見出し画像

「サステナブル資本主義」が当たり前になるために

はじめまして、TAKA(@Murakami_Japan)です。この度、初の著書『サステナブル資本主義:5%の「考える消費」が社会を変える』が祥伝社より本日9月30日に発売されました。書店には明日10月1日からは大々的に取り扱いを開始いただけるようです。発売を記念して、もう少しウェットな書く動機とかそういうことをご紹介できればと思います。後半では無料公開の5回連載の最終回も収録しています。

未来が変わっていく予感

本に書いている通りなんですが、正直このままだとヤバイなという感じは日々持っています。なんというか、恐怖観念というか、なんとかしなければ。でも、やれるチャンスめちゃくちゃあるのに、とそんな風に思っています。

なんでヤバイと感じてしまうかというと、日本における様々なガバナンスの問題、なんというか世界に顔向けできないようなお恥ずかしい話とか、日々発生してしまっていて、「おい!日本、お前は本気なのか!」と感じることが多々あります。これじゃあヤバイ、なんかヤバイと思うのです。

そうして、地球環境がどんどんまずい方向に行っているのに、なんか全体として当事者意識が低すぎるようなそんな感じを常に受けています。まぁ、環境も少しずつ悪くなるんだけど、さすがに46億年も地球はあるんだし、そんなゆうても急に悪くならないでしょ。と、なんか病気が悪化してるのに、その状況を楽観しして生活習慣を変えない病人のメンタリティが充満しているような気がします。誰も、ほんとに当事者意識が持てていない

なのに、なんでやれる、と思っているのか。それは、ごく一部ではあるんだけど、この問題に対してものすごく問題意識を持っている、そういう層が間違いなく存在しているということ。私の周りには幸いなことにそういう人が多いかもしれません。そして、そういう人が間違いなく増えていく、そんな予感しかしてないのです。

世代交代が大きなうねりを起こす

これも本に書いている通りなんですが、若い世代の方が圧倒的に問題意識が高いと思います。大人になってから、急に環境問題がとかSDGsとか言われたのではなく、物心ついた時から社会がそんなことを言っているのが当たり前の、「サステナブル・ネイティブ」世代です。

世代交代の影響は極めて大きいです。持続可能な社会の実現においても、世代交代の波をうまく活用しない手はないのです。

この本の副題である『5%の「考える消費」が社会を変える』とは、この世代交代が大きなうねりの原動力になる期待も込めているのです。もう全員が同意しなければ社会が動かない時代ではありません。物事が複雑化し、当事者意識のない方も多く存在しているのが実態の社会です。でも、日々世の中はアップデートされていっている。それは、ごく一部のイノベーターやアントレプレナー、いや尖った考えや行動力をもったマイノリティーと言った方が良いでしょう、そういうごく少数のマイノリティが社会をどんどん良い方向に持っていっているのを私は日々実感しています。

持続可能な社会は、そういうマイノリティの熱量が動かすことで実現していける、そう確信しているのです。そうして、若い世代がどんどん増えていくことで、いつの間にかそれが「当たり前」になっていくのです。「サステナブル資本主義」は間違いなく当たり前になっていく、そういう思いを込めて本を書きました。

日々、私がどんな話をしているのか

発売日の今日、いつもの経営者との対話の時間がありました。つい先日、出資を発表したiGrid Solutionsの秋田社長です。細かい話は守秘性があるので割愛しますが、私は一人「中学生に浸透させるために教科書に載せてもらおう」とか「B2Bマーケティングや顧客への宣伝ではなく、国民を味方につけよう」、そんなことを連呼していました。(※詳細は後述参照)

iGrid Solutionsは未来社会を担っていく可能性のある一社です。オンサイトソーラー(店舗などの屋根の上)、VPP(バーチャル・パワー・プラント=仮想発電所)を手掛ける国内No.1の企業です。そして再生可能エネルギーを発電し、クリーンエナジーを販売し、クリーンエナジーを含めた電力グリッドを構成し、IoT・ソフトウェア・解析のテクノロジーを駆使して、グリッドの最適化を行う、未来のインフラを担う会社です。

