして勉強や研究に集中して頑張ることができました。
2回とも、2年で修士論文の完成と学位取得という形で成果を出せました。
もし、金銭的な負担を抱えたままの修学だったら、学びや研究活動のための時間の捻出に苦労したり、アルバイトなどで体力を消耗してしまって満足な成果を出せなかったかもしれません。
わたしにとって貸与型にせよ、給付型にせよ、奨学金を利用して進学できて良かったと思います。
だから、自分で稼いで生活や学業の費用を賄っている人たちが本当にすごいなとも思います。

一方で、学生生活は学業だけをやる生活でもありません、
貴重な20代の時間に、学びに集中したり海外に出られたりしたことは幸運でしたが、反面、学生の立場で自由に使い方を決められる時間を他のことにも使えたかもしれないという後悔もあります。
なかなか相手にされない書類の請求と問い合わせに一日二日を消耗したり、家や図書館で、締め切りに追われながら教授の指定したpdfの論文を無理して読んでいた時間を、もう少し外に出て見分を広めるために充てても良かったかなと思います。

言い出したら全部「たられば」になってしまうものの、奨学金はただお金をもらうのではなく、勉強や研究活動とその成果を見せることとの交換でもあります。

大学院進学が、勉強や学業と別のところに目的があったり、思いついたときに細かいことを気にしないでやりたいことをやりたいという性格なら、奨学金を申請するよりも自費で頑張ったほうが向いている可能性があります。
また、大学と違って大学院に進学する人は多くなく、日本においては大学院の学位を評価してくれる所は限られてきます。
そのため、自分にとって、進学してからの学生生活で何が重要なのかを考えたうえで、奨学金の申請と取得を検討するのがいいでしょう。

そして、やっぱり大学院に進学して頑張りたいのなら、奨学金をガンガン使うべきです。
時間と体力と意欲は有限なので。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
わたしの経験談が参考になれば幸いです。
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現地の友人も恋人もいない筆者が語学道の寄宿舎を出て、現地ワンルームを探した時のエピソードと韓国語が拙いながらの戦略を以下の記事で共有しています。
韓国で不動産を探そうとしている方の参考になれば幸いです。



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