見出し画像

ムスコの名前〜名前の音が性格をつくる?

23年と半年ほど前。
私たち夫婦は、もうじきこの世に生まれ出るわが子の名前を考えていた。

全くの白紙からの共同プロジェクトである。
夫も私(当時)もデザインの仕事をしていたので、イメージプランを立てるのは慣れているはずなんだけど、こればっかりはどうすりゃいいのかわからない。

ふと、高校時代のことを思い出した。
大好きだった社会の先生が教えてくれたこと。

「名前は”音”によってその人の性格を左右する」
生まれてから何度も呼ばれる自分の名前。
聞いて育つうちに、名前の最初の音がカ行やタ行など硬い音だと性格もキツくなり、マ行やナ行だと柔らかく、サ行だと爽やかな性格になる。

という統計があるらしいんだな。
そこからコンピューターが弾き出した理想的な名前というのがあって、それが
「アサナ」
らしいんだよな。

そんな話を、嬉しそうに話す先生の顔と共に思い出したんである。
全世界のアサナさん、その親御さん、お心当たりはあるだろうか。

で、私たち夫婦は心地よい音の響きを探しながら名前を探った。
なんとなく行き着いたのがハ行だった。
「ハ」といえば「(細野)晴臣」一択である。
二人とも「おお!」と感嘆の声が出たが、そのままつけるのは芸がない。
でも、もう私の頭には「ハル」が固定してしまっていた。

ハル
なんとも暖かく明るく優しいイメージの響き。
「陽」をハルと読むことも知った。
いいじゃん。
お日さまのようにみんなをあったかくしてくれる、優しくて大きな存在。
そんなこんなでムスコには「ハル(陽)くん」と呼ばれる名前が付けられた(本名は一応伏せとく)。

「陽」をハルと呼ぶ名前はそのころはまだあまり見かけなくて、大繁殖したのはその数年後のこと。
現在ではスーパーやら知り合いの会話の中やらあちこちで「ハルくん」「ハルちゃん」がいるが、「陽」使用率はどのくらいなんだろうか。
それこそ統計をとってみたい。

残念ながら初めての人にはハルと呼んでもらうことができなかった。
読み方があやふやだと優柔不断な子に育つって聞いたけど、失敗したか、これ?と焦ったこともあった。
「もっとカッコよくて強そうな名前が良かったなあ」
とある日ムスコが呟いたときには、ちょっと心が折れた。

子供のころ、ムスコは友達と取っ組み合いの喧嘩をすることもなく、ほんわかまったりと過ごすことが多くて、遊びに行った先のママからも(ときどきパパからも)「ハルくん、癒されるわ〜」と言われることが多かった。

小学校の6年生のときの担任の先生が、ムスコのことを
「人と人を結びつける力を持っていると感じます」
なんて評価をしてくださったときは、本当に嬉しかった。
成績が良いとか運動ができるとかと同じように、人として大切なことなような気がして。
それが名前のおかげなのかどうかはわからないけど。

実は夫が「画数が良くない」と言って全く別の名前に変えようとしたことがあった。
友人のお母さんが姓名判断に詳しいとかで、考えてくださったそうな。
全くピンとこないその名前を付けられそうになって、私は慌てて阻止した。
生まれてから毎日この子を呼ぶのは私たちだ!
それを他人に委ねてどうすんだ!
って。
もしその名前を受け入れていたら、私たちの子育ては変わっていたんだろうか。
息子の人生は違っていたんだろうか。

正直名前なんてただの記号であるわけだけれど、そこにはその子に対する親の思い、周囲の思いが込められている。
少なくとも私にとっては、わが子ができれば幸せに人生を全うしてほしいという願いを込めた大切なものだ。
あと50年もしたら、日本中に「ハル爺」が大量に現れるだろう。
うちの「ハルくん」はそのさきがけである。

それまでもその先も、どうぞこの世が平和でありますようにと願ってやまない。

#名前の由来


この記事が参加している募集

名前の由来

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?