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フォトショ&イラレで3色刷り-メイキング

今週の木曜日から始まった企画展
「短歌と絵と vol.3 -揺れる三つ編み-」
展示作品につきまして。

今年で3回目になります、
歌人・高田ほのかさんの短歌とのコラボ企画。
私は第1回目の2016年にも参加させていただいておりました。
今年の新作は自宅で色調整しながら刷ったものですが、
2016年はレトロ印刷JAMさんで多色刷りに挑戦していました。
今回はそのときのメイキングをご紹介いたします。

レトロ印刷とは、孔版印刷を利用した、一種のスクリーン印刷です。従来のフルカラー印刷とは根本的に考え方も違い、入稿データの作り方や印刷の原理も、シルクスクリーンや版画に近い作り方です。
そのため、ランダムに版ズレやインクの色ムラ、カスれが起こりますが、印刷の風合いがとても昔っぽくなり、雰囲気のあるモノに仕上げてくれます。
それはまるで現代の版画!

おしゃれなお店のフライヤーなんかでよく見ますね。
大阪の実店舗ではワークショップなどもよく開催されています。

以下、メイキングです!


このときはラムネ、朱、黄の3インクで刷ってもらいました。

このイラストのもとになった短歌はこちら↓

無理をしてキリンを一頭買いました 空から君を探すためです
http://honokatanka.com/



1:ラフスケッチ

Photoshopでざっくり。
今回は「緑地に赤いハート模様のキリン」
というビジュアルがパッと浮かんだので
緑系と赤系、その中間をやわらかく埋める黄色のインクを使うイメージ。
この時点では「この3色を使えばだいたいこんなかんじにできるかな〜」
とふんわり考えながら普通にお絵描きしています。

赤・青・黄色の三原色を使えばだいたいの色は再現可能。
むしろ2色くらいのほうが味は出るかもしれませんね。
どんな色の組み合わせにするかはお好みで。


2:版作り

普通のカラー原稿とは違って、
使うインクと同じ数だけ「版」のデータを作ります。
これはアナログの版画と同じですね。

朱インクの版だけを抜き出してみるとこんなかんじ。
入稿データはグレースケール。モノクロです。
作業しやすいように輪郭線と模様などは別のレイヤーにしておきます。

何色のインクをどれくらいの濃度で出せばイメージ通りに仕上がるのか?
モノクロのままだとわかりにくいですね。
そういうときは作業データの一番上のレイヤーに
使いたいインクの色をスクリーン100%で重ねるとわかりやすいです。

普通に朱色で絵を描いて最後にグレースケール変換すればいいじゃん?
と思われるかもしれませんが、
それではイメージとズレてしまうのです。
たとえば朱インクを100%の濃度で出したい!と思って
データ上で不透明度100%で朱色を塗って、
それをグレースケール変換したところで黒100%にはならないからです。

ちなみに広範囲の100%ベタ塗りや、微妙すぎる濃度差だとうまく印刷できないそうです(公式の注意事項をご確認ください)


3:色の重なり具合を確認

使用するインクの種類が少なかったり、
イラスト自体が単純な形だったらひとつのデータでも制作していけますが
多色刷りだったり複雑な形だったりだとレイヤーが増えすぎて大変です。
(どうせ最終的には色ごとの版データを作らなければいけませんしね)
なのでそういう場合はIllustratorも併用します。

こちらはIllustrator上に
朱インクの版と黄インクの版のpsdデータを配置して、乗算で重ねたもの。
こうするとどの版のどのあたりの濃度を調節すれば
理想に近づけるかすぐにわかります。
Photoshopでpsdファイルを上書き保存すると
リンクで配置していたIllustrator上の画像も更新されるので変化がわかりやすいです。
(PCの動作が重たくなるかもしれませんが…)

オレンジっぽくしたい部分 = 黄 + 朱
黄緑っぽくしたい部分 = 黄 + ラムネ
黒っぽくしたい部分 = 黄 + 朱 + ラムネ

となります。

公式で
Photoshop、Illustrator、pdfのテンプレートを配布してくださっているのでやりやすい形式で入稿データに仕上げます。
また基本的な原稿の作り方も丁寧に解説してくださっているので、サイトを眺めているだけでも本当に楽しいです!



4:データを納品して完成!

本当にイメージ通りに仕上がってびっくりしました!
三原色に近い3色を使うと、フルカラー印刷に近い感じになりますね。
細い線も予想以上に綺麗に出してくださいました。
(アナログっぽいガサガサ感が欲しい人はデータの方をちょっと粗めに作っておいたほうがよいやも?)

1枚ごとに版ズレやカスレが違う、デジタルなのにアナログ。
インクが同じでも刷る紙によってまた違う。
(左は薄く黄色がかった「レモン」、右はざらついた「わら半紙」)
おもしろいですね。



こちらは版分けなどせずフォトショで普通に塗り直したもの。
パッと見ではあんまり違いがわからないですが。

さらにもう1枚。
「種のない葡萄」は完璧な甘美か、後に続かない果実か?

こちらはレトロ印刷する時は4色刷りでした。
(tumblrに掲載しているものとは背景の葡萄の形も違います)
使ったインクはラムネ、紺、蛍光ピンク、黄色
特に蛍光色は液晶画面で見るのとは全然違うのでおもしろいです。

こちらも基本は同じですが、キリンより複雑な混色をしています。

やりようによっては水彩画のような繊細な印刷もできそうですね。



いかがでしたでしょうか。
2018年度は制作時間をあまりとれなかったのでレトロ印刷にリトライはできなかったのですが、年々インクや紙の種類が増えていて楽しそうだな〜またやってみたいな〜と思います。
限られた色数での表現は、同じく限られた文字数で広がりを感じさせる短歌とは相性がいいように思いますし
次の機会があれば2色刷りに挑戦してみたいですね。


ここまで読んでくださりありがとうございました!

2018年の「短歌と絵と vol.3」は8/20(月)までです。
こちらもよろしくお願いいたします〜


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