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【強迫の治療】入院初日

『本人から入院したいと申し出があったと紹介状に書かれていましたが、今回は任意入院という形でよろしいですか』

まっすぐな瞳で「はい、任意入院がいいです」と答える娘とは逆に複雑な表情をする私(夫は廊下で荷物の番人)

任意入院だと、本人が「退院したい」と言えば退院できます。
それこそ「明日退院したい」と娘が言えば退院できてしまいます。

前回の入院は『医療保護入院』でした。これだと医師の判断と親の同意がない限り退院できません。(最大三ヶ月間)

できれば医療保護入院の方がしっかり治せそうで安心できるんだけどな💧

入院前診察

入院当日は病棟に行く前に必ず担当医師の診察を受けることになっています。娘は問診、私は家での娘の様子などを聞かれました。

「こだわりが強くなったので安心できる言葉がけをしていたらどんどんひどくなって、5分間隔で大丈夫かな?と確認されるようになりました。今は少し我慢してくれていますがそれでも多いです。」

医師は、強迫症の仕組みをわかりやすく説明してくれました。

医師の説明


ストレスや強烈な経験など何らかの原因(トリガー)から『強迫観念』が現れます

『強迫観念』は、突然脳内に不快や不安・恐怖を伴うイメージや言葉が浮かんで頭の中から離れなくなる事です。

※娘は「死」に関する強迫観念が多く、周りに相談できずにいました。

その不快な気持ちを消すために『強迫行為』が行われます。

例えば頭の中で「手が汚いような気がする」という不快な気持ちが突然わきあがったとします。それを消すために「手を洗う」という行為をします。

健全な人なら手を洗えば気持ちがすっきりして次の行動にうつっていきます。

しかし強迫症の人は「手が汚い」と感じて手を洗ったとしても、またすぐに不安になってしまい、手洗いを何度も何度も繰り返してしまいます。
ひどくなれば日常生活にも支障がでます。

不快な気分が治まらないのは『強迫観念を引き起こす原因(トリガー)』にあります。

『強迫行為』はあくまで『強迫観念が原因の不快さ』を消すために行われるだけで『強迫観念を生み出す根本の原因(トリガー)』にはまったく干渉していません。

根本の原因はそのまま残っているので、強迫観念は何度でも脳内に現れます。

「早く安心させてほしい」と確認行為をせずにはいられない。でも安心できる言葉を出してもらってもすぐに不安になる。娘さんはこの堂々巡りが止まらなくなっているのです。

強迫は長期にわたると予後が悪くなります。今の娘さんは5分おきに確認行為をしてきているのでかなり悪い状態と言えます。

日常生活をおくるのも苦しくなっているでしょう。
入院して疲れをとってしっかり治療していきましょう。

期間は20日ですが、状態が悪ければ退院を延ばすかもしれません。

やはり安心できる言葉がけが娘を悪化させていました。

改善するなら強迫観念を引き起こす原因を探す必要がありそうですが、娘の場合は心当たりがありすぎるというか多すぎてわけがわからなくなっているというか・・。

この時の娘は入院期間が延びるかもと聞いてこの世の終わりが来たような顔をしていました。

今後の接し方

「退院したらどう接していけばいいですか?」
一番心配なことを先生に質問しました。

まず最初は『確認強迫』から落ち着かせる必要があります。人を巻き込んでしまっていますから。

まずは娘さんが意識して少しずつ確認行為の回数を減らしていくことが大事ですね。我慢することになるのでいきなりではなく少しずつ。

確認される方もはっきり安心させる事は言わないように意識する。

例えば、入院中に電話やLINEで娘さんが「大丈夫かな?」などと確認してきてもすぐに反応しなくてもいいでしょう。電話は5回に1回しか出ないとかLINEはしばらく未読のままにするなど、娘さんが確認できる状況を減らしていくのです。

「(確認しなくても)何も悪い事は起こらない」ことを何度も体験させてわかってもらうのです。

退院後は難しいかもしれませんがなるべく安心させないことを意識してください。

治療に一番必要なのは本人の治したいという意思です。つらい状況でも減らそうとがんばっていたようですから娘さんには強い意思があるのでしょう。

ひとつ気を付けてほしいのは、強迫観念は誰でもあるものですから完全になくそうとは考えないでください。

『汚いと思ったら手を洗う』『鍵をかけ忘れたら確認する』などは普通に誰でもやる事ですからね。

私が相当不安そうな顔をしていたからでしょうか。
「よろしければこちらのサイトも参考にどうぞ」とメモをくれました。

安心させない言葉がけがものすごくハードルが高い・・
ハードルというより超高層ビルの壁。
乗り越えられる自信がありません💧

いよいよ病棟へ

入院前診察が終わり、入院病棟に案内されました。
荷物のチェックをしてもらった後、娘は荷物を持って病室に行く事に。

娘は半泣きで「面会・・必ず来てね」と言い残し、迎えにきた看護師さんに連れられていきました(ドナドナ)

事務手続きを済ませて帰ろうとすると、娘を病棟内に連れていってくれた看護師さんが来て娘の様子を教えてくれました。

「荷物をおいたらすぐにお風呂に入りに行きましたよ」

夫はボソッと「きりかえ早いな」とつぶやきました。
まぁ入院2回目でいろいろわかっているからね。

わたしが一番心配しているのは病棟の患者さん達と馴染めるかどうか。

何だか「苦手な人がいるからもう退院する」とか言いだしそうですごく不安でした。

残念ながらその予感は的中してしまいますが、それはまた2日目のお話で。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
少しでも参考になれば幸いです。


2日目はこちらです


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