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創作怪談シリーズ

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夏の短怪談⑧「堕天の過程」

夏の短怪談⑧「堕天の過程」

それは前触れもなく空から現れ、落下の衝撃でダウンタウンを2ブロックと、かつては街の発展の象徴だった古ホテルを大袈裟に破壊し、幹線道路を横切って小さな建物をいくつも薙ぎ倒したながら倒れた。

それは(生物であるとすれば)生きている兆候は全く示さず、既に死んでいるように見えた。すぐに周囲への立ち入りが軍によって禁じられたため、未知の物体で構成されている機械だの軍の新型兵器の失敗作だの、それ自体が宇宙人

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夏の短怪談⑦ 「見えるものは人それぞれ」

夏の短怪談⑦ 「見えるものは人それぞれ」

勤めている高校で夜、最後の1人になってしまった時は帰る時に後ろを振り返らない。

まだ赴任したての頃に先輩教師に教えられた「ここで長く勤める」アドバイスだ。

ある日、採点業務に集中しているといつの間にか同僚は皆帰って、自分1人になっていた。一応、例のアドバイスがよぎりはしたものの、まだはねっ返りの新人で大学を出たばかりだった私はそんなアドバイスは新入りを脅かすための出まかせだろうと思っていた。

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天は我々を見放した【創作怪談】

天は我々を見放した【創作怪談】

大学の友人Tが2年次に実家を出て1人暮らしを始めた。大学から駅までの通りの途中にある綺麗なアパートで利便性もよく、仲間は皆羨ましく思う一方で、溜まり場ができたと喜んでいた。

引越しして数日経った頃に呼ばれて何人かで遊びに行った。まだ荷ほどきも住んでおらず、ダンボールがそこかしこに置かれた部屋でくっちゃべっていると酔いの回ったTが面白い物を見せるという。

そう言って窓を開けると向こう側に人ひとり

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