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《後編》【トランスジェンダーの想いはみんな一緒!?】”ちがい”を知ろう!ふむふむウェビナー #04

みなさん、こんにちは。
”ちがい”をたのしむ「ふむふむ」です。
今回は2023年10月1日(日)14:00~15:30に開催された『【トランスジェンダーの想いはみんな一緒!?】”ちがい”を知ろう!ふむふむウェビナー#04 』のアーカイブ(文字起こし)の《後編》です!
《前編》はコチラ ↓↓↓

同じカテゴリーに属し、共通点が多いお二人のトランスジェンダー男性。
《後編》では、戸籍上の性別を変更した現在の「性」に対する心境は?
そして、さまざまな苦悩を乗り越えてこられたお二人ならではの”ちがい”をたのしむコツとは?についてお伺いします。
当事者だからこそ語れる、貴重なお話《後編》スタートです!

インタビュアーは【Yuko】、ゲストは【こうすけさん】【げんのすけさん】です。


カミングアウトと家族の受け止め

【Yuko】
お二人とも同時期、高校生のときに性自認が男性であると自覚されたということですが、周囲へのカミングアウトはいつ、どのようにされましたか?

【こうすけさん】
自分自身を「性同一性障害だ」と思う前にインターネットが普及してきたこともあり、個人で『前略プロフィール』のようなホームページを開設することが流行っていて、自分でもいろいろと調べてみたり個人的に連絡を取ってみたりして相談をしていました。
高校2年生くらいから、そういった場を使って当事者の人たちとの交流が一年くらい続いたあとに高校2年生の終わりにリアルで友達にカミングアウトしました。
その後に先生、そしてその時期の最後に母にカミングアウトをしました。

【Yuko】
インターネット上の人とは実際に顔を合わせないので相談しやすかったですか?

【こうすけさん】
そうですね。
その人が書いている悩みに共感できるところがあると、見ず知らずの人だけれど勝手に安心感を抱いていました。

【Yuko】
お友達、先生、そして最後に親御さんへのカミングアウトをしたということですが、お友達や先生にカミングアウトをしたときはどのような反応でしたか?

【こうすけさん】
友達はさらっと「あなたはあなただからね」という反応で、カミングアウト後も特に何も変わらなかったです。
先生方はとても重く受け止めてくれました。

【げんのすけさん】
僕も高校2年生の終わりにカミングアウトしました。
ただし、上戸彩さんが演じていた「性同一性障害」とは”ちがう”という想いがあったから、まずはインターネットで得た情報で自分自身の考えを一度修正する必要がありました。
インターネットからリアルな情報を得ることで「性同一性障害」の人とはどのような人、どのような状況なのかをしっかり調べました。
そのうえで「やはり自分は性同一性障害なのだ」と認識しなおしてからカミングアウトをするというステップを踏みました。
そうでないと、カミングアウトしてしまったら取り返しがつかないと思って慎重になっていたし、自分で確信を持って自分のことを表現することができなければならないと感じていました。
まず最初に学校の先生と友達にカミングアウトをして、僕も最後に母親に言いましたね。
やはり親に言うのはかなりハードルが高かったので、ある程度周囲に伝えて、安心できる環境を整えてから母親に言いました。
僕もインターネットで当事者同士の交流をしており、そのとき【こうすけさん】と知り合いました。
そこからの付き合いになります。

カミングアウトのハードルはやはり高くて、「男性として生きられる」という安心感を得られる反面、これから会う人すべてに毎回言わないといけないのか…という疲れはすでに感じていました。

【Yuko】
まだホルモン治療を始めていないので、見た目に変化がない状態ですよね?

【げんのすけさん】
そうですね。
ホルモン治療を始めるためにも、身内を含めて一定数の人に理解をしてもらう必要があると思っていました。
そのために外堀を埋めるステップを踏んでいたのですが、その作業が思いの外難しかったというかエネルギーが必要だったので、「これを続けていくのか…」と思っていました。

【Yuko】
お二人に共通しているのが最後にご家族へカミングアウトしたということでしたが、ご家族の当時の受け止めや現在のご関係はいかがですか?

