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8.1 パインの日・島の日

南の島の大王が

パインを作りたいと騒ぎはじめた

南の島の民たちは

皆のんびりしているのが好きなので

新しいことを始めるのを億劫がったが

大王が言うのだから仕方がないと

とりあえず島で一番大きなヤシの木の下に集まった

南の島の民たちは

パインを食べたことがない

何やら仙人みたいなじいさまの持っていた文献で

黄色くて甘酸っぱいとの情報を得た

仕方がないので酸っぱい実と甘い水と黄色の花びらを混ぜて

何だかそれっぽいジュースを作り

南の島の大王の元へ持って行ったが

大王は一口食べてひっくり返り

突然寝込んでしまったのだった

慌てた島の民たちは

島の真ん中にこんもりと盛り上がった

お山のてっぺんまで登って夜を待った

この島では流れ星に願いをかけると叶えてくれることになっているので

皆々が口々にパインをくださいと唱えた

流れ星は一粒ずつがパイン飴となって山の頂に降り注ぎ

キラキラ光るそれを

南の島の民たちは

ヤシの葉っぱで作ったカバンに詰め込んだ

そこそこ溜まったのを見計らって

民たちは急ぎ足で山を下りた

熱を出して唸る大王の口元に

丸く穴の空いたパイン飴を滑りこませると

大王はすやすやと穏やかに眠りについた

それ以来この南の島の特産品は

パイン飴になったのだった

パイン飴は島を豊かにして

民の生活をさらに楽にはしたが

結局大王も民も誰一人として

本物のパインを食べたことがないことには

まだ気づいていないのだった。

8.1 パインの日、島の日
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