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なぜ「事務局機能」を統合させた会社が今までなかったのか?野球やサッカーでは難しいのはなぜか?- バスケが4団体の「事務局機能」統合会社を設立で感じた話【後編】

こんにちは。佐藤奨(さとうつとむ)です。

先月末に、こちらの記事を書きました。

バスケが国内初の取り組み4団体の「事務局機能」の統合会社を設立

記事の内容をざっくり説明すると、日本バスケットボール協会(JBA)が、JBAとBリーグ、両者の権益統合事業を担うBマーケティングなどの職員を集約する新会社「バスケットボール・コーポレーション株式会社」の設立をするニュースに関連した記事です。

リーグ・協会の事務局機能を統合するというのは、人材の交流や育成だけでなく、バスケットボール界の競技日程の整備やプロ興行のノウハウを代表戦やアマチュア大会に生かすことなどが期待される。とのことで、主に「働く人」や「選手」ことを考えてのことだろうということ。

また、NHKの調査によれば、スポーツ界の不祥事 60%余の団体 “原因は人手と予算不足” に要因があるとのことで、統合会社の設立によって、主に人の課題がクリアになるのではないか、ということを書きました。

詳しくは記事を読んでもらえたらと思います。

それでは後編の目次です。

目次
・なぜ今までなかったのか?(野球やサッカーでは難しい)
・なぜ日本のバスケはこれが出来る?なぜ今なのか?
・スポーツは「労働集客」「資本集中」が必要である
・この統合会社に課題は存在しないのか?
・部分的な統合でもうまく行っている例はある

・なぜ今までなかったのか?(野球やサッカーでは難しい)

今回のこの統合の件は、上記のピックアップしたメリットの部分を書くと、それは統合した方が同じ人材が関わることで重複する業務も減らせるでしょうし、確かにそうだよね、と感じると思いますが、そもそも、この取り組みが日本初なのです。つまり、なぜ今までこれがなかったのかが疑問に上がると思います。

なぜ、こうした「統合・ハブ」機能を持つ会社が国内のスポーツ団体に存在していなかったのか?

それは、ストレートに言えば、利益相反するからです。つまり、分かりやすい協会の例として、特にサッカーとJリーグですね。

サッカーの場合は、Jリーグのリーグと協会の日本代表戦は、それぞれが権利を持っている構造となっています。仲悪い訳ではないけれども一緒にやることは難しい状況です。

例えば、日本代表の場合です。有力選手はクラブと代表でスケジュールが重なってしまい、場合によっては選手の奪い合いが起こります。

JBAの三屋裕子会長が取材にて「足元の組織づくりでオールバスケットを目指す。団体の壁を取っ払いたい」と意気込みを語った記述もありましたが、裏を返せば、リーグと協会には団体には壁があるのです。

バスケに限らず、国内ひいては世界中に競技団体が多いし、それぞれがそれぞれに、そこで成り立たせるために頑張っている一方で、それぞれの権益の統合は難しいのが現状なのです。

・なぜ日本のバスケはこれが出来る?なぜ今なのか?

こうした事務局部門の統合会社をバスケが日本で初めて取り組むのは、長らくリーグの分裂により困っていた人が多かった証だと考えています。

そして、なぜバスケがこれをできたか?というと、一度全てを壊して立て直せたからできた可能性が高いと考えています。利権や権益構造が出来あがってからだと、抜本的な改革が難しいので、一度更地の状態になったからこそこうした抜本的なことに取り組めたのだと捉えています。

なぜ今なのかというと、上記と同じ理由で、リーグが立ち上がってから期間が短いうちに(権利構造が複雑化する前に)統合させることが大切だったのでは、と考えてます。他にも要因はあるでしょうけれど、バスケの成長には欠かせない判断だったのだと考えています。

・スポーツは「労働集客」「資本集中」が必要である

今回のバスケのようなリーグをまだ持たないスポーツ組織でも、統合できるところは統合した方が良いというのが私の持論です。同競技の各団体で利益相反があるのは分かるのですが、同じ競技内であれば、そこで働く人の「環境改善」の方が優先されて欲しいですよね。

労働および資本(お金)の集約をすることで、資本を集中させられるし、同じ会社内となることで権利構造も分散しにくくなり、もっとダイナミックなことが行えるのではないでしょうか。これからの取り組みに期待したいと考えています。

・この統合会社に課題は存在しないのか?

課題がないかというと、出てくると思います。まずはみんなが大好き「権力」争いです。これまでに比べてポストが減ります。それによって権力争いは必ず起きるものと考えてます。そこは人間の性ですから、見える部分水面下の部分で色々と起こるのではないでしょうか。。

もう一つが「事業会社」ゆえに、これから「人材育成」にどこまで注力できるのか?というポイントです。

上場企業ではないので、そこまで会社の儲けだけにコミットしなくても良いのだとは思いますが、バスケットボールという共通言語はあれど、業務内容はバラバラでしたでしょうから、今回、このように集約して軌道に乗るまでには相応の時間がかかるのではないでしょうか。

・部分的な統合でもうまく行っている例はある

バスケ協会の、今回の統合の話が日本初であることから分かるように、これだけのサイズの協会が事務局を統合して行うことは簡単ではないのです。だから日本初なのですよ。

でも、全体の統合ではなくとも、うまくやっているところもあります。それは、プロ野球のパシフィックリーグマーケティングです。この会社はプロ野球のパシフィックリーグの権益を統括しています。

“インターネット映像配信”を中心としたデジタルマーケティング、放映権配信権の管理などを行っていて、プロ野球のパシフィックリーグに特化し、球団の垣根を超えて、リーグの配信権を販売し収益を上げている会社です。

プロ野球全般での権益の統合は難しいけれど、パ・リーグ6球団が部分的に協業するための会社として2007年に設立され、初年度の売上高1.8億円から、2018年は50億円に到達するなどして飛躍的な成長を遂げている会社です。このように部分的にでもうまく行っている事例はあるのです。

ただし、こうした一部を切り取ってでも成り立つのは、プロ野球のようなメジャー級の人気があるからとも言えます。他の競技の人気で部分だけを切り離す仕組みを転用するのは難しいかもしれないです。

やはり、メジャーな競技や、プロリーグが存在していない競技では、バスケのように統合して行えることが理想的なのではないか、というのが私の仮説です。ゆえに、今後の「バスケットボール・コーポレーション株式会社」の動きには注目していきたいと考えています。

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