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黒人冷遇はいつ終わる?カントリー系ラジオから排除されるBeyonceのニューシングルたち

とにかく日本人としては一体何が問題なのか、なぜこんなことが起きるのかは想像がし難い話ではあるが、またもカントリーミュージック文化が抱える人種差別の根強さが露呈する事件が発生した。

Beyonceが新たにリリースしたカントリー調の2曲のニューシングル『Texas Hold 'Em』と『16 Carriages』を、カントリー音楽を専門とするラジオ局に多くのファンがこの2曲を流すよう呼びかけているにもかかわらず、一部の局はそれを拒否していると言うのだ。

Country Music Stations Already Refusing to Play Beyoncé's Country Songs | Complex

オクラホマ州のKYKC 100.1 FMで 『Texas Hold 'Em 』を流してほしいとリクエストしたあるXユーザーは、同局から「私たちはカントリー・ミュージックの放送局なので、ビヨンセの曲はかけません」という否定的な返信を受けたという報告がある。

Beyoncé - TEXAS HOLD 'EM (Official Visualizer) (youtube.com)

ただ、この後も同曲を流すようにというリクエストがファンから殺到したことで、KYKCは態度を改め、ローテーションに加えたことで話は集結した。

カントリー・ミュージックとして黒人発祥の作品が受け入れられないことに対して物議を醸してきたのは、これが初めてではない。大昔にnoteでも扱ったように、近年で最も大きくカントリー音楽世界において黒人冷遇の問題が湧き立ったのは、Lil Nas Xの『Old Town Road』の騒動だろう。

Lil Nas X“Old Town Road”の登場とRDR2(レッド・デッド・リデンプション2)の関係(7千字)|satoruyos (note.com)

こういった話題が世間を沸かせるたびに考えるべきなのが、結局のところ「音楽ジャンルとは一体何か?」という問いである。カントリーらしさとは、黒人音楽らしさとは、誰がどのように決めているのか、主体的に考える必要がある。

アーティストの主体性が尊重されるべきなのはもちろん、ラジオ局も権威あるメディアである以上、自分たちが考える「カントリーらしさ」を尊重したいという気持ちも汲み取るべきだ。あまりに突飛な行動は、ラジオ局としては権威を失墜させリスナー離れ、ひいては広告主離れも招いてしまいかねないからである。

人種問題はアメリカの音楽文化を必要以上に難しくしている反面、それがアメリカ音楽文化を育む力となっている側面もある。とはいえ人種差別的なあらゆる言動は時代錯誤であり暴力的な振る舞いであり、発信力を有するマスメディアはその責任を重く受け止めるべきである。

どんな言葉や態度が差別に発展しかねないのかを理解できる感度の高さを育む努力は、絶え間なく続けていかなければならないのだ。


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