【こうすけさん】
家族の中ではまず母にカミングアウトしました。
学校の先生から「早く親に言わないといけない」と言われたこともあり、少し焦っていました。
ちょうど友達の家に泊まりに行く予定があったので、その前日に手紙を書き残して、そのまま友達の家に行きました。
友達の家に行っている間に母からメールがあって、そのときは受け止めてくれているような内容でした。
その後も含めて対面で話をすることはないままだったのですが、ホルモン治療を始めたくて母と一緒に病院に行った際に、母親から「病院に行って治療をすれば治るんでしょ?」と言われ、自分が思っていた理解と違っていたということが分かったんです。
僕は診断書が欲しくて、男性になるためのホルモン治療をしたいという想いで行ったのに、母は「それは理解できない」「やめてほしい」という感じでした。
僕自身うまく説明できなかったこともあり、カミングアウトしたことで関係性が悪くなったとまではいかないまでも、母と僕の間には溝ができてしまいました。

【Yuko】
手紙では一方的にお伝えしたものの、直接コミュニケーションをとっていなかったこともあり、なかなか”真の理解”にはたどり着かなかったということですね…。

【げんのすけさん】
僕は直接母親に言いました。
カミングアウトすると決めた日の前の晩から「朝起きたら言おう」と決めていました。
そう決意しないと(母親には)言えないなと思った記憶があります。
当時、僕と母親は同じ布団で寝ていたのですが、ほとんど寝られず、朝早くからギンギンに目が覚めてしまっていて。(笑)
母親から「学校行かんの?遅刻するで」と言われたとき、(母親の)顔を見る勇気もなく、布団に入って寝た状態のままカミングアウトしました。
「自分は、男やと思うねんな…」と。
その後、母親からすぐに返事があり、「多分勘違いだよ」と言われた記憶があります。
というのは、僕が幼少期の頃から母親はあえて性別にとらわれない育て方をしてくれたこともあり、友達のお母さんから「ナミちゃん(げんのすけさんの以前の名前)は男の子みたいだね」と言われたとき、僕の母親は「そうやねん」と言ってむしろ喜んでいたみたいなんです。
自分(母親)がそういう風に育ててきたために、この子(げんのすけ)は勘違いをしてしまったのだと思い、「勘違いだよ」との第一声だったんです。
そこから何カ月かは盛大に揉めました(笑)
僕は僕で「申し訳ない」、「でも勘違いではないんだよ…」という気持ちだったし、母親は母親で「私の育て方がいけなかったのかな…」、「この子(げんのすけ)が男の子だと言い出す気持ちもわかるけれど…」という感じで、お互い心のバランスを取るのが難しく、高校2年生の終わりの時期は結構ド派手にやりやっていました。

【Yuko】
げんのすけさん】はものすごい勇気を振り絞ってカミングアウトしたけれど、もしかしたらお母さんには「まさか自分の子どもが…」という想いがあったのか、「勘違いだよ」という(お母さんの中での)結論になってしまい、揉めてしまったのですね…。
「ド派手に」ということは、結構な言い合いになったということですか?

【げんのすけさん】
胸ぐらのつかみ合いもありました。
ただ、自分自身のアイデンティティにかかわるので、だんだんと顔を突き合わせて話をするのが怖くなってきて、徐々に母親とできるだけ顔を合わせないで済むような生活スタイルに切り替えていました。

【Yuko】
我が子から突然カミングアウトをされたら混乱もするでしょうし、特に【げんのすけさん】はひとり親家庭で育ってこられたということなので、お母さんも誰にも相談できない、誰に相談してよいかわからないという不安や葛藤、混乱を抱えていらっしゃった可能性もありますね。
お二人のお話を伺って、受け止めるのが一番難しいのもやはりご家族なのかなと改めて感じました。

では、ここでいただいたご質問にお答えいただきたいと思います。
《わたしは金八先生のドラマを見ていましたが、内容はほとんど覚えていません。あのドラマをそんな風に見ていた人がいたんだな…と思いました。》

わたしも正直、まったく覚えていません(笑)
何も考えずに見ていた自分が恥ずかしいですが、まさかあのドラマを「脅威」に感じながら見ていた人がいたなんて驚きました。
ドラマの内容も詳しく覚えていらっしゃいますか?

【げんのすけさん】
覚えています。
確か、上戸彩さんが転校初日にお母さんと一緒に学校に来て、その時は長いスカートを履いていたんですね。
お母さんがその時に「着替えを他の生徒と一緒にさせたくない」「ズボンを履かせたい」と言っているシーンがあったんですが、その理由が身体に傷があるからということだったんです。
その時点で僕は「ん?」と思っていましたが、そのうちに性に対する違和感から申し出ていたということが分かってくるんです。
あと、声が嫌で自分の喉をフォークで刺すとか、身体に対する嫌悪感から自傷行為をするという描写が多かったんです。
もちろん、自傷行為をしてしまう当事者がいるというのも今となっては理解しているし、僕自身の経験も含めてよくわかる部分ではあるのですが、当時はそこまで知識もなかったので、「え?」と思いました。
僕も自分の身体に対する嫌悪感はありましたし、スカート履きたくないとか、前半は共感できる描写が多かったのですが、後半になって過激なシーンが増えてきて、「え?フォークで自分の喉刺す?」みたいにだんだん共感できなくなっていきました。
「性同一性”障害”」という名前がついているから、こういう人が”障害”の人で、こういう人にとって手術が必要なんだ…と思っていました。
だからこそ、自分は「性同一性障害」ではないし、男性の身体に変更することはできないと思っていました。