私は出資におけるプレスリリースで以下のようなコメントをしています。

脱炭素社会の実現は、我々ヒト、また社会や自然環境、そして地球にとって望まれる大切なテーマです。アイグリッドは2004年から一貫してエネルギーをテーマに事業を展開してきた企業として、様々な経験やネットワークを有しています。難しい社会課題の解決には、本当の意味での社会理解が高まっていく必要があると考えていますが、足元急速にその機運が高まりを見せ、時代がアイグリッドに追いついてきています。持続可能な社会の実現に向けて、脱炭素社会の実現、更にはエネルギー問題、環境問題、気候問題の解決は地球全体で見ても最重要なテーマの一つです。これらの課題を事業ドメインとして展開していけるアイグリッドに大きな可能性と社会的意義を感じております。株主として事業拡大期をご一緒できることを光栄に思います。
アイグリッドは脱炭素社会の実現に向けてなくてはならない会社になると期待しております。一方、アイグリッドだけで解決できるような簡単なテーマでは到底ありません。我々もアイグリッドと協働しながら、多くのステークホルダーを巻き込み、更に社会的認知を高めながら、社会的価値の最大化を追求し、同時に事業成長を目指して参ります。

実は、グリッドの最適化の議論はもう大昔からされています。でも、まだ実現していないのですが、ようやく期が熟してきたと思います。でも、実際に社会インフラまで大規模に組み込むには、まだまだ反対勢力や細かい論点は多数残っているのも実態なのです。

だからこそ、私は「サステナブル資本主義」になっていく必要性を感じているのです。想像してみてください。もし、国民全体が以下のような図のイメージを理解しているとしたら。こんなシンプルでわかりやすいメッセージを、若い人たちが当たり前に思うようになれば、きっと社会に大きなうねりと力を生み出すに違いない、私はそう思っています。だからこそ、お客様は企業でも、国民全体にこのポンチ絵を発信して、皆が当たり前に思う状況を作っていくことが何よりも近道だと思っているのです。

だから、「中学生に浸透させるために教科書に載せてもらおう」「B2Bマーケティングや顧客への宣伝ではなく、国民を味方につけよう」と連呼していたのです。

(秋田さんから受け取った会社のビジョンを示すポンチ絵案)

スクリーンショット 2021-10-01 14.34.27

著書より抜粋紹介(5回連載最終回)

私のキャリアを通じて一貫して手がけていることは三つあります。一つ目が地球・グローバル視点であること。二つ目がテクノロジーやイノベーションに関わっていること。三つ目がM&Aや投資を通じて企業経営に深く関わっていることです。

現在私は「ベンチャーキャピタル投資(スタートアップと呼ばれる新興企業への投資)」を行なっています。ベンチャーキャピタル投資に加えて、「グロースキャピタル投資」という成長期の未上場企業への投資を行ない、経営に深くエンゲイジメント(関与)しています。

M&Aは異なる企業や事業を精査し、自社に取り込み、新たな組織や資金を通じて価値創造を行なう経営の取り組みです。グロースキャピタル投資も同じで、企業を精査し、資金提供を行ない、人材、テクノロジー、販売等の戦略投資を通じて、経営として価値創造を行ないます。

どちらもファイナンスと経営の視点で企業への働きかけを通じて価値創造を目指す点が共通しています。 カネ余りが世界の投資家の課題になっている資本主義の歪みを正そうと、「ESG(Environment〈環境〉、Social〈社会〉、Governance〈企業統治〉の頭文字をとった言葉で投資の際に長期的な成長を図るための観点)」や「SDGs (Sustainable Development Goals〈持続可能な開発目標〉)」を意識した投資マネーの動きの変化を通じた社会変革の議論が世界中で進んでいます。

