見出し画像

【書評】シン・共産党宣言(松竹伸幸 著 文春新書)

11代目伝蔵書評100本勝負40本目
著者である松竹伸幸氏が本書の出版を理由に共産党から除名処分(本人からの異議申し立て中)を受けたというニュースから興味を持ち手に取りました(僕自身は党員ではないし、共産党に投票したことはない)。
結論から言えば、本書が除名の理由ならば本書を読んでいないか、日本語を解しない人であると思われます。著者は共産党員であることに誇りを持ち、共産党愛に溢れる人物であることが一読すればわかるからです。本書の内容が「分派活動」とするならやっぱり共産党内には言論の自由がないと断定せざるを得ません。

松竹氏によれば共産党内では異論に溢れ、多様な意見があるとしています。それは僕のような部外者からは共産党の意外な一面です。よく言われるように共産党は「民主集中制」により、多様な意見を吸い上げたのち、決定事項については一枚岩で臨むことになっています。松竹氏が問題視しているのは多様な意見がないことではなく、その議論の過程が外からは見えにくいことです。それを改革していくための一つとして「党首公選制」を主張しているのです。その筆致は極めて冷静で、慎重です。むしろ僕はそこが不満なくらいで、無責任な外野としてはもっと過激な言説を期待していました。それなのに共産党のエース(とされる)田村智子参議院員は除名処分に「時代錯誤」と批判した毎日新聞社説に対して「見識を欠いている」と反論します。さらに松竹氏の著作に対しては「党に対する攻撃と攪乱(かくらん)以外のなにものでもない。怒りさえ覚えた」と切り捨てます。エース田村の発言は重要ですから、マゴビキですが、新聞報道(産経新聞)を少し長めに引用します。

私も松竹氏の本を読んだ。率直な感想は、党の規約を認めることができず、党の綱領の『核心中の核心』に対して、これは認められないというふうに述べているわけだ。『核心中の核心』というのは、私たちは現在、日本が必要とする民主的な改革は日米安全保障条約の廃棄であると、在日米軍の撤退を求めるんだということは、私たちの綱領の中の核心部分だ。対米従属、アメリカ言いなりの根幹に安保条約があると。しかし、松竹氏は本の中で『安保条約の堅持』『在日米軍は抑止力』を党の基本政策にすべきだと、この主張で党の安全保障政策の転換を主張して私は党首選挙に出たい、だから党首公選制をやれという」

「ここまでくると率直に申し上げて党員としての立場を失していますよねと。だって規約も認められなくて、綱領の核心部分が認められないわけだ。そういう方はなぜ離党をしなかったのかなと。認められないということなのに、党員であるということを売りにして党外でもって騒ぎ立てようと。これのどこが共産党のことを考えて、善意で意見を述べているのだろうかと。党員としての立場もないのが明らかな人が、『私は党員である』ということを売りにして、党の外で騒ぎ立てるということは、まさに党に対する攻撃と攪乱以外のなにものでもないと率直に感じた。怒りさえ覚えた」
産経新聞2月10日

申し訳ないけど、ここからは、ちょっと酔っ払いというかヤクザな物言いになることをお許しください。

田村チャンさあ、「シン共産党宣言」をどう読んだら、上記のようなコメントになるわけ?早稲田一文卒よね?申し訳ないけど、読解力ゼロ?松竹さんは「在日米軍は抑止力」なんて主張してないよ。むしろ「核抑止力抜きの専守防衛」という提案はしているけど。はっきりいって松竹さんの主張をアメリカは認めないと思うし、それを実現するのは茨の道だけど、共同政権を実現するためには国民にアピールする防衛政策を確立することは避けて通れない道でしょ?もう一つ教えてあげるけど、松竹さんは綱領や党則を読み込み、それに反しないようにかなり慎重な書き方をしてるって気が付かなかった?それなのに『怒りさえ覚えた』って田村チャンの怒りの導火線どうなっているのか、心配するよ!あっそか、やっぱりアレか、本書の中で田村チャンの名前を出したのがダメだった?分かっていると思うけど、松竹さんは田村チャンにむしろ同情しているんだよ。「ウクライナに防弾チョッキを」って至って普通の感覚だと思うよ。それを党から怒られて?翌日撤回したよね。それを松竹さんが掘り返したもんだから怒りを覚えたってか?「せっかくみんな忘れかけてんのに、なんで核のよ!」って感じ?人間らしくねいいけど、新聞での発言はないわー。もしかして踏み絵踏まされてんのかしらん?「隠れキリシタンじゃないなら、キリスト像を踏んでみろ」と言われて松竹批判?それならもちろん同情するのはヤブサカデハナイけれどね。

 松竹氏の主張が全て腑に落ちたわけではありません。しかし「核抑止力によらない専守防衛」とそのための「非核武装地帯条約」は現状の集団的自衛権まで認める風潮に十分対抗できる、または対案たり得ると思います。党名変更やその他政策転換の提案まであり、かなり踏み込んだ内容ですが、不満はやはり「民主集中制」について疑問を呈しながらも具体的な提案がないことです。ただし、そこまで書くと党則違反となるため、躊躇したのかもしれません。いずれにせよ、松竹氏の処分の行方に注視したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?