最近の記事

引き算を二回したら悲しくなった話

 つくづく私は人に興味のない人間だと思う。それは身内に対してもそうで、両親の生年月日すらぼんやりとしか分からない。ただそれだと生命保険の手続きなんかに困るので、スマホのメモ帳にメモってある。なんて薄情なのだろうか。  もしかしたら、反抗期真っ只中の10代終盤に親元を離れ、遠くの地で暮らし始めたのも関係しているのかも知れない。物理的にも精神的にも遠い故郷、両親と特段仲が悪いとかそういうことはないが、思春期特有の親が煩わしいあの感じがずっと続いているような気がするのだ。  年末年

    • 逆スノースマイル

       冬の寒さが幾分和らいだ一日、着ていく服に悩んだのは急に暖かくなったから、それだけではなく女性と会う日でもあったからだった。ベージュのコーデュロイパンツに紺のシャツというカジュアルとスマートカジュアルの間ぐらいの服装に、コートを羽織って出かける。  午後七時、約束の時間の五分ほど前にお店に到着し、予約名を告げると、カウンター席に案内された。目の前に薄い板が二枚置かれていて、片方にはドリンクメニュー、もう片方にはフードメニューが書かれた紙が貼り付けてあった。メニューを見ながら、

    引き算を二回したら悲しくなった話