【Yuko】
確かに医学的な診断名ではありますが、”障害”と名前がついているものが自分に該当するかどうかというのはとても大きな問題になり得ますね。

もうひとつコメントいただいております。
《(カミングアウトについて)会う人、会う人と毎回就職面接をしているような不安や緊張があるのかなと感じました。》

わたしも含めた非当事者には想像を絶するところではありますが、たとえていうならこういう感じですか?

【こうすけさん】
そうですね。
カミングアウトの捉え方も今となっては高校生当時とはちがいますが、当時はやはりコミュニティーが狭いので、「この人にカミングアウトしたのなら、あの人にもしないと話が通じないな…」ということがありましたね。
また、学校指定の制服ではなくジャージを着ているのは校則違反でしたが、それも説明しないといけないのかな…とか、カミングアウトしたところで受け入れてもらえるかどうかわからないのに毎回言わないといけないのは怖かったです。

【Yuko】
毎回ストレスや苦痛を抱えながらたくさんの人にカミングアウトをしていかなければならないのですね…


性別変更後の今とこれから

【Yuko】
今はお二人とも戸籍を男性に変更して、社会的にも男性として生活しておられるのですが、現在社会生活を送るうえでお困りのことはありますか?

【げんのすけさん】
今のところは特にないです。
ただ、例えばトイレのように、生活に工夫がいるところはあります。
僕は戸籍を男性に変更しているので、もちろん男性用トイレを使います。
男性用トイレには小便器はたくさんあっても個室が1つか2つしかないところが多いし、男性が個室を使われるということは長くかかることが多いので、僕が小用を足したいなと思ってもなかなか入れないということがよくあります。
じゃあ多目的トイレを使えば?と思われるかもしれませんが、僕自身もまだまだ多目的トイレは身体の不自由な方が使うというイメージがあって、はたから見れば特に何もない僕が多目的トイレに入って行くのをよく思わない人もいるのではないか、僕よりも必要としている人の迷惑になるのではないかと思ってしまってなかなか使えないです。
だから、特にお昼前後は混むことが多いし、トイレを使うときはだいぶ早めに行っておくよう気をつけています。

あとは今のところないですが、僕の場合は外性器に何かがあれば、婦人科に行く必要が生じることもあるかと思います。
保険証も男性に変更しているし、説明が必要だなと思うところもあります。
だから、今のところ困っていることはないですが、工夫が必要だなと思うところはあります。

【Yuko】
戸籍を男性に変更してよかったと感じておられますか?

【げんのすけさん】
概ねそうですね。
最近はあきらめていたこともあり、性別欄の「女性」に○をつけることにもそんなにストレスを感じていなかったですが、改めて書類上も正々堂々と男性に○をつけれるし、ストレスフリーになったので変えてよかったなとは思います。

【Yuko】
やはりストレスからの解放というところが大きいのですね。
【こうすけさん】はお困りのことはありますか?

【こうすけさん】
僕はトイレが近い方なんです。
今は建築の現場で働いているのですが、建築現場では男性トイレの個室がなかったり、立小便できるようなただのバケツが置いてあるところが多いので、トイレに行きたいときはコンビニかスーパーに行くか、現場が山のときは車で何回も連れて行ってもらわないといけないので、特に冬は困るなと思っています。

あとは自転車が好きなのですが、カミングアウトしていない友達と長距離でを自転車で走ったときに「温泉行こうよ」となって、「僕は共同のお風呂に入れないので…」と断らないといけないことがありました。
仮にカミングアウトしていたとしても一緒に入るのが怖いな…という想いもあるので、本当は温泉が好きなのですが、断らないといけないのは困ったなという感じです。

【Yuko】
ニュースでも見聞きするように、やはりトイレとお風呂なのですね…。
性別適合手術を受けられたとはいえ、男性の身体をもって生まれた方と”完全に一緒”というわけではないと思いますので、苦労も絶えないのですね。
【こうすけさん】は、戸籍を男性に変更してよかったと感じておられますか?