これらの議論は、大学などのアカデミアをはじめ、経済産業省や金融庁、政府機関、企業経営の現場(中でも特にグローバル化を進め、多様なステークホルダーが存在する先進的な企業)でも積極的になされています。

最も活発に議論がなされているのが、機関投資家を中心とした資本市場や金融機関ではないかと思います。カネ余りを背景に、新たな投資テーマの模索が進んでおり、年金基金の運用など長期投 資を前提とする大手機関投資家ほど積極的に、投資リターンの最大化を実現しながらも、 社会変革を実現する投資の在り方の模索に取り組んでいます。

私たち全人類に関わる大事な問題であるにもかかわらず、ごく少数の投資家主導で物事 が進んでいるのが実態です。日常的に機関投資家に接する機会がない方には想像がつかないかもしれませんが、ESGやSDGsを対象にしたお金の規模たるや凄まじいものです。

何千兆円というお金が、 持続可能な社会を目指し、投資という形で後押しされようとしています。私もこの活動には心から賛同していますし、投資等を通じ、可能な限りできることを積極的にするよう意識して行動しています。

しかし、投資でできることには限界があります。現実には、その何千兆円ものお金の行き先がまだまだ十分ではありません。 「お金を使って社会を変えていく」という活動の実態が不足し、カネ余りの状況を生んで いることが世界中の投資家の大きな課題となっているのです。

今の資本主義のルールのままで、本当に持続可能(サステナブル)な社会が実現できるの だろうか、という問いがこの数年で日本でも急激に注目されるようになりました。

その背景には、2015年に国連サミットで採択された「SDGs」に沿って、徐々に 政府や金融業界、企業で取り組みが実現化し始め、国際目標の達成目途の2030年まであと十年を切ったことが影響しているでしょう。

目標達成期限が迫るにもかかわらず、ようやく本格的な注目を今集めているということは、決して簡単には達成できないという実感を、私たちは当然のように抱いているのではないでしょうか。

本書では、なぜこのまま資本主義のルールを前提にしていては、持続可能な社会の実現 が不安視されるのか、について触れていきます。そして、大変野心的な取り組みではありますが、どうすれば持続可能な社会が実現できるのかについても、国内外の数多くの経営や事業の失敗事例、成功事例を見てきた経験や、 資本市場、労働市場、消費市場という三つの市場をファイナンスの専門家、投資家、経営 者の立場で市場分析や仮説検証してきた経験から見出した枠組みで考えてみます。

お金に支配された社会ではなく、人が中心となる社会。その新しい資本主義の姿を本書 では「サステナブル資本主義」と名付けています

本書を通じて、一人でも多くの方に個の力の大きさと、未来に対する可能性を実感して もらうことで、現役世代だけではなく未来世代にとっても大切な「持続可能な社会」の実現について、一緒に考えていけたらと思います。

今後、世界の人口増加は終わり、新たな世代が大多数を占めるようになると、徐々に地球から貧困が消え、豊かさが充満していく社会が到来するかもしれません。

既存の資本主義を当たり前に捉え、他人事とするのではなく、自分事として向き合い、 新たな「サステナブル資本主義」を実現していくことができれば、何も恐れることはありません。社会は投資家がつくるのではなく、私たち一人ひとりがつくっていくものなのですから。

最後に&過去連載記事のご紹介

発売日に色々と書き殴ってしまいましたが、とにかく熱量高く書き出した本なので、是非みなさん読んでいただいたり、周りの方にご紹介いただけると大変嬉しいです。資本主義なんてタイトルに入っていますが、全く専門書ではありません。この記事に書いているようなことを、もう少しわかりやすく書いた、中学生にこそ読んでほしい本なのです。

事前に無料公開していた目次も是非ご参照ください。その他過去4回の連載記事、私が本を描くきっかけとなったnoteも貼り付けておきます。

追伸)写真は本のカバーを近所で撮ったものです。受け取った日に撮影しました。こういう木漏れ日が似合う、そんな本だと思っています。

面白いnoteあったよって、友人に紹介ください。励みになります。