【こうすけさん】
戸籍を変更できたのはすごくよかったと思います。
大学に入ったときに、形式上「女性」として扱われていたのですが、やはりそこにはストレスを感じていました。
男性に変えることで、そのストレスからは解放されましたし、周りに説明する必要もなくなったのもよかったです。

【Yuko】
だいぶ理解が進んできたところもあるかと思いますが、便宜上「男性」「女性」のどちらかに分けられ、ストレスを抱える部分も多いかと思いますので、そういう意味ではよかったということですね。

では、もう少し突っ込んだお話になりますが、今、改めてご自身の性別を表現するならどのような表現になりますか?

【こうすけさん】
場によってちがいますが、「男性」と表現することが多いと思います。
ただし、親しい人にはあえて「男性」であることを主張するようなこともないかなと思います。
人にはグラデーションがありますし、僕自身は”女性的”な部分を排除した結果「男性”寄り”」になっているので、振り切って「男だ」というところではなく、自分の居心地のよいポジションという点で「男性”寄り”」だという説明になるかなと思います。

【げんのすけさん】
あまり聞かれることはありませんが、性表現としては男性です。
情報として付け加えて言う際はトランスジェンダーであるということを言います。
昔は「男性らしい」と言われることが嬉しかったし、自分自身のアイデンティティーの問題にかかわるところでもあり、こだわっていたところがありましたが、今はもう見た目も男性ですし、あまり性表現に縛られることを嬉しく思わなくなってきました。
自分自身が性に縛られて生きたくはないなという風に感じるようになりました。

【Yuko】
むしろ性に縛られずに生きていきたいという、お二人ならではのご回答ですね。
性に対するお考えについて言葉を尽くして説明ができればよいですが、なかなか一言で表現するのが難しいですね。


”ちがい”をたのしむコツとは?

【Yuko】
では、最後の質問になります。
お二人にとって”ちがい”をたのしむコツは何ですか?

【こうすけさん】
まず、なぜ「たのしむ」のかなということを考えてみました。
僕は好奇心もあって”ちがい”をたのしむことができるタイプなのですが、”ちがい”をたのしめなくなったときに争いや分断が起きてしまうのかなと思っています。
そんな時こそ、どういう風にたのしむかを考えました。
人はいろいろな自分なりの「眼鏡」をかけて世界を見ていると思うのですが、”ちがい”を感じたとき、相手ではなくて自分自身がどのような「眼鏡」をかけているのかに注目する、またはどうして自分はこの「眼鏡」をかけているのかな?と考えてみることがだいじなのではないかなと思いました。

【Yuko】
その「眼鏡」をかけることを選択したのは他でもない自分自身なので、なぜその「眼鏡」をかけることを選んだのかという、内向きな視点を持ってみるということですね。
すごく深いご回答ありがとうございました。

【げんのすけさん】
実は、僕がふむふむを作って、キャッチコピーを”ちがい”をたのしもうにしましたし、ウェビナーで毎回ゲストの方に”ちがい”をたのしむコツとは何ですか?という質問をしているのですが、これはもう苦行ですね(笑)
この答えは時が経てばその時の経験や知識で変わっていくものなのかなとは思いますが、”ちがい”をたのしめるうちはいいと思うのですが、僕たち自身のように性別違和にしてもそうですが、”ちがい”をしんどい、たのしくないと思ってしまうときがあるかと思います。
そんな時にどう乗り越えてたのしんできたかというと、”ちがい”という差があるからこそリスペクトができるのかなと思います。
みんなが同じ見た目、同じ能力、同じ思考だったら差は生じないし、リスペクトができる環境もないのではないかと思います。
いろいろな差があるからこそ、誰かが壁にぶつかったときにその人を助けてあげられる人が出てくると思うし、だからこそ多くの人が生き残っていくことができるのかなと思います。
自分にない能力や考え方、視点を持っている人をリスペクトできることがたのしむコツかなと思います。
素直に”ちがい”をリスペクトして自分の世界を広げながらたのしむということをしていきたいなと思っています。

【Yuko】
ひとりひとりのお考えや経験を尊重しながら共存していくことがたいせつなのですね。

本日はお二人とも、貴重なお話をいただきありがとうございました。
ご参加くださったみなさまもお疲れさまでした。ありがとうございました。



二人のトランスジェンダー男性とのウェビナーいかがでしたでしょうか?
とても内容の濃いお話でしたが、実はウェビナー中にお話しできなかった《番外編》もあります!
アンケートでいただいたご質問にもお答えしていきますので、ぜひこの後の《番外編》もお楽しみください^^


ウェビナーを見てみたい!と思ってくださったそこのアナタ